「だ」
 「…だ?」
 「だだ、だだだだ」
 「…満?」
 不思議そうに小首を傾げてコテン、2回目頂きました〜!!
 先程から殺気立っていらっしゃる、周囲の子猫ティームの最高幹部さま方の視線が、チクチク…いや、そんなカワイイもんじゃないね、ぶっすりぶっすり突き刺さってくるけれども…!!
 言わなきゃ…ちゃんと言わなきゃ。
 じゃないと、これから先、一緒にランチタイムが開催される度にこんな目に遭い続ける!!

 …いつまでか、わかんないけど。
 このひとが、一体、マジで真剣に真摯に俺の事を想ってすすす好きなのか、ここまで罰ゲームに熱中しなきゃなんない複雑な事情があんのか、今イチわかんないんだけど。
 いつまでお付き合いすれば良いのか。
 男な上に、容姿も性格も何もかも面白味のない、何の特徴もない俺なんかと一緒に居る、この状態のどこが楽しいのか。
 このひとに、聞いてみたい事、いっぱいあるけれども。
 もうちょっと、後日改めて…でもいいかなぁなんて。
 逃げ腰の俺は、ごく一般的なティキン(チキン)なんだと想う。

 とにかく、今は、言うぞ…!!


 「だ、ダメですっ…受け取れません…!!」


 どぅわっ…!!
 屋上だけ、真夜中…!!
 もともと夜の気配をまとった、子猫ちゃんティームの皆さんだ。
 俺の心象風景的には、昼から夜へ急にチェンジしたみたいに感じた。
 あれあれ…?
 さっきまでピッカピカに晴れていた空も、心なしか、曇って来てませんか…?
 「てんめぇっ…!!光さんからのメロンパンが受け取れねぇっつーのかよ…?!」
 「黙って見守ってりゃ良い気になりゃぁがって…!!こんのクソチビど平凡めが…!」
 ゴルァアアッと雄叫びを上げる、最高幹部さまの面々。
 震え上がってますます姿勢を正す、ティキン(チキン)な俺。
 しかし。

 いきり立つ最高幹部さま方を、俺が見た事のない凶悪顔で睨みつけ、これまた全国的に名を馳せていらっしゃる、大魔覇王さまの片腕だと名高い伏見誠治(ふしみ・せいじ)様々を視線だけで呼びつけ、一切無言で顎をしゃくって指示を出す…

 そんなアナタ様が、この世の中でいっちばん、怖いです…!!
 何気に「メロンパンじゃねぇ…チョコメロンパンだ…」っていうひっくぅううい呟きまで聞こえた…!!
 ガッタガタ震える俺の視界の隅、伏見大魔王様に連れられて行く最高幹部さま方の姿が見えっ…!!見えて…っ!!消え…っ!!
 ひぃぃいっ…!!
 おっかないよう!!
 彼等の末路が、想像するだけで恐ろしいよう!!
 指示を出し終えた大魔覇王さまは、何事もなかった様にもう通常のクールビューティーモード。
 俺をじっと見つめて、コテン3度目。

 「どうした、満?体調でも悪ぃのか…?今日は要らねぇなら、また食欲ある時に買ってやるな」

 のぉおおおおおっ!!
 ノーセンキュー!!
 そういうんじゃなくて…
 そういうんじゃーなーくーてー!!
 やっべ…
 もうこの、ただのレベル1(ごめんね、ずっとレベルアップ出来なくて!)の旅人と等しい俺には、当然攻略不可能な子猫ちゃんティームのラスボスの中のラスボスとの会話とか、最高幹部さま方に囲まれてる状況とか、いっぱいいっぱい過ぎて、もう、泣けてくる。
 目が、熱い。
 力抜いたら、ぜってぇ泣くね!
 やべぇ…
 瞬きしてごまかしながら、いっぱいいっぱい過ぎて。
 
 焦茶色の、大好きなチョコレート色の深い瞳を、まっすぐに見つめて。


 「そうじゃなくて…そうじゃなくて…!!俺、チョコメロンパン大好きだけど!!1度にこんなに食えないし!!
 …大体、いっつもそうだ…月曜発売の『週刊ステップ!』、発売前の金曜日に入手してたりさぁ!!食堂で食べるの好きだけど、混むからいつも席が取れないって言ったその日に、窓側の良い席リザーブされてたりさぁ!!DSの攻略難解で話題の『ラビットクエスト』、いつの間にか攻略手前まで進めたりさぁ!!
 どうしてですか?!俺はもっと、いろんな事をゆっくり楽しみたい。こんなに何でもかんでも、想ってる以上に願望が叶っても嬉しくないです!!自分の力で叶えられないなら、ちっとも楽しくないし!!どれもちょっと待ったり頑張ったらすぐ叶うことばっかだし!!
 それよりも、俺は…!!俺は、たたたっ鷹藤先輩と、好きなものの話とかっ…いろんな事をちょっとずつ知り合える時間が、何か…恐れ多いけど、ちょびっとシアワセっていうか…今まで何にも知らなかった、ウワサだけしか知らなかった先輩の事、すぐ側でちょっとずつわかっていく時間が、けっこう嬉しいっつーか…?!」


 大混乱、大パニック。
 その時の俺は、まーさーに、そんな状態。
 泣かないための自衛手段、マシンガントーク、見事に炸裂。
 そして。
 一気にまくしたてたラスト辺り。
 ものっそい静まり返ってるのを自覚して。
 止めよう、止めねば、止めなければと、内心、アワアワしていたら。
 自然に止まった。
 俺のマシンガントークは、もう、それ以上続けられなかった。

 全国にその悪名を轟かせる、天下無敵の老舗不良大チーム、「kitty」だ。
 同年代はもちろん、赤ん坊からご老人に至るまで、「kitty」という名を聞けば、泣く間もなく猛然とダッシュして逃げ出す様な、威圧感漂う存在だ。
 そのチームを束ねる今の頭は、過去の誰よりも残虐非道と名高い、絶対的に君臨する、鷹藤光。
 恐ろし過ぎる武勇伝の数々と浮き名が絶えない、とんでもない男。
 誰もを征服する、征服出来るだけの頭も腕も顔も持つ男。

 そんな男が。


 この上なく幸せそうに、俺を真っ直ぐに見つめて目を細め、微笑っていた。


 静まり返った空間が、とろりんととろけそうだ。
 焼きたてのホットケーキの上、メイプルシロップとバターとホイップクリームが溶け合うような。
 こっくりとしたカスタードクリームのタルトの上に、できたてのベリーのキャラメリゼをたっぷりのせた瞬間のような。
 ふわふわ、とろける砂糖菓子。
 そんな甘さを、ふんだんに有した、笑顔。
 それは、誘惑だ。
 スイーツのように甘くかわいらしい罪のない姿をしていて、1度口にすれば、最後…

 深みにはまって、抜けられない。

 甘い、甘い、笑顔のまま。
 甘い、甘い、ダークチョコレートの声。
 俺はもう、目を逸らせない。


 「わかった…満がそう言うなら、これからは気をつける。ごめん…浮かれて粋り過ぎてたな、俺…そうだよな、ゆっくりで良いんだよな…もう、焦って急がなくて良いんだよな。これからもちょっとずついろいろ話そうな?満の事をもっと知りたい、俺の事も知って欲しい。
 俺も満と一緒に居る時間が幸せだ。
 満がはっきり言ってくれて、嬉しかった」


 ちょ…!!!!!
 レッドカードっしょ、これ…!!
 レッドカードものでしょうよ!!
 なんつー眩しい笑顔…なんつー甘い笑顔…
 きっと、この笑顔を変換したら、キャラメルマキアート!!
 ふわふわミルクとキャラメルがほろほろ甘いのに、エスブレッソが効果的!!
 レッドカードでしょうよ〜!!!!!
 し、しかも…


 俺と一緒にいるのが、しあわせって。
 俺のこと、もっと知りたいって、先輩のことも知って欲しいって。


 きっと今。
 俺の頭の上に、やかんを置いたら、瞬間でお湯沸きます。
 お急ぎの皆さま、ご利用ください!!

 ……こんなの、反則じゃんか。
 心臓がどんどんおかしくなっていく。

 あぁ、もう…どうしてくれるんですか、大魔覇王さま。
 俺は、アナタのお陰で、やっぱり泣きそうです。



 2010-06-26 23:18筆


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