『好きだろ』ってアナタ。
 好きだろって。
 好きだろって。
 あはは!
 あのさあ〜バカにしてんじゃないよっ?!
 そんなもんじゃ収まらないぐらい、俺はチョコメロンパン様を激愛している!!!!!

 想わず鼻先で揺れているビニール袋をかっさらい、ガサァっと袋の中を覗きこんだ途端、俺はまさにノックアウト、秒殺フォーリンゾッコンラブ!
 こっ、こちらにっ実にさり気なくいらっしゃいまするはっ、まさかじゃなくてもそのまさか、あまりの神々しいオーラで俺はそのお姿を直視できないけれども、間違いない!!
 天の国のご馳走とはこちらのことではないか?!
 アダムとイブがあまりの魅力にうっかり手を出してしまった、禁忌の食べ物はこちらのことではないのか?!
 竜宮城で太郎が振る舞われた1番のご馳走とはこちらのことなんだろう?!

 古来からお伽話や夢物語で語り継がれて来た(※作者注:無論、そのような事実は一切ございません)、俺の夢にまで出てくる至高の食品、まさにあなた様はチョコメロンパン様でいらっしゃいますわね?!
 なんと言うことでしょう!
 なんと言うことでしょう!
 なんと言うことでしょう!

 サ●エさんだって、3回は息を呑んでためにためて、ナレーションの声が上擦ってしまうぐらいよ!!(※少しマイナーな例えで申し訳ございません)
 こんな、こんな普通のビニール袋なんかに入れられちゃって!
 でも、あなた様の神々しさは包み隠しようもない!
 満、わかってた!!
 なんかこの何の変哲もないビニール袋、オーラパねぇなって、さっきからずうううううっと想ってた!(大嘘)
 
 し・し・しかもおおおっ!!!!!
 このまっ白けっけな愛想のない、1番安いのを厳選しまくりましたと言わんばかりのペラッペラでガッサガサのビニール袋が、紛うことなき重要な証拠!
 そして、こちらにおわせられるチョコメロンパン様の、何だかチープだけどお茶目で愛らしいシンプルなパッケージ。
 間違いありません!
 満がチョコメロンパン様のことを間違えるわけがありませんけれども!!
 断言しましょう!!

 俺最愛のチョコメロンパン様の中のチョコメロンパン様、ベーカリー「ふわふわ」と接戦を繰り広げながらも、満の人生至上キングオブキングの座を獲得し、我が校において地獄の争奪戦が毎日毎昼繰り広げられている、購買専売のチョコメロンパン様だ!!!!!

 ぐっへえっへっへっへ!
 へらぼう!!(我ながら意味不明だぜー!)
 「こ、こっ…こここここ、こちっ…こちっらっのチョコメロンパン様を、ほんとうにマジでガチで俺などがいただいても、よよっよよんよんろろしいのでしょうか?!」
 わなわな震える手で掴んでいるビニール袋が、ガサガサっと振動に合わせて揺れている。
 気をつけて、満!
 落ち着いて、満!
 ファイト、満!
 チョコメロンパン様に衝撃は禁物よ!

 「そんなに動揺するとは…2つあるから、どっちも遠慮なく食え」
 はわ―――――!!
 イヤーン、大魔界を筆頭に全世界、全宇宙を統べる大魔覇王様が、何故か大天使つか創世神様に見えるぅ!
 ちょうどパッキン、キンキラの金髪だしね!
 イメージ、ぴったりじゃんー!!
 「ああ…あああ……ありがとうございますー…!!すっごくすっごくすっごおおおく嬉しい!!しかも、2つ…?!2つも、俺のもの…?!チョコメロンパン様が2つも…!!」

 どうしよう満、泣けて来ちゃう!!
 でも同時に、ニヤけてどうしようもなくなっちゃう!!
 人間って複雑な生き物!
 これが夢じゃないなんて、人生って何て素晴らしく豊かなのかしら、エミリー!(誰?) 
 恥も外聞も現在地も現状も命の危機も、その時の俺はぜーんぶキっレーに忘却の彼方、目の前のチョコメロンパン様だけが俺の世界のすべて状態だった。

 この時、大魔覇王様がどんな顔をして存在しておられたのか、俺はまったく知らない。
 それどころじゃなくテンションがウナギ昇りで。
 「そんなに好きなんだな」
 っていう、どこか呑気な響きの言葉が聞こえて、何の疑問も持たずに素直にこっくり頷いて、ヘラヘラしてた。
 「うんっ!大好きっ!!」
 「そうか…良かった。満が執着してるのはそれだけだよな。どこがそんなに好きなんだ?」

 更に、そんな嬉しい疑問まで、聞こえたものだから。


 「どこがって、どこがって、そんなに聞きたいなら教えて差し上げますけどっ?
 先ずそもそも、それだけで素晴らしい存在のメロンパンですよ!あのお高級メロンを使用しているわけでもないのに…いやもちろん、中には本気でメロン果汁を使用している高級タイプもありますけどね?俺が言ってる真のメロンパンとは、庶民のいじましい憧れと想いを現しメロンを模した、グッドデザイン賞総嘗め必至の遊び心溢れる菓子パンのことなんですっ。これぞまさに日本人の叡智の結晶!

 そして、メロンパンの数だけ物語があるっ!!ふんわり素朴なパンをやさしく包みこむビスケット生地には、無限の種類と嗜好が存在するわけですっ!!焼きたて美味し、時間が経っても美味し、工場製品ものでも美味しっ!!そもそもですよ、パンにビスケット生地をかぶせてみようかなっていう、そのノーベル賞もののナイスアイディア!何故ノーベル賞にノミネートされないのか、俺は甚だ疑問なんですっ!!

 その形状だけで絶妙なバランスを要し、食べて更に幸福感を呼び寄せる、可愛いお顔ながらちょっぴりお茶目さんな小悪魔っぷり…メロンパンは、宇宙です、宇宙そのものなんですっ。これ以上を行く食品など、もう現れないのではないか?!メロンパンを凌駕する存在など、有り得るわけがない!!誰もがそう確信していたことでしょう…ところが、メロンパンの上を行く、凄まじい発明が生まれてしまったのです…人間は恐ろしい…。

 そう、もうおわかりですね…?こちらに存在なさるチョコメロンパン様…この人類史上かつてない偉大な発明に因り、メロンパンの運命は大きく動き始めてしまったのです。他に比類なき至高の芸術作品、メロンパンに…我々人間は、恐るべき改良を加えてしまいました…それだけで素晴らしい存在に、更に新しい要素を付け加えたことで、悪魔的に甘美な芸術が完成してしまったのです。

 チョコメロンパン様には…チョコメロンパン様には………!メロンパンに、チョコチップが入っちゃってるんですよ…!!
 しかもですねぇ、この購買専売のチョコメロンパン様は市場に流通していない、幻のポケ●ンの如き存在!!もうもう、このビスケット生地のサックリ度とパンのパサふわっと度のバランスが、黄金律過ぎて泣けるって言うか…ところどころムラになってて、ビスケット生地がはみ出してるはしっこの所とか、もうもう…すんごいハッピーになれるって言うか…チョコチップのほろ苦甘さと、正確性のないざっくばらんな散りばめ方がたまんないっつーか…何度食べても新鮮って言うか、あああもうもう、マジでありがとうございますー!!」


 チョコメロンパン様をつぶさないように抱きしめ、MYチョコメロ化をさり気なくアピりつつ、改めてお礼を言ったら。
 鷹藤光は、笑った。
 「そうか…満がそんなに好きで嬉しいなら、良かった」
 鷹藤光が笑って。
 また、俺へと伸びてきた手が、ふわくしゃっと、やさしく頭を撫でていった。



 2011-06-29 22:58筆


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