わ〜…お優しい微笑みが、胸に染み入るようです。
 「いや、気にしないで良いよ。なるほど、外部から来た人はそんな風に感じるんだね。新鮮な意見が聞けて、生徒会としても有り難い…」
 まぁ!
 笑顔もさることながら、なんてお優しいお言葉でしょう。
 落ち着いた大人の男性そのもの、まるで(お目にかかったことはないけれども)英国紳士の如き振る舞い!

 流石は王子さまですねえ。
 俺とたった一才の差、されど一才の差、幼き頃から厳しい教育を受けてこられた賜物なのでしょう。
 素敵な人だなぁ。
 初めて会う学校の生徒さん、案内までしてくださっているのがこの御方で、ほんとうによかった。
 すこし安堵した俺は、恐る恐る今一番気になることを、思いきって聞いてみることにした。

 「あの…折り入ってお窺いしたいことがあるのですが…よろしいでしょうか」
 「何かな」
 王子さまのお優しい微笑に心を委ね、前陽大、いざ参る!
 「学校内の散策って、認められているのでしょうか…?」
 「………学園内の散策…?」
 「はい。学校に慣れた頃合いを見計らって、是非この辺りを散策したいと考えております。その辺りの規則はどうなっているのでしょう…学校案内には載っていなかったと記憶しております。俺が見落としているようでしたら、大変申し訳ございませんが、ご教示願えないでしょうか…」
 
 王子さまは、今度こそ、しっかりと目を見張って静止。
 見つめ合うこと、数分。
 目上の人に対して俺から目を逸らすなど、失礼を重ねるわけには参りません。
 そのまま、ヒヤヒヤしながらじっと待つしかなかった。
 風にそよぐ、あちこちの木や緑が揺れる音。
 桜も、それに合わせて、はらはらと花びらを落としているのが、視界の端に映った。

 どうやら花びらは、王子さまがお気にいりみたいだ。
 でも、王子さまはお好みじゃないご様子、髪や服についた花びらを、すこし疎ましそうに払いのけて。


 「………変なチビ………」

 
 ぼんやりと花びらに気を取られていた俺は、慌てて我に返った。
 「えっ?」
 「…いや、何でもないよ。そうだね、特に規定はないから、自由に散策すると良い。但し、学園内は君の想像以上に広い上、知っておくべき暗黙のルールもある。自然が多いだけに指定保護区域もあるからね。この近辺の散策は数ヵ月待った方が良いんじゃないかな…校舎や寮の近辺にも立派な庭園があるし、先ずはそちらから始めてはどうだろう」

 わあ、流石は十八学園さま、指定保護区域があるのですね!
 そうでしょうともそうでしょうとも、想像を遥かに凌駕した、こんなとんでもなく素晴らしい所ですものね。
 うーん、血が騒ぎますなぁ!
 たぎりますなぁ!
 早く慣れて学校中を探検しつくすぞー!

 「そうですか…わかりました!俺の個人的な興味で足留めしてしまい、すみませんでした。ご丁寧に貴重なアドバイスをいただけて、とっても助かりました。ありがとうございます!散策させていただく際は、十分に気をつけます」
 
 王子さまスマイルには勝てっこないけれど。
 感謝の気持ちを表すべく笑ってお礼を言って、ぺこりとお辞儀をしたら。
 王子さまから、視線を逸らされてしまった。
 「………ガチで変なチビ………」
 「え?」
 「何でもない。じゃあ行こうか、理事長がお待ちだ」
 「はい!」



 2010-03-24 12:53筆


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