今日は俺の誕生日。
別に楽しみにしてたわけじゃねぇけど、好きな奴には祝ってもらいたい、なんてな。


「いっずみーーん!」


とか考えてたら俺の好きな奴が駆け寄ってきた。
これは期待できんじゃね?


「今日何の日か知ってる?」


顔を少し赤らめて聞いてくる。
あー、俺幸せな1日を過ごせそうだな。


「今日ー?何かあったか?」


わざと惚けてみる。
え、知らないの!?なんて驚いてる。
早くおめでとうって祝ってほしい。


「今日はね、良い肉の日なんだよ」

「は?」


え?良い肉?
やばい俺幸せ過ぎて幻聴が聞こえちまった。
11月29日だからって良い肉なんて、女子高生が言わねぇよな。


「だーかーら!良い肉!」


喜ばしいことに俺の頭と耳は正常らしい。
あんま嬉しくねぇけど。


「‥‥そーなのか」
「そうだよ。だからね今日は食べまくるんだ!泉も一緒に食べにいこう」
「うーん」


正直あまり乗り気はしない。
だって今日俺の誕生日だから。
決して良い肉の日じゃねぇし。「お願い泉!他にこんなことお願い出来る人いないのっ」


俺だけ、なんていい響きだけど内容が内容だよな。
まぁでも今の言い方からするに二人きりになれるっぽいしいいか。


「しょうがねぇな」
「いいの!?わーい!」






みんなが祝ってくれると言うのを断って、冷やかされながら校門にいくとあいつはもういた。


「待たせてわりーな」
「大丈夫、あたしも今来たから」


誕生日は祝ってもらえなさそうだけど、こうやって二人きりになれたからいっか。
なんて俺もポジティブになったな。


「んで、どこ行くんだよ?」
「どこでもいーよ」
「はぁ?お前が肉食いてぇって言うから」
「あぁあれはもういーの」


今さら何言ってんだこいつ?
どうしてもお願いとか言ってたじゃねぇか。
モヤモヤしながらも並んで大通りを歩く。


「だってさ、今日泉の誕生日じゃん?だから泉の好きなとこでいーよ‥‥‥‥泉?」


俺は思わず立ち止まった。
何こいつ?まさか確信犯?


「‥‥俺の誕生日って知ってたのかよ」
「当たり前じゃん‥‥‥‥好きな人のことは何でも知っておきたいし」
「え?」


微かに聞こえた声は確かに俺の耳届いた。
けど聞こえなかったふりをして、もう1回言わせてやろう。
なんつったって今日は俺の誕生日だからな。

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