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 離れないひーちゃんを、よしよしとあやしていたら。
 ぞくっと、鳥肌が立って。
 顔を上げたら、「武士道」の皆が周りを囲んでいる、それはさっきと変わらない状態だけれど、空気が変わっていた。
 やんちゃする前みたいに…笑いながらも、殺気立ってる…?!
 「あ・ま・が・い・く・ん…?生徒会のチャラチャラ書記君が、な〜んではるると顔見知りなのか知らないけど〜てめぇの立場わかってんのかよ…?いつまでくっついてんの〜君の親衛隊、こっちガン見してますけど〜?」
 「いーコだから今すぐはるとから離れな〜?歩く下半身ルンルン男のてめぇには、俺らのはるとに触れて欲しくねぇんだわ」

 う…!!
 両隣の2人がまた、なぜだか強烈に怒って…?!
 と言うか、「生徒会のチャラチャラ書記君」?
 「歩く下半身ルンルン男」?
 真実はわからないけれど、ひーちゃんってば、一体どんな変わり果てた学校生活を…!
 「お母さんから離れろ!!」
 「そーだそーだー!!」
 「お母さんにチャラ男菌が移る!!」
 「そーだそーだー!!」
 「今すぐお母さんから離れて下さらないと、戦争起こしますよ〜?」
 仁と一成の後を追うように、他の子たちまで…野次のように聞こえるけど、全員、額に青筋浮かべて目は無表情、口元だけは笑ってる…本気だ…!!

 どうしよう、皆、すごく怒ってる?!
 他の皆さまも、食事の手を止め、怪訝なお顔でこちらを見ている。
 このテーブルだけじゃない、他のテーブルの皆さま、人波を築いていた皆さままでもが、苦いお顔でこちらに注目しておられる。
 そりゃそうか…
 アイドルさまの一員であるらしい悠が、今日から入学した俺と接点があるだなんて、誰も想いも因らないことだろう。
 説明しなきゃ、ひーちゃんとのこと。
 口を開きかけた時、ずっとくっついて俺の首元に顔を埋めたままだったひーちゃんが、顔を上げた。

 「……クソだりーんスけどぉ、センパイ方、一体なんなんですかぁ〜?」
 う…!!
 ひーちゃんまで、冷静さを欠いている…!!
 「武士道」という多勢を相手に、なんたる強気!!
 強くなったのはいいことだけれども、ひーちゃん…
 その虚ろな眼差し、まさか、まさか!!


 「はるちゃんはぁ〜俺んだしぃ〜?誰にも渡さないしぃ〜触っていいのも俺だけだしぃ〜見るのも禁止ぃ〜!ハイ、だぁ〜かぁ〜らぁ〜全員見てんじゃねぇよ…!!」


 あ――…イタタタァ…!!
 キタ――…
 きちゃった〜…
 ひーちゃん、直ってない〜…
 俺を所有物化するクセ、それを人前で堂々と宣言するクセ、ぜんっぜん直ってない〜!!
 久しぶりの再会、お互い高校生、それでもそこは変わってない〜!!
 「「「あ゛ぁ…?!」」」
 わー!!
 「武士道」全員、いきり立ってしまった…!
 睨み合う、その中央に挟まれて、俺は呆然とするしかなかった。

 これは一体、どういう事態なんだ。
 どうしてこうなってしまったんだ。
 俺はどうしたらいいのでしょうか。
 ふと、現実逃避を願う無意識に因る行動か、手元に視線を落としたら、食べかけのお料理の姿。
 そうだ、ここはレストランで、食事中だったんだ。
 それも俺たちだけの空間じゃない、他の生徒さまも多数いらっしゃる公共の場だ。
 なんとかしなければ。
 なんとかしなければ!!
 拳を握りしめた、でも、戸惑いとパニックでまっ白な頭の中…


 「騒いでんじゃねえよ、悠」





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