「それじゃあ、そろそろ寝よっか」
「うん」

今日はとても寒いから、一つの布団の中に二人で入った。
寒さのせいなのか、千鶴の体は小さく縮こまっている。
俺はそんな千鶴をからかうように、冷えた手足をその体に掠めるようにして触れた。
指先や爪先に当たる千鶴の脚や首筋は温かく、とても気持ち良い。

「っ平助君、冷たいよ!」
「仕方ないだろ?冷えてんだもん」

冷たさにびくりとした後、千鶴はぷぅっと頬を膨らませて俺を睨む。
その様子があまりに可愛くてつい笑ってしまった俺に、彼女は小さな反撃を試みた。

「もー…。えいっ」

千鶴の華奢な体が、隣に寝転んだ俺の胸に飛び込んで来る。
首筋から下、寝間着に包まれた部分は温かいものの、直接冷気に触れていた手や顔は冷たかった。

「私の気持ち、わかった?」

じとりと見上げて来る得意そうな瞳と視線がぶつかる。
確かに冷たい。冷たいがしかし、それ以上に温かくもあるということに、千鶴は気付いていないようだった。

「…いいや?」

ニヤリ笑って、その体を思いっきり抱きしめると驚いた千鶴がばたばたと暴れる。

「こーら。暴れんなよ」
「だ、だって!」
「こうしてた方が温かいだろ…?」
「…!!」

耳元で囁くと途端に大人しくなって、腕に収まるその姿が愛しい。
そしてそのまま、温もりが心地良いのかだんだんと千鶴の瞼が閉じて行く。
頬を撫でてやると、とろんとした月色の瞳が俺を見つめた。

「千鶴…おやすみ」
「ん…」
「良い夢見ろよ」
「平助君の、夢見る…」

眠気のせいで舌足らずな返答をしながら、甘えるようにすり寄って来る。
ふわりと香る千鶴の香りと心地良い重みに、俺もまた眠くなって。

「明日…一緒に、花見に行こうな」

嬉しそうに微笑んだ千鶴と共に、ゆるやかに眠りに落ちて行った。





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