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ずごごごごご…というおどろおどろしい、まるで2足歩行タイプのドラゴンの大群が突進中ですよ〜もうすぐやって来ますよ〜と言わんばかりの効果音漂う広くも黒い陰を背負った背中が、ゆうっくり、それはもうゆうっくりと、こちらを振り返るのが見えた。
ひぃぃぃ〜!!!!!
助けて、俺様何様カイ様!!!!!
ミオっち守るみたいにカッコ良く、クーツン(クール+ツンツン)キャラで全然オッケー無問題なんでカイ様っ、俺を助けてっ!!
だってだって、俺の側にはララ様もいないんだよ!!
なんて、心だけでも異世界にトリップした所で、現実は変わりません。
そんな簡単にファンタジー世界へこんにちわわ〜、ふっ、どだい無理な話です。
ええ、ええ、わかっておりますとも。
でもさ、心だけでもどっかへ飛ばしておかないと、満、恐怖でどうにかなっちゃいそう!!
怖いよおおおろろ〜ん!!
せめてこの人の機嫌が1ミリグラムでも良ければ!!
ああ、俺はどうしたらぁ〜はっ、教室出がけにとっさに引っつかんで来た、さとっちから貰った「ベーカリー・ふわふわ」のチョコメロンパン!!
終始恐怖に包まれたブレックファーストタイムを想い出して、満!
この御方、俺の特製スイーティーな朝ごはんをもくもく食べていらっしゃったじゃないの!
人の生き血が1番の大好物です(黒ハァト)って顔ながら、意外に甘いものイケんじゃね?!
くっ!
しかし、俺の生き甲斐、俺のライフワーク、俺の人生そのもののチョコメロンパン、しかもさとっちにいただいた「ベーカリー・ふわふわ」の超絶品1日限定12個のチョコメロンパン…
文字通り、悪魔に魂を売り渡して良いの、満?!
考えるのよ、考えなさい!!
もっと他にこの場を乗り切る良い方法があるハズよ!!
満はデキル子でしょ?!
などと、束の間の自由が許された時間内、マッハで自分を激励し、必死に大魔覇王様のご機嫌伺いについて検討していた俺なのですが。
大魔覇王様が完全にこちらを振り返られた段階で、マッハで視線は地べたを這い、土下座の勢いで頭を下げ、1秒だって躊躇うことなく自然に「ベーカリー・ふわふわ」の紙袋を差し出していたのでありました。
だってン、相手は巨体の巨悪よ。
サイアク殴られちゃったら俺、明日生きてる自信ないもの!!
「ご、ごごごごご、ごめんなさいぃぃぃ!!なんだかよくわかりませんが、とにかく非礼無礼の数々を心からっ心からっ心から誠心誠意、おおおおお詫び申し上げます!!かっかか、かくなる上は我が命に等しい宇宙至高の気高きステキ食物、学校半径10キロ圏内でナンバー1の実績を誇る『ベーカリー・ふわふわ』様特製の超プレミア・幻のチョコメロンパンをお納めいただきたい所存で御座いまっする、あしからずご了承願いますっ」
「まっする」言っちゃったぁぁぁ!!
満のバカン!!
とにかく、ぶるぶるぶるぶる、震え続ける俺。
しばらくずっと、同じ姿勢で震え続けていた。
いい加減、頭を下げるのも腕を上げているのも疲れた頃、重苦しい沈黙でこの場を支配していた大魔覇王様が、あろうことか「……ふぅ…」と!
それはちいさなちいさなため息っつか最早呪詛?!を吐いたものだから、ノミよりちっぽけな心臓を誇る俺が更にビビリまくったのは言うまでもありませんね。
そろそろ読者レディーの皆様も、満のノミどころかミジンコ以下っぷり、わかってきたよね?
ミジンコより見えない超単細胞生物の満だけど、これからもよろしく!
ヤダ、いっけない!
そうね、当面の大問題は大魔覇王様、心が現実について行かなくてすぐ逃げ出しちゃうわ。
ミクロどころかマクロの世界で細々と生きる、ちっちゃ過ぎる俺だけど、ありったけの勇気をぎゅうぎゅうに振りしぼりまくって、そろっと顔を上げてみた。
大魔覇王様の状況を把握せねば、スライディング土下座かジャンピング土下座か月面宙返り土下座か顔面クラッシュ土下座か、あるいはいっそ土へ還るべきなのか、最良の選択ができないものね!
イケイケMI・CHI・RU!
フレフレMI・CHI・RU!
そうして顔を上げて、俺はそれこそ文字通り、心臓が止まりそうになった。
大魔覇王様が、それは哀しそうで寂しそうな、どこか辛そうに哀愁をたたえて、静かにじっと俺を見つめていたから。
2011-05-12 22:47筆[ 14/25 ][*prev] [next#]
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