「…千鶴、もう寝ちゃった?」

腕枕に小さな頭を預けて目を閉じた千鶴にそっと声をかける。
こうして共に寝るのはいつものことで、夜になると俺達は一緒に布団に入る。
一度だけ、別々に寝ようと言ったことがある。
途端、みるみる泣きそうな顔になった千鶴は俺に枕を投げ付けると一言「だめ」とだけ呟いた。
同じだけ時間を過ごして来た筈なのに、俺よりも随分と子供っぽい。
そんなこいつの我儘を聞いてしまうあたり、本当は俺も一緒にいたかったんだと思う。
その白い頬を意地悪くつついてやると、瞼がぱちっと開く。
悪戯っ子のような瞳がこちらを見上げていて、俺は呆れてため息をついた。

「何だよ。まだ起きてるじゃんか」
「そうよ、起きてたの」

嬉しそうにニコニコと笑う千鶴が俺にくっつく。
月色の瞳の中に、もう一つの月のいろ―――俺の瞳が写るのが見えて、俺もまた笑う。

「薫の髪、キレイね…」
「お前と同じだよ。…いや、千鶴の方が綺麗」

さらさらと肩に流れる髪を梳くと、気持ち良さそうに目を細める。
やっぱり千鶴の髪の方が綺麗。やわらかくて、いつまでも撫でていたい。
やがて、千鶴の瞳がとろんとして腕枕に預けられる重みが増していく。

「かおる、」
「…何。眠いんだろ、もう」
「んー…」

小さく名前を呼ばれて素っ気なく答えると、その眉間に似合わないシワが寄る。
髪を梳いていた手を止めて、指先でシワを伸ばすと千鶴の手がそれを掴む。

「…どうしたい訳」
「手、繋ぎたいの」

相当眠いらしく、千鶴はもたもたと力の入らない手で握る。
俺はもう一度だけため息をついて、指を絡ませてやった。

「早く寝ろよ。…おやすみ」

千鶴は本当に、本当に幸せそうに笑って瞼を閉じる。
間もなくして寝息を立て始めた鼻の頭にくちづけを落として、俺もまた眠りについた。





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