大声で泣いた。わたしの二つの水晶から溢れ出すしょっぱい水の止め方も知らなかったわたしは誰もいない教室で赤子のごとく大きく泣いた。ひとりだと思っていたわたしの隣には勝呂くんが静かにハンカチを差し出している。どうしてこの人はいつもわたしが落ち込んでいるときに側にいるのだろう。そしていつも黙って隣にいてくれる。勝呂くんがいるとなぜか、すごく安心する。 「うっ…勝呂く、ん…」 「…」 「廉造がっ、また、女の子と、遊んでてっ…うっ」 涙と鼻水でうまく喋れない。けれどわたしが泣く理由はいつだって廉造のことなんだ。廉造の浮気で泣いてわたしを慰めてくれるのはいつだって勝呂くんだった。これで、何回目になるのだろう。 「わたし、勝呂くんを好きになればよかったね。そしたらこんなことで泣かなくてもすむのに…」 「俺じゃ、あかんの?」 勝呂くんは今にも泣きそうな顔をしていた。気づけば、目の前に勝呂くんの顔があって唇に柔らかいものを感じた。 「すまん…」 まだ乾いていない二つのものが大きく見開き、勝呂君を映し出す。勝呂くんはいつもわたしの側にいてくれて、不器用だけどすごく優しい人。勝呂くんを好きになれば浮気とかで悩む必要もないし、幸せになれたかもしれない。いつだってわたしを悲しませるのは廉造だけれど、いつだってわたしを幸せにしてくれるのも廉造なんだ。わたしは勝呂君を幸せにしてあげられることは、できない。
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