壱,初めまして
ひょ、ひょえええええーーーーー!
う、嘘っ?!
嘘だよ、ね。
夢か、はたまた幻か。
俺はまだ、寝惚けてんのかな?
緊張して寝れなかったから、だよね?
それにしてもあまりのことに呆然として立ち止まった、ら、後から来た人にぶつかってしまった。
「あっ、すみませ…!」
通り過ぎて行く、礼儀正しそうな「人」に、開いた口が塞がらなくなった。
「いえ、どういたしまして」
非常に感じのいい会釈に、返礼もできずにただただ、その後ろ姿を凝視する。
爽やかな笑顔、だったけども!!
どーーーーー見てもあの、頭の上!!
獣の耳、だよね?!
そしてあの、どういう着こなしになってんのかわかんねーけど、わかりたくもないけど、ふわっもふっと風になびいてんのは、尻尾、だよね?!
コ、ココ、ココはコスプレ会場なのか?!
この学校の入学式は、コスプレ必須?
必須科目に、コスプレ?
日本の文化だから?
これからますますグローバル化していく社会に対応できる、若者の育成の為に、世界に通用する文化を推進!的な?
「おっと、失礼…」
「いえ…っ!!」
ショックのまま立ち止まり続けて、どーにか自分を納得させようと必死にあれこれ考えてたら、行き交う生徒にまた、ふわっと触れて焦って。
またあんぐりと口を開けて、でも息は止まった。
今!!!!!
肩触れると同時に、ふわっとしたのって、たてがみ!!!!!
たてがみが触れたっつーか、ほぼほぼ獣さん、だった。
よろりと、咲き誇る桜の木にもたれる。
マジか。
マジなのか。
目だけぎょろぎょろ動かして。
何度も瞬きして。
深呼吸して。
目をこすって、大きく息を吐いて、いちにーさん!
はい、景色変わらなーーーい!
桜満開、はいキレイーーー!!
桜色の空を仰ぎ見てから、脱力して、視線を戻した。
見渡す限り、ほとんど「あやかし」の巣窟、だ。
街中の比じゃない、ほとんど、が変化(へんげ)の術で人間然として澄まして歩いている。
中には、人間も居るけど。
誰もこの状態に気づいてない。
人も「あやかし」も一緒に混ざって、顔見知り同士でにこにこ笑い合ったり、ちょっと緊張した顔で校舎に向かってる。
なんだ、ここは。
この学校って、「そういう」学校なのか?!
いくら街中から離れた、のどかな田舎町の自然豊かな山の上だからって!
ぐらっと目眩を感じて、おっと危ねー!
慌ててお守りに等しい、眼鏡をポケットから出し、完全防備。
レンズ1枚を隔てると、ぐっとラクになった。
「あやかし」の気が、ここは強すぎる。
――…真(まこと)を見やぶる、目をあげる…――
――…チリーーーン…――
耳元を、ふいな風が掠めたようで、身震いした。
いろんな意味で、震えるしかないけどな!!
うわーーーん、ばあちゃーーーん!!
情けない心持ちになった時、急に想い出した。
ま、まさか、あの理事長も「あやかし」だったのか?!
でもあの時、俺、眼鏡してなかったし、何も感じなかったのに!
ほんの数週間前の出来事が、くるくると木枯らしが舞うように、いろんなことが回転し始めた日を想い出す。
『君が、稲荷木幸音(とうかぎ・ゆきと)君…?』
2016.4.18(tue)23:22筆[ 3/8 ][*prev] [next#]
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