yes You,yes Life


 したってさ。
 なんとなーく、やで?
 いっつも人のケツ、追っかけ回してくる、バリうぜーヤツが。 
 他の女とか、男とかと。
 滅多にしゃべらへんヤツが。 
 本人、気乗りせんわー言いながら、出向いた飲み会や。
 俺の方がむしろ、楽しみにしとった飲み会や。 
 そこで、普段はめっちゃ愛想のカケラもないクセに。
 俺にかって、ぜんっぜん笑顔なく、あるのはイヤミ〜な黒い笑いだけで、ネチネチつきまとって来るクセにやで?

 すんげー笑顔で。
 にっこにこしながら、誰にでも彼にでも笑顔振りまいて。 
 「やーん!高見(たかみ)君って、ホントはフレンドリーなんだー!」
 「俺もゼミ同じだけど、ビックリしたー!お前って実は面白いヤツなのな!」
 盛り上がる飲み会の、輪の中心で。


 「だって。大学って勉強する所でしょ?」

 
 済ました顔で、かわいー天使の笑顔振りまいて。
 皆、爆笑しながらも、その表面上の天使顔にウットリしたりして。
 そんなん見せつけられたら、気になるやんか。
 どんなに俺が、高見雫(たかみしずく)君に、興味のーても。
 チラッとぐらいは、なんやねんコイツ…ちゃんと笑えるんかい…!
 って遠目に眺めながら、内心ツッこむっちゅーねん…!

 アホらしなって俺は、ちょっと煙草〜ってその辺のヤツに言って、店の外へ出た。

 あー…ダルいわー… 
 …なんか、おもんないし…
 このまま帰ったろっかナー…


 「喜好誠仁(きよしせいじん)」
 「ぎゃーっ!!!!」


 煙草吸いながら、ぼけーっとしとったら。
 何の気配もなく近付いてきたヤツが、不意に横におって。
 くわえた煙草、落としそうになった。

 「な、なんやねん…!急に現れんなや…!つか、ワレ…人の名前フルネームでデカい声で呼ぶなって何度言ったらわかんねん…!」

 ――…キヨシセイジン…――

 当て字はめたら「清し聖人」なんつって、ホンマ洒落にもならんくだらんボケた名前や。
 現れたチビ…
 たかみしずく君は、いつもどーりの黒い微笑を浮かべて、俺の口から煙草を勝手に取り上げた。
 「お前なあ…!何すんねん…!あああああーっ、おま、それ…間接ちゅーになるやんけ…!!」
 俺から取り上げた煙草を口にくわえ、慣れた様子で吹かしとる、天使には似合わんスタイル。
 ホンマこいつ…!
 見かけと違って、真っ黒クロクロデビルや…!

 「……そろそろ、光栄になって来ただろう?」

 にやり、口の端を歪めたデビルしずく…
 …の割に、そこらの女子にも負けへんデッカい瞳はキッラキラ輝いて、長い睫毛を何度も瞬かせとる。
 「何ぬかしとんねん…!何で俺がワレに煙草取られた〜けど光栄ですぅ〜って想うワケあるかい!後で返してもらうからな…!」
 盗られた煙草、恨めし気に見送ってから。
 コイツの登場のせいで、新しく煙草吸う気になれんと、俺はもうホンマに帰ろうと想った、のに…
 「そんなに気になったか?」
 「あぁ?!」


 「俺がお前以外の人間と親しく話しているのが、気に食わないからあの場から逃げ出したのだろう?」


 はあああっ?!
 
 毎度のことやけど…!
 コイツの言っとることは、俺にはホンマ理解できん…!
 デビルは確かに標準語やのに、ぜんっぜんわからへん。
 「……なんでこの俺が嫉妬した〜みたいに想えるんや…?アホちゃうか、自分…ホンマおかしいって…なんでそんなポジティブシンキングなん…?」
 デビルのポジティブシンキングで、一気に5才は年取った、それぐらい疲れたわ…
 がっくり、肩を落とす俺に。

 デビルのくせに、天使ちゃんの笑顔。


 「そろそろ惚れただろう?」


 「はぁっ?!!どこの誰が誰に惚れんねん…!」
 「俺のことが気になり始めただろう?実際、気になっているんだろう?」
 「ちょ…なんやねん、その短絡思考…!」
 「惚れたなら惚れたで、素直になったら良い」
 あ、アホか…!
 「アホぬかせ!!誰がワレなんか…誰が好きなるかぁー!!ワレ、大概にせぇよ!?」
 「ふうん…?まだ意地を張るつもりなんだな」
 「あのなあああああ!!!俺は!!カワイイ年下の清純巨乳ちゃんと、ドラマみたくオシャレな恋に落ちてキャンパスライフっちゅーもんを謳歌する為にわざわざ大阪から来たんやで…?!愛する祖国を捨ててまでこの東京砂漠に来てんで…?!やのになんでお前みたいな男で天使顔したデビル君と…!!!!」

 「そんなワケのわからないアヤシい女より、俺の方が余っ程具合が良い」

 「お前のがワケわからんしアヤシーっちゅーねーんっ!!!!ナニ、天使顔で何気にヤラしいこと言っとんねん…!!俺の大事なカワイイ息子ちゃんをどないしたってデビルん中に突っ込むワケあらへんっちゅーねん!!そんな大冒険しに来たんちゃうわーボケー!!!!」
 「やれやれ…喜好誠仁はまだ世話が焼けるらしい…」
 「あ、あのなあ…!誰がお前なんかの世話になるか…!つかフルネームで呼ぶなやっ…!ええ加減にせいよ!!」
 「ドウモアリガトウゴザイマシター」
 「ちょ…!!お笑いのことなんも知らんクセ、締めんなや勝手に…!しかも棒読みやんけ…!!」

 
 ホンマ…
 なんやねん、コイツ…

 
 喜好誠仁、愛する大阪から出て来て早1ヵ月とちょっと。
 出逢い頭にいきなり天使の顔したデビルに捕獲され。
 まだハゲとうないのに、既にツルッパゲんなりそーなくらい、毎日ツッコみ入れまくりの心労多いキャンパスライフです…
 なあ、神様…
 俺、なんかしたん…?



 2009-07-01 22:33筆



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