136.天使バルサンが奏でる狂想曲(終章)


 新歓って祭りが終わったら、急に平和だー。
 次は一際デカい祭り、体育祭が待ってるけど。
 はるとと同じクラスになれなかったから、チーム違うのヤダな!
 コハルが一緒だからいーけどさっ。
 すっかり桜が散って緑が濃い。
 「ふわあ〜あー…」
 「穂!大口開けて欠伸なんてみっともない!それで見守り隊の副隊長なんて情けないったら!口!閉じるっ!中等部のガキ共もとい新1年がどっから見てるかわからないんだからね!」
 「ふぁいっ!」

 とろんと眠たくなる昼下がり、オレとコハルはいつも通り、昴とはるとを見守っている。
 いつ何があるかわからないからな!
 オレ達の後輩だと言うのに、中等部から上がってきた連中は生徒会に入ったヤツら筆頭に生意気でいけ好かないヤツばっかりだった。
 『最初に一言言っておきますけど。柾先輩を辞任たらしめる無能の3大勢力等、最早不要かと僕は想います』
 特にアノ、昴の後に会長務めてきたとかいうフジエダってメガネ、1年のクセに超ーーームカつくっ!
 全員ブチギレてんのにお構いなしでさ!

 『結果良ければ全て良しとは言えど、今後の先輩方の働き次第では制度の一新も検討させて頂きます。下らない家族ごっこは程々に、先輩方もそろそろ受験や家の進退の見極め時でしょう。後は我々にお任せ下さい』
 キーーー!!
 今想い出しても腹立つなーーー!!
 コハルなんて笑顔で固まったまま、呪いの言葉をずっとブツブツ呟いてたもんな。
 けど、誰も何も言えないんだって、後で聞いた。
 フジエダってメガネは昴の後を引き継いで、カクシンテキ?な学園の形成に貢献して、キラキラしてない冷たくてつまんないカンジのヤツなのに、生徒や先生から絶大な信頼を得てるんだって。

 ま、昴がちゃんと庇ってくれたからいーけどさ!
 『藤枝、お前らの言い分があるのはわかる。けど終わった事に口出しするんじゃねえ。お前らがどんだけ頑張って来たか、ひそかに心配してくれてたのもわかってる。でも現に俺は此所に居てお前らと顔合わせてる。こいつらのお陰に他ならねえ、それが答えだ』
 昴に言われたら急にしおらしくなってさ、ふんっ。
 はるとにも風当たり強いみたいだし、まったく油断なんねーよな。
 「ふわぁ〜…それにしてもお昼寝日和…」
 「ちょ!コハルだって油断しまくってるじゃん!オレより大口じゃんかー!」
 「うるさいよっ!こんないーい天気で起きてる方がバカだっつの」
  
 まあな〜いろいろあったのが落ち着いて、こんなポカポカしてたらヤバいよな。
 フジエダ達はウザいけどっ、体育祭でAチームなんかぶっ飛ばしてやるからなっ!
 あ、でも昴もはるともまたAチームなんだよなー何でメガネが同じで、オレ達が違うチームなんだろ。
 ヤダなーあーあー、メシ食って腹いっぱいになった後って、マジ眠いなーーー。
 「はっ!穂っ!!アホ面晒して寝惚けてる場合じゃないよっ」
 「ふえっ?!何っ何?!何かあったのかっ」
 テラスのテーブルに突っ伏して、うとうとしてたら急にコハルにバシバシ叩かれた。
 慌てて起き上がると、コハルに小突かれた。

 「バカっ本物のバカ!!静かにしないと起きちゃうじゃないっ!!」
 「いてっ!コハルのが大声じゃんかー…」
 しーしーって騒がしく小突きまくられるまま、顎で示された、昴とはるとがのんびりしてる筈のベンチに目を向けて。
 ぽかんとなった。
 寝てる?!
 ポカポカの日差しに照らされて、昴もはるともお互いもたれ合い、目を閉じていた。
 新歓でバっタバタしてたもんな。
 疲れてんだよな、終わってホッとしたんだよな。

 そう想いながら何か、胸がいっぱいになった。
 安心しきった顔で、無防備に寝てる。
 やわらかい日差しに溶け込むように、きれいだった。
 「「ん?」」
 穏やかな光景にパタパタと武士道が入って来る。
 邪魔する気か?!とコハルと立ち上がりかけたけど、2人の側に近付くなりそーっと静かになって、そろーっと看板を立てて行った。
 看板?!
 デカい字で「おかーさんのネムネム、邪魔するヤツは覚悟しな!手ぇ出した瞬間にオロす!!by武士道」と書き殴ってある。

 そのすぐ後に風紀委員がやって来て、武士道よりスマートにキビキビと働いていった。
 「何人たりともこの眠り妨げる事なかれ。妨げた者にはレッドカード進呈。風紀委員」と筆で達者に書いてある。
 続いて生徒会が来た。
 新入りのメガネ達は不服そうで、手伝いもせずに武士道とかの看板を蹴ってるのを、リヒト達が殴って追い立ててった。
 デっコデコの看板には「お父さんとお母さんの邪魔しちゃ駄目だよ…?この学園で平和に生きたいならわかってるよね〜!せいとかい」だって!
 想わず笑いそうになってたら、忍者みてーな素早さで何処からともなくピンク色のウサギの着ぐるみが現れた?!

 「「ラブハンター・ピンクバニー!」」
 コハルと声を合わせて息を詰める。
 新聞報道部に突如現れた、ラブハンター・ピンクバニー名義でひたすら昴とはるとの記事を投稿し続ける謎のウサギ!!
 どう考えても2人の熱烈なファンじゃねーのってぐらい、的確で想いの隠ったアツい記事はオレ達見守り隊もつい熱心に愛読してしまう魔力を持っている。
 寝ている2人に気付かれない様に、無音のカメラで四方から写真を撮った後、すぐに消え去ったウサギに、やっぱり間違いないと頷き合う。

 放課後には新しい号外が読めるかも知れない!
 正体は一切謎でワケわかんねーけど頑張れよ、ラブハンター・ピンクバニー!!
 期待してるからな!!
 急に目が覚めたオレの腕をコハルが強引に引っ張った。
 「こうしちゃ居られないっ!穂っ、行くよ!!負けるもんか!!」
 「お、おうっ!!ってコハル、いつの間にーーー?!」
 片手には「良い子はお父さんお母さんの眠りを見守りましょう。家内安全第一!見守り隊、まだまだ隊員受付中!」と書いてある、一際デカい看板持って、コハルが笑いながら駆けて行く。

 なんだろ、なんかこういうの、面白くって良いな!!
 「待てよーコハルー!」
 上天気の中、コハルの後を追ってオレも駆け出した。



 2014.11,3(mon)20:44筆


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