朝からなんだか体調が優れない今日。カウンセラーという仕事はほとんどが座り仕事ではあるものの、今は座っているだけでも体力が追い付かないほど全身が怠いのだ。
なんとか腰を上げて葉鶏頭さんに早退させて頂きたいという旨を伝えると、相当私の顔色が悪かったのか許可が降りた。葉鶏頭さんだけでなく記録課の他の皆さんにも心配を掛けてしまったけど…カウンセラー室のドアに休診のプレートを掛け戸締りをしてから記録課を後にする。そして、重い身体のままなんとかその足で向かったのは閻魔殿。
「お疲れ様です、大王様。…あの、鬼灯さまは…」
「やあ、かな子ちゃん。お疲れさ…って、大丈夫!?すっっごく顔色悪いよおお!!」
「は、はい…体調が優れなくて…葉鶏頭さんからの許可は頂きました。帰る前に鬼灯さまに早退をお伝えしようと…」
「鬼灯くん、ついさっき叫喚地獄に借り出されたばかりなんだよ。なんでもトラブルがあったみたいでねぇ。ワシが伝えておくから、早く帰ってゆっくり休むんだよ」
「はい、お願いします。…念のため、病院に寄ってから帰ろうと思います」
「奥さんが体調不良となると、きっと鬼灯くんも心配するだろうなぁ…本当に、気を付けてね?」
「はい、ありがとうございます。お先に失礼いたします」
大王様も本当に心配してくれて、なんだか申し訳ないくらいだった。帰る前に、鬼灯さまの顔を見たい気持ちもあったから少し寂しいけれど…仕事が終わったら帰ってくるんだ、少しの辛抱。
けど、さすがにこの身体で徒歩は難しい。いつもは使わないようにしている朧車タクシーを呼んで病院に寄ってからやっとの思いで帰宅した。
自宅に着くと着替える余裕もなくソファーに横になる。ああ、夕飯の準備をしなくちゃ。お風呂を沸かさなくちゃ。いつも日課になっている家事が頭に思い浮かぶものの、やっぱり身体は重いまま。
せめて夕飯だけでもと思い、ご飯を炊いて卵焼きを焼いた。あとは冷蔵庫に残っていたほうれん草のお浸しと、お豆腐をそれぞれ小鉢に盛り付ける。手抜きにもほどがある夕飯なのに、その作業でさえも辛い。ご飯の匂いだけでも気分が悪くなる。
休み休み夕飯の用意を終えて、再びソファーに横になる。少し眠ろう、眠ったら少しでも気分が良くなるかもしれない。
「かな子さん…ただいま帰りました。大王から体調が優れないと聞きましたが」
「鬼灯、さま…?お帰りなさい、報告もせず早退してしまってごめんなさい…それに、夕飯も大したものを作れなくて」
「いえ…夕飯なんて気にせずとも良かったのですよ。顔色、本当に良くありませんね…」
少し眠っていると、鬼灯さまの声で目が覚めた。心配そうな目でこちらを見つめながらそっと頬に大きな手が添えられる。
私がゆっくりと身体を起こすと鬼灯さまは無理をするなと言うように起こすのを手伝ってくれてから隣に腰掛ける。
一度深く息を吸って、吐いて。自分の気持ちを落ち着かせてから彼に向き直るように座り直して見上げる。
「鬼灯さま、私…赤ちゃんができました。」
「……はい?」
「あの、赤ちゃんが…」
「そ、れは……本当ですか?」
最初は緊張したものの、このことを一番に伝えたかった人に伝えるとなると自然に頬が緩み、微笑みながら告げることができた。鬼灯さまは驚いたように目をぱちくりさせている。
「本当ですよ、私と鬼灯さまの…赤ちゃんです」
「…おめでとう、ございます……すみません、気の利いたことが言えなくて…本当に嬉しくて、気が動転してるかもしれません」
彼は少し言葉を詰まらせながら私の身体をそっと引き寄せ優しく抱きしめてくれた。毎日と言っていいほど抱きしめてくれているというのに、この瞬間に温かな涙が頬を伝いその広い背中に両手を回す。
「一番にっ…鬼灯さまに伝えたかったんです。これから…頑張りますね…っ」
「ええ、一番に聞けて私は幸せです。ですが…ひとりで頑張りすぎてはいけませんよ。私もなるべく仕事を調整して早く帰れるよう努めます。かな子さん…これまで以上に、私を頼ってください」
「はいっ…約束します。ふたりで、この子を幸せに…」
「もちろんですっ…お腹の子だけでなく、かな子さんのことも…幸せにすると誓います」
「ふふ、二度目のプロポーズ…みたいですね」
ずっとずっと私たち二人が願っていた家族。それはどこの夫婦でも珍しいことではないのかもしれない。
けれど、親の顔すら知らずにこれまで生きていた鬼灯さまは私以上に望んでいたことなのかもしれない。「あなたには家族がいるんですね、少し羨ましいです」と鬼灯さまが一度だけ幼い頃の私に話したことは今でも鮮明に覚えている。
ね、鬼灯さま。あなたはとっくにひとりなんかじゃないんですよ。私がいます。これからはこの子もいるんです。めいいっぱい、幸せな家庭にしましょう?
「いや〜鬼灯くんとかな子ちゃんの子、無事に生まれて本当に良かったねぇ」
「あの時大王があと5分でも書類に手間取っていたら立ち会いに間に合わなかった可能性もありましたがね」
「さすがにワシもあの時は本気で頑張ったよ…あっねぇねぇ、そろそろワシもかな子ちゃんのお見舞い行こうかな〜赤ちゃん抱っこさせてほしいなぁ」
「……私は今日も行きますが」
「なら連れてってよ!良いでしょ!?」
「ダメと言っても来そうですし…良いですよ、仕方ない」
「珍しくあっさり許可してくれるね?でも、楽しみだなぁ〜ワシの孫みたいなものだしねぇ」
「……そうですか、病室では騒がないてくださいよ」
今日だけは金棒でどつくのを免除してあげますか…
Thanks 確かに恋だった
17/11/28
加筆修正 17/12/13
なんとか腰を上げて葉鶏頭さんに早退させて頂きたいという旨を伝えると、相当私の顔色が悪かったのか許可が降りた。葉鶏頭さんだけでなく記録課の他の皆さんにも心配を掛けてしまったけど…カウンセラー室のドアに休診のプレートを掛け戸締りをしてから記録課を後にする。そして、重い身体のままなんとかその足で向かったのは閻魔殿。
「お疲れ様です、大王様。…あの、鬼灯さまは…」
「やあ、かな子ちゃん。お疲れさ…って、大丈夫!?すっっごく顔色悪いよおお!!」
「は、はい…体調が優れなくて…葉鶏頭さんからの許可は頂きました。帰る前に鬼灯さまに早退をお伝えしようと…」
「鬼灯くん、ついさっき叫喚地獄に借り出されたばかりなんだよ。なんでもトラブルがあったみたいでねぇ。ワシが伝えておくから、早く帰ってゆっくり休むんだよ」
「はい、お願いします。…念のため、病院に寄ってから帰ろうと思います」
「奥さんが体調不良となると、きっと鬼灯くんも心配するだろうなぁ…本当に、気を付けてね?」
「はい、ありがとうございます。お先に失礼いたします」
大王様も本当に心配してくれて、なんだか申し訳ないくらいだった。帰る前に、鬼灯さまの顔を見たい気持ちもあったから少し寂しいけれど…仕事が終わったら帰ってくるんだ、少しの辛抱。
けど、さすがにこの身体で徒歩は難しい。いつもは使わないようにしている朧車タクシーを呼んで病院に寄ってからやっとの思いで帰宅した。
自宅に着くと着替える余裕もなくソファーに横になる。ああ、夕飯の準備をしなくちゃ。お風呂を沸かさなくちゃ。いつも日課になっている家事が頭に思い浮かぶものの、やっぱり身体は重いまま。
せめて夕飯だけでもと思い、ご飯を炊いて卵焼きを焼いた。あとは冷蔵庫に残っていたほうれん草のお浸しと、お豆腐をそれぞれ小鉢に盛り付ける。手抜きにもほどがある夕飯なのに、その作業でさえも辛い。ご飯の匂いだけでも気分が悪くなる。
休み休み夕飯の用意を終えて、再びソファーに横になる。少し眠ろう、眠ったら少しでも気分が良くなるかもしれない。
「かな子さん…ただいま帰りました。大王から体調が優れないと聞きましたが」
「鬼灯、さま…?お帰りなさい、報告もせず早退してしまってごめんなさい…それに、夕飯も大したものを作れなくて」
「いえ…夕飯なんて気にせずとも良かったのですよ。顔色、本当に良くありませんね…」
少し眠っていると、鬼灯さまの声で目が覚めた。心配そうな目でこちらを見つめながらそっと頬に大きな手が添えられる。
私がゆっくりと身体を起こすと鬼灯さまは無理をするなと言うように起こすのを手伝ってくれてから隣に腰掛ける。
一度深く息を吸って、吐いて。自分の気持ちを落ち着かせてから彼に向き直るように座り直して見上げる。
「鬼灯さま、私…赤ちゃんができました。」
「……はい?」
「あの、赤ちゃんが…」
「そ、れは……本当ですか?」
最初は緊張したものの、このことを一番に伝えたかった人に伝えるとなると自然に頬が緩み、微笑みながら告げることができた。鬼灯さまは驚いたように目をぱちくりさせている。
「本当ですよ、私と鬼灯さまの…赤ちゃんです」
「…おめでとう、ございます……すみません、気の利いたことが言えなくて…本当に嬉しくて、気が動転してるかもしれません」
彼は少し言葉を詰まらせながら私の身体をそっと引き寄せ優しく抱きしめてくれた。毎日と言っていいほど抱きしめてくれているというのに、この瞬間に温かな涙が頬を伝いその広い背中に両手を回す。
「一番にっ…鬼灯さまに伝えたかったんです。これから…頑張りますね…っ」
「ええ、一番に聞けて私は幸せです。ですが…ひとりで頑張りすぎてはいけませんよ。私もなるべく仕事を調整して早く帰れるよう努めます。かな子さん…これまで以上に、私を頼ってください」
「はいっ…約束します。ふたりで、この子を幸せに…」
「もちろんですっ…お腹の子だけでなく、かな子さんのことも…幸せにすると誓います」
「ふふ、二度目のプロポーズ…みたいですね」
ずっとずっと私たち二人が願っていた家族。それはどこの夫婦でも珍しいことではないのかもしれない。
けれど、親の顔すら知らずにこれまで生きていた鬼灯さまは私以上に望んでいたことなのかもしれない。「あなたには家族がいるんですね、少し羨ましいです」と鬼灯さまが一度だけ幼い頃の私に話したことは今でも鮮明に覚えている。
ね、鬼灯さま。あなたはとっくにひとりなんかじゃないんですよ。私がいます。これからはこの子もいるんです。めいいっぱい、幸せな家庭にしましょう?
「いや〜鬼灯くんとかな子ちゃんの子、無事に生まれて本当に良かったねぇ」
「あの時大王があと5分でも書類に手間取っていたら立ち会いに間に合わなかった可能性もありましたがね」
「さすがにワシもあの時は本気で頑張ったよ…あっねぇねぇ、そろそろワシもかな子ちゃんのお見舞い行こうかな〜赤ちゃん抱っこさせてほしいなぁ」
「……私は今日も行きますが」
「なら連れてってよ!良いでしょ!?」
「ダメと言っても来そうですし…良いですよ、仕方ない」
「珍しくあっさり許可してくれるね?でも、楽しみだなぁ〜ワシの孫みたいなものだしねぇ」
「……そうですか、病室では騒がないてくださいよ」
今日だけは金棒でどつくのを免除してあげますか…
Thanks 確かに恋だった
17/11/28
加筆修正 17/12/13

