俯いて、かと思えば顔を上げて。ぼんやりと遠くを見つめて、小さくため息。

「………」
「………」

考え事をしている横顔は、いつもの千鶴より少しだけ大人びて見えるから心臓が跳ねる。
だけどやっぱり一緒に、隣にいるのに俺以外の何かに心奪われてるのは面白くない。
ガキっぽいって自分でも思う。だけど好き合って一緒に暮らして大分経つ今でも俺は、ちょっと触れただけでも馬鹿みたいに熱くなるしもっと触りたいと思う。
俺よりずっと細い身体に抱き着いて、力いっぱい抱きしめて、そうやってくっついてたい。

「千鶴」
「………」
「千鶴、」
「………」

心ここにあらず、の言葉の見本みたいな反応。あ、何かちょっと涙出そう。
こうなったら強行手段だ。

「え」

千鶴の肩を引いて、腕を差し込んで俺の膝の上に抱き寄せる。
子供にするみたいな格好だけど、千鶴が体全部を俺に預けてる形になるから、心は僅かに満たされて。

「平助、君?」

ぱちぱちと、真ん丸に開いた月色が瞬きを繰り返す。驚きから来る無意識の行動なんだろうけど、ぎゅっと袖を握る手が愛おしい。

「え、っと、あの、」

だんだんと冷静になり状況を把握して来たのか、ゆるゆる頬が赤く染まって行く。

「………」
「平助君、あの、」
「………」
「平助君…?」

無言の俺と、そんな俺を呼ぶ千鶴。さっきまでとは逆転した立場に、何だか笑えて来てしまって。

「終わった?」
「へ」
「考え事。もう良いの?」
「…考え事どころじゃ、なくなっちゃった」
「それ、大歓迎」

こてん、と肩に寄り掛かる頭を撫でてやりながら瞼に頬に唇に、くちづけを降らせて行く。
俺に集中して、恥ずかしそうにしながらも応えてくれる千鶴に口角が上がるのを感じた。

「いつだって俺を見て、千鶴」





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