「……………」
「…珍しい」

夜明け頃まで降っていた雨のせいか、今朝はいつになくすっきりと目が覚めた。
今日は仕事もないのだし、たまには俺も一緒に朝食の支度でもしようか。千鶴に教えを請い、最近やっと魚くらいならば焼けるようになったのだ。
体を起こして隣を見ると、身じろぐ気配すらなくすやすやと眠る千鶴の姿。いつもなら俺より早いか、俺が起きたらすぐ後に目を覚ますのに。
安心しきったような寝顔に思わず口元が緩むが、あまり見ていては起きた後の機嫌を損ねてしまう恐れがある。
少々名残惜しい気持ちを感じつつ、華奢な肩をそっと揺らした。

「千鶴、朝だ」
「………」
「千鶴」
「…んぅ」

眩しそうに一瞬眉根が寄せられると、ゆっくりと瞼が開く。しかしまだ完全に起きてはいないようで、眠そうな瞳が俺をとらえた。

「はじめさん…」
「起きたか」
「…んー」

また降りていきそうな瞼と伸ばされた腕に苦笑しながら、甘えられるまま抱き起こしてやる。
そのまま抱き着いた千鶴が嬉しそうに首筋に擦り寄って来た。

「一さんの髪、柔らかくて気持ち良いです」

よほど気に入ったのか、何度も撫でるように梳く指先が心地良い。やがて満足した千鶴が体を離し、嬉しそうに笑う。
俺としては、千鶴の真っ直ぐでさらさらした髪の方が好きだ。下ろされた髪を梳くとやわらかい感触が伝わって、いつまでも撫でていたくなる。

「千鶴、」
「ん」
「…!」

猫のように、気持ち良さそうに細められた月色と、手のひらに擦り寄せられる頬の感触。
寝起きの今だから見られる表情に、少しだけくらくらする。
瞬間、合った視線と嬉しそうな笑み。

「おはよう、ございます」
「…ああ。おはよう」

そして、触れるだけのくちづけをした。





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