「…腕枕を、」
「はい?」
「腕枕をしても、大丈夫だろうか」

俺の問い掛けに千鶴はきょとんとした顔をした後、急速に頬を染める。
あまりの寒さに同じ布団に入ったにも関わらず、俺達の間には微妙な距離感。

「…嫌か?」
「!や、そんな、とんでもないです!…して欲しいです」

慌てた声音でぶんぶんと手を振って否定する様に、そうか、と笑って。

「行くぞ」

一言だけ告げて、千鶴を自分の方へと抱き寄せた。
腕にかかる確かな重みと、千鶴のにおいを感じて、また自然と口元が緩む。

「斎藤さん、斎藤さん」
「………」
「…一、さん」
「何だ?」

腕の中からおずおずと名を呼ぶ千鶴に視線を落とすと、心配そうな瞳がこちらを見上げていた。

「重くないですか?大丈夫ですか?」
「…千鶴。」
「腕、痺れませんか…?」

小さく俺の胸元の着物を握りしめて、千鶴ははらはらとした表情で問いかける。
しかしながら、今俺が千鶴を抱きしめているのは左手で。
散々刀を振るって来たこの腕は、千鶴の頭を乗せたくらいでは疲れる筈もなく。

「千鶴、俺は今どちらの手でお前の頭を抱いている?」
「…!…左手、です」
「そういうことだ。それともお前は、やはり腕枕は嫌か?」
「そんなことありません!…ただ、嬉しくて…」

続きを促すように前髪に軽くくちづけてやると、千鶴が視線を落として呟く。

「…幸せなんです。その分すごく、ドキドキしちゃうんですけど」

ふわりと花が咲くように千鶴が微笑む。
その頬が甘えるように俺の首筋にすり寄って、心地良い温度を伝えた。

「…一さんは?」
「そうだな…。俺も、何だか嬉しい。…さあ、一緒に寝よう」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」

同じ布団の中で、呼吸も、鼓動すらも合わせて。俺達は一緒に、眠りに落ちていった。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -