「……ん、?」

朝目が覚めて最初に探すもの、僕の腕の中眠る君。
でも今朝は意識が浮かび上がった時には既に腕は軽くて、君はそこにはいなかった。ああ今日は雨が降っているのかな、肌寒い空気が頬を掠めていく。
重い瞼を無理矢理開けても、映る景色は薄暗い。朝日が昇るまでまだ時間がかかりそうだった。
視線を走らせると、やっと求めていた背中があって。僕は気配を消して、その背に抱きついた。

「!」
「ちづる」
「総司さ、」
「何、見てるの?」

風に当たっていた肌は少し冷えて、ついさっきまで布団の中にいた僕との温度差は広い。首筋に顔を埋めると、ふわりと甘いやわらかな香りがした。

「ごめんなさい、起こしました?」
「んー…」
「雨の音が気になって…」

しとしと、地面と屋根を叩く雨の音。二人しかいない静かなこの家には、少しばかり大きく響く。
抱きしめていた腕を伸ばして、千鶴が開いた戸を閉める。

「ねぇ、まだ夜だよ」

僕は眠くて仕方がない。
僕の体温がうつって、温まった千鶴の体が心地良かった。元からあった眠気はまだまだ健在、いやさっきより強いかもしれない。
肩を抱きしめていた腕の片方をお腹に回して、そのまま千鶴と一緒に布団に戻る。あ、まだちょっとだけ暖かいな。

「総司さん、」
「起きるなんてだめだよ」
「体の向きを変えたいんです」

言われるままに腕を緩めると、すぐに千鶴が僕に向き合う。そうして嬉しそうに笑って、思いきりぎゅっと抱きしられめた。

「総司さん、あったかい…」
「おはよう、それとおやすみ」

擦り寄る千鶴が愛しくて、くすぐったいくらいに幸せで。お互いの体のかたちが分かるくらい抱き合って、僕達はまた眠りにつく。
もう一度起きたらそうだね、今日は何をして過ごそうか。





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