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最近、夜中にふと目が覚めることが多くなった。蝉の声も鈴虫の声も通り過ぎ、風で木の葉だけが揺れる音が耳を擽る。布団の枚数を重ねても、寒さは増すばかりで、つま先の感覚はもう、ない。かつて隣にあった温もりに想いを馳せるけれど一向に温かくはならなかった。無駄のない筋肉で作られた少し体温の高い体でわたしを包んでくれた人はもう、いない。


「りゅーじっ」
「つめたっ!何すんねん!!」
「えへへー」


冷え性で冷え切った足を竜士の体に絡めては文句を言われる毎日。同じ場所で同じ布をかけて、お互いの体温を感じあう。それだけで幸せだった。


「竜士はあったかいね?」
「お前は相変わらず冷たいな」
「えへへーでも竜士があっためてくれるから冷え性でよかったー」
「あ、あほちゃうか!」
「竜士といられるならわたしはバカでもアホでもいいようっだ」


手を絡めて足を絡めて舌を絡めて、それだけでもう何もいらないと思った。この温もりが愛しかった。愛ってあったかいものなんだって、思った。竜士さえいれば、わたしの心の中には一年中花が咲いているってくらいぽかぽかしているんだ。それが今はぜーんぶ枯れてからから。寒いし、のどはかわくし、からから。空っぽのからから。足から全体に冷たさが広がっていくように、枯れてしまえば、いいんだ。太陽も水もないところで花は枯れていくように、足からどんどんどんどん枯れていく。

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