手に抱えている重荷が一気に軽くなったかと思えば廊下に何か置ちたような音が響く。きっとわたしの持っているノートが落ちたんじゃない。軽くなったのはわたしの腕に一気に筋肉がついたからであって落としたわけじゃないんだ。仮に、仮にわたしのだとしても両手がふさがっているこの状態で拾えるはずがないのだ。残念ながら、あのノートたちは置いておくよ。恨むならこんなちっちゃいかつ力がないわたしにノート運びを命令した先生にいってくれ。じゃあな、ノートたちよ。
「さっきから何ぶつぶつ言ってるんですか?ノート落としましたけど…」 「あ、えっと…ありがとうござい、ます」
まさかわたしの思っていることが口に出ていただなんて。それにわざわざノートまで拾ってきたよこいつ。優しいんだろうけど今はその優しさが鬼だ、鬼! そう思った瞬間ふと、また荷物が軽くなった。まさかまた落としてしまったのだろうか。どうしてこうもわたしのクラスのノートは落ち着きがないんだ。 ん?なんかさっきの男の人ついてきてない?なんなのストーカなの?恐る恐る横を見てみると、重そうだね、半分持つよだなんていってわたしのノートを半分以上持ってくれていた。だから軽かったのか。やっぱり優しいんだな。さっきは鬼なんて言ってごめん!ほんと天使!神様だわ!
「ありがとうございますっ」 「一人じゃ大変そうだし。これ、職員室まででいいんですよね?」 「はい」
何の会話もないまま無言で職員室まで行く。気まずい!すごく気まずいよこの空気。チラっと横を見てみればあまりにかっこよくてびっくりして急いで前へと向きなおす。なにあのかっこよさ。眩しすぎて直視ができない。声はいいなと思っていたけれどまさか顔までかっこいいとは。そんなことを考えていたら、あっという間に職員室につき、先生の机の上へとノートたちを置いて職員室をでる。するとお互い向き合った体制になり、自然と顔を見合わせることになる。意外と背が高いんだなとかっこよすぎて顔を直視できないため、頭を見る。あ、また気まずい。どうしよう。何か言わなきゃ。
「あ、えっと、手伝ってくれてありがとうございました。えっと、えっと、あ!名前うかがってもいいですか?」 「奥村雪男です。みょうじさんと同じ1年の」 「おくむらゆきお…」
ってあのめちゃくちゃ頭がいい奥村雪男?!まさかこんなイケメンだったなんて。神は彼に少し与えすぎではないのか?もういい人すぎて完璧じゃないか。それにしてもなんでわたしの名前知ってるんだろう。わたし結構影薄い方なんだけどな。
「あの、なんでわたしの名前…」 「だって、ずっとみょうじさんを見ていたから」
ちょ、その笑顔眩しい。待て、そのさわやかな笑顔に騙されてはいけない。さりげなく大変なことを発言している。まさか、まさか奥村雪男は…
「ストーカー?」 「な、なんでそうなるんですか。普通にこれ告白と捉えるものじゃないのかな…」
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