わたしは悪魔を触ることはできない。正確にいえば触ることは出来るが、触れた瞬間相手に聖水と同じくらいのダメージを与えてしまう。燐も例外ではなかった。
燐とおつきあいをはじめて一ヶ月が経つ。とくにこれといったイベントはなく今までと同じ一緒に帰ってたまに、遊んだりする。
これじゃあ友達とかわらないじゃん!
そう。わたしたちはいまでも友達のような付き合いなのだ。わたしだって燐のこと好きだから手とか繋ぎたい。キスもしたい。あわよくば…なんて考えたりするけどわたしがこんな変な体質を持っている以上、何もできない。一生、燐とは触れ合えないのかな。
「ねー、雪男ー?」 「なんですか」 「燐に触れたい。」
ぶっとお茶を噴き出す雪男。汚いなあ、もう。
「わたし、燐が好きだよ。雪男も知ってるでしょ?恋人同士なら好きな相手に触りたいっていうのも普通でしょ?」 「そうですけど…」 「なんか解決策とかないの?雪男天才なんでしょ?なんとかしてよー」
甘えた声で駄々をこねてみても雪男には効果がないみたいだった。
兄さんがずっとなまえのことを好きだったのは知っている。そしてなまえも兄さんが好きだということも。奥手な2人は少々時間が掛かったもののめでたく付き合うことになった。これだけならただのハッピーエンドだ。しかし、僕も兄さんと同じでなまえのことが好きだった。でも2人が両想いなのは知っていたから僕のありとあらゆる感情を自分の箱の中に閉じ込めてしまおうと考えた。こういったものは得意だ。昔からいろんなものを閉じ込めてきたのだから。
「わたし、燐が好きだよ。雪男も知ってるでしょ?恋人同士なら好きな相手に触りたいっていうのも普通でしょ?」 「そうですけど…」 「なんか解決策とかないの?雪男天才なんでしょ?なんとかしてよー」
本当のことを言えば君のその力は悪魔に憑かれているからのもので、悪魔を殺せばすぐにでも兄さんに触れることができる。なまえについているのは下級悪魔で倒すのなんてなんてことない。けれど兄さんに触れることができるということは悪魔にも触れることができる。つまり、なまえは今までのように悪魔に攻撃を与えることはできない。弱いなまえを守るためにはこのままの方がいい。
なまえを守りたいなんてこんなの僕の言い訳だ。なまえと兄さんが愛し合ってるところなんて見たくないんだ。ただ、それだけ。
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