「良い肉の日、おめでとうございます」
「オイ、祝うとこ間違ってんぞ」



泉先生はいつも保健室でサボるのが日課。なんでも他の女の先生やら生徒に言い寄られて避難してるらしい。かくいうわたしは保健委員で授業のない時間は大体ここで過ごしている。サボりの水谷先生の代理として。



「そういえばどうでした?」
「はー何が?」
「クラスの子達が泉先生へのプレゼントがどうのって騒いでたから」
「アレか…朝からキャーキャー騒がれて疲れたぜ」
「モテる男は辛いですねえ」



受け取ったのかな、あの子達のプレゼント。きっと他のクラスの子達に女の先生達にも追い回されたのだろう。でもモテる男なんかに片想いしてるのはわたしも一緒。先生からしたら格好のサボり場にいるよくわかんないヤツでしかないわたし。だからこそ他の子達みたいに騒ぎ立てたりせずに、少しでも先生に近いこの位置をキープしているつもり。「先生に興味なんてないから安心して避難しに来てください」初めて先生がここに来たあの日、少し後悔したけどああ言ったことで先生との距離が確実に変わった。


だからこそ、ここから一歩たりとも動くことは出来なくて。



「お前はお世話になってる俺になんかねーの?」
「お世話してもらってる、の間違いじゃないですか?」
「じゃあ冷蔵庫に入ってるコレもらっていーよな?」



先生の好きなプリン、ついコンビニで買ってしまったはいいけど渡すつもりはなかった。でも変に思われず結果先生の口に入るのならまあそれでもいっか、そう思った瞬間だった。



「あーん?」
「…何のつもりですか」
「これ一応お前ンだしってことで一口お裾分け」
「〜〜っ結構です!」
「へえ?」
「そ、それに他の子に見られたら殺されます」



心臓バックバクで目の前の泉先生に聞こえてしまいそうだ。未だにプリンがのったスプーンが口の前。このままじゃ間接キスになること分かってるのかな。必要以上の接触は心臓に悪いしこの顔のままじゃ気持ちがバレてしまう。



「用事思い出したので先に失礼します!」
「おープリンわざわざサンキューな」
「べ、つに先生のために買って来たわけじゃ…!」



全部お見通しだぞ、なんて顔で爽やかに微笑む先生。自分でも今顔が赤いのがわかる。この気持ちが先生にバレてませんように、そう願いながら最後に一言。



「お、お誕生日おめでとうございます」
「来年はお前の手作り期待しとく」
「…わたしじゃなくても今年だって他の子から手作り貰えますよ」
「だーめ。どうしてもお前のがいい」
「〜〜っ失礼します!」



泉先生が誰からもプレゼントを受け取らなかったと聞いたのはもう少し後のお話。




(なんで受け取らなかったんですか?)
(ん、今年から好きなヤツのプレゼントだけ受け取ることにした)
((…期待してもいいんですか?))
((そろそろ気付いてくんねーかなァ…))

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