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 こちらへ入学してからしかし、いろいろな「格好いい」「美形」な御方をたくさん拝見している…眼福というやつだろうか。
 同じ男として、すこし哀しく、とっても羨ましい。
 俺なんか、俺なんか、七五三なのに…
 俺も皆さまにあやかりたい…はい、これから勉強させて頂きます。
 心の中で精進を誓ったところで、後方に控えていらっしゃる御方に気づいた。

 同じように整えられたすこし長めの黒髪、黒フレームの眼鏡、きちんと着こなされた制服姿、でもこの御方にはどこか柔らかい雰囲気を感じる。
 華奢な体躯でいらっしゃるけれど、尖っていないというか。
 失礼のないように視線を向けていたつもりが、ふと目が合ってしまった。
 合った途端、ウィンクのように片目を閉じられた。
 え?と想う間もなく、視線を逸らされた。
 気のせいかな…?
  
 「日和佐(ひわさ)先輩、ヒマなんですか」
 「生徒会と一緒にするな、昴。お前等のお陰で忙しい」
 「日和佐先輩、凌(しのぐ)、念の為聞くが、俺らの居場所はどうやって?」
 「「GPSだ、仁」」
 またしても、GPS…?!
 風紀委員さまらしい、御2方が出された携帯電話には、「生徒会と武士道の現在地」が見事に現れていた。

 ???
 「武士道」もアイドルさまも風紀さまも、お互い名前で呼び合ったりしておられるし、GPSを活用なさっておられるようだし…
 不穏な空気や、睨み合いは続いているけれど。
 やっぱり、もしかして。
 「……あのぅ、一成…」
 「ん〜?なぁに、はるる」
 傍らの一成の腕を突ついて、こっそり聞いた。

 「皆さま、仲良しさんなんだね?俺、すぐ食べるから席譲るよ。皆さま、積もる話がおありなんじゃない?」
 春休みも開けたばかりだし、と想ったのだけれど。


 「「「「「ぜんっぜん仲良くないし」」」」」

 
 いろんなところから発生した声が、調和して響き、俺の元へ届いた。
 そうは言っても、こうしてハモっていることだし、照れてるのかなと想って皆さまの表情を拝見したら。
 誰もが心底うんざりした、イヤそうなお顔をなさっておられた。
 そんなところまで調和しておられる…
 だけど、否定されるということは、そんなに仲良くはないのか…
 首を傾げる俺に、美山さんが教えてくださった。
 「生徒会と風紀と不良組の仲の悪さは伝統だ」
 で、伝統…!

 「そうそー!幼等部の頃から公認の事実なんだぜー!」
 おとなりさんも付け足してくださった。
 幼等部の頃から…!
 「いろいろあるんだからね!」
 あいはらさんは相変わらず、お顔が赤い…
 「萌えりー萌えすぎる……萌えは地球を救う……」
 ひとつやさんも赤い、ほんとうに大丈夫だろうか…

 「はるる〜、あのね〜俺らはとある『約束事』に縛られているんだ〜。それが何か今は明かせないけど〜いつか聞いてね?今は〜俺らは俺らの仲間以外と、仲良くしたくない気持ちでいっぱいさ〜!はるるを護るのさ〜!」
 一成がこそっと教えてくれた。
 「約束事」?
 なんだか複雑そうだ。
 つまり、複雑な関係ということなのだろう。




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