彼流の愛し方

 
 まったくよくやるよ……

 ファーストフードでお茶しながら、熱心に電話をかけてる目の前の幼馴染みを眺めた。
 ヤツが電話してる間にも、すれ違う女子高生やら何やら、いろんなヤツらが注目しては、チラチラ見て行く。
 もちろん、俺なんかを見てるワケじゃなくて、ヤツひとりに熱く注がれる視線。
 ガキの頃は一緒にハナ垂らして走り回ってたのに…
 ため息を吐いた。

 運命の分かれ道は、どこだったっけ…?

 たしか、中学ぐらいから、コイツは急に変わってった。
 背もガンガン伸びてったし、勉強は勿論、スポーツも本気で頑張る様になって、ただやんちゃだったクソガキを卒業。
 どんどん男らしくなって、どんどんカッコ良くなってって、めかすこととか覚えて、友達も増えて… 
 同時に、めっちゃくちゃ派手に遊ぶ様になった。
 女のコは勿論、コイツは何やら来るもの拒まずの快楽主義らしく、男まで手玉に取って遊びまくる様になった。
 華やかな生活を送り始めたコイツと違い、俺は地道で平凡な暮らしを心の底から望んだ。
 まるでまったく違う俺達。

 だけど未だに、こうしてつるんでたりする。
 コイツが忙しいもんだから、滅多に会わないけど。
 中学卒業してから、ガッコも離れちゃったし。
 「……悪ィ、放置して」
 「べっつにー…お疲れ〜っす」
 やっと電話が終わったらしい、携帯の画面閉じて、ちっとも悪びれてないヤツ。
 「なぁんか〜忙しそーですねぇ〜え?」
 ふざけてイヤミっぽく言ってやった。
 ヤツはきょとんとしてから、目を細めて。


 「忙しいけど、俺の幸せの為だから。つか、お前の為だから」


 ふうぅぅん、へぇ…

 ………って、あ…?!

 前半は良かったけど、後半!
 何か意味わかんねーこと、言ってなかったかコイツ…?
 「ナニ言ってんの…?」
 思わず聞き返したのが、運のツキ。
 後で死ぬ程、後悔したけど、もう遅い。
 にっこり、ノーマルな男の俺から見ても目を奪われる、きれーな笑顔。
 「俺がどーしてこんな熱心に遊んでるか教えてやろーか?そろそろ潮時だと想うし…」
 「いや、あの…別に聞きたくナイデス…」
 目を逸らそうとしたのに。
 

 「お前の為だよ」


 はぁ?!
 「…はっはっはー…ナニ言っちゃってんの、お前………意味わかんねー…」
 遊びまくってんのが、俺の為って。

 「お前が俺と付き合った時、いろいろ楽しめる様に研究してんだよ。喜べ、俺はイイぞ?」

 何言ってんですか、この人。
 この人、何言ってんですか神様。
 「健気な俺を繕うのもそろそろ疲れてきたしー…我慢も限界だしー…覚悟しとけよ?」
 「は、あ…?!覚悟?!何が…お前、マジでナニ言ってんの?!」
 ねぇ、ちょっと誰かー!!
 幼馴染みが急に異国の言葉を喋り始めたんですけどー!!


 「もう全部清算して、お前だけに絞るから。覚悟っつか、そのつもりで居ろ。
 俺が手ぇ出す前に、他のヤツに指1本触れさせんなよ?」


 ちょ………
 頭がまっしろなんですけど。
 意味、わかんねー…
 わかりたくない。
 何も聞かなかった事にしたい!!
 神様、この男は一体、急にナニヲイッテイルノデショウカ…


 それは高校2年に進級した春の出来事だった。



 2008-08-04 14:01筆


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