★2話★ そして翌日。 アップが終われば今日の最初の試合は烏野。 妹ちゃんは相変わらずマネ業とトレーナー業を共にこなし、相手を分析し、俺達のデータも細かに取っていく。 それはもう見事に。 二日目ともなればうちのメンツにも馴染む。 ――――その時、入口の扉が開く。 「遅れましたー!!!!!!」 「―――おせぇよ馬鹿リエーフ!!」 俺達音駒の新兵器である灰葉リエーフが合宿へ合流する。 「え?女子がいる!?なんで!?」 「リエーフおい見下ろすな可哀相だろうが!!!!」 「ごめんね妹ちゃん。こいつは1年のリエーフ。MBなんだけど高校からバレー始めたから初心者なんだよ。」 「あ、そうなんですね。臨時マネージャーをやってます、烏野1年の月島詩織です。」 「詩織ちゃんっていうのー!?宜しくね!めっちゃ可愛いねー!カレシいるー?『リエーフ!!!!いいからさっさとビブス付けろ!!!!!』 ゲシっと夜久のキックをケツにくらい涙ながらにコートへと入る。 詩織を見れば、視線の先はやはりリエーフだった。 烏野との試合はうちが勝ち、妹ちゃんがノートを持ちリエーフに声を掛けていた。 「灰羽くん。」 「お!詩織ちゃん!見てくれたー!?俺の超格好いいスパイク!!!あとリエーフでいいよ!みんなそう呼んでるし!それに同じ学年だしタメ口で!」 「えっと、んじゃリエーフくん。レシーブや守備が現スタメンに劣ってる君にまだでフル出場っていうのは正直厳しいかなて思ってる。」 「ガビーン……!!!」 「…でも。その日本人離れした跳躍力と手足の長さ。ジャンプの高さ。それは本当にエース級だって言えると思う。 だからまずはレシーブ。確りこれが出来れば身体の重心も出来上がるし、次のステップアップにつながるよ。 こんなに凄い才能があるんだもん、伸ばさないと勿体ない。」 「うおおお!マジで!!俺なんか褒められるのって初めてかもしれない!!!! 夜久さーーん!!!!!!夜レシーブ練付き合って下さ―――イ!!!!!!」 なんと。 あのレシーブ練が大嫌いなリエーフをいとも簡単に乗せたのだ。 それに音駒一同は驚きを隠せない。 「すげーな妹ちゃん……あのリエーフ乗せるって誰にでも出来る事じゃねぇぞ?」 「本当の事をいっただけですよ。総合的に言うなら私はまだ犬岡君の方を出した方がいいと思いますし。でも、絶対いい選手に育ちますよ、彼。」 そう優しい笑みを浮かべる詩織は、どこか楽しそうな顔をしていた。 それに、何故か少しだけ胸が痛くなった。 そして午後の練習が始まって2時間。 「梟谷の保護者の方から差し入れのスイカを頂きました!皆さん外に取りに来てくださいねー!!」 嬉しい差し入れと共に20分の休憩時間が追加された。 音駒一同は皆臨時マネージャーである詩織の所へ行きスイカを貰う。 「はい!お疲れ様です黒尾さん。」 「おーサンキュー!めっちゃ冷えてるじゃん!」 「この氷入り冷水でキンキンに冷やしておきました。私コレ片してきますね。」 「あ、重いだろうし俺持つよ。」 「大丈夫です!黒尾さんは確り食べて栄養補給して休憩してください!」 そういい、妹ちゃんは冷水と氷入りバケツを持ち、ゆっくりと水道場所へ向かった、筈だった。 「きゃー!!!」 「やっちゃん!?だいじょ ―――――――― ッ ……!!!!!」 皆がスイカを美味しく頬張っていた時だった。 二人の叫び声が聞こえ全員がそちらの方へと向けば、烏野1年マネージャの一人がビブス塗れで尻もちをついており、そして妹ちゃんがさらにその後ろでびしょ濡れで地面に座っていた。 「ちょ!!!大丈夫二人とも!!!!????? 「ごごごごごごめんなさいいいい!!!!私は大丈夫なんですけど詩織ちゃんがッ『やっちゃん怪我ない!?大丈夫!?』 誰がどう見てもヤバそうなのは氷水を頭から恐らく被ったであろう妹ちゃんの方で。 俺が駆け寄ろうと思ったとき、ものすごい勢いでツッキーが飛んでくればふわりと詩織を横抱きに抱える。 「!?えっ ちょ、蛍!!!!!????」 そして無言でダーーーーーーーーっと校内にある保健室へと走っていった。 「…すげーっすね月島。ものすっごい勢いで攫って行った。」 「あかーしさらっとやばい事いってるから!!」 「…俺ちょいタオル持って様子見てくるわ。一応今は臨時でもうちのマネージャーだし。」 俺は理由をこぎつけ、スイカを置いて二人が行っただろう保健室へと向かった。 ← → back 175/14 |