23.歌舞伎町初体験withジャイ●ン
美山さんとお話している内に、A組の教室へ戻って来た。
えーと…
席はどうしたらいいのかなぁ…?
と想う間に、クラスの皆さんは先ほどと同じ席に座っていらっしゃる。
俺もそれに倣い、中央最後尾に美山さんと並んで着席した。
俺の前の席には、あいはらさん。
美山さんと反対側の隣には、おとなりさんがいらっしゃる。
教室中が落ち着いたところで、ずっと引率してくださっていた、ほぼ確定・担任の先生さまが前の教壇に立たれた。
改めて拝見すると…
アイドルの皆さまとはまた違った、大人の華やかな気配溢れる、整った容姿の男性だった。
十八さんの学校ってまさか、容姿審査とかあるのかな…?
そんなことを想ってしまうぐらい、大人も子供も皆さま一様に個性のある…いわゆる、これがきっとイケてるメンズさん、ということなのだろう。
教卓に両手をつき、ぐるりと教室を見渡す眼光は、どこか微笑を含みながらもとても鋭く。
茶色と黒が混じった長めの髪は、自由に遊ばせ流しておられる。
仕立てのいい白地のスーツの袖をまくり、紫紺の光沢あるピンストライプの生地でできたシャツ、そのボタンは第2まで開けられ、褐色の首筋にはゴールドのチェーンが見えている。
ネクタイはない、かなり着崩したスタイル。
それがなぜか不快を与えないのは、あの強い眼光から窺える確個たる意思の気配と、気品漂う顔立ちのためだろうか。
着席するまで、入学式の余韻のまま、すこしざわめいていた教室内は、今や完全に静寂に支配されている。
ひとしきり見渡した後、男性がおもむろに口を開いた。
教室内に、緊張が走った。
「改めて、おはよう、俺様のA組に進級したクソ可愛い子猫野郎共。さっきは悪かった。式前に教室でSHRの予定がさ〜、髪が決まんねぇわネクタイないわで手間どっちまってよ〜スマン!だが、おめーら中々やるじゃねーか…いー走りっぷりに見惚れたぜ?
そんなワケで、これから1年間、俺様がおめーらの担任様々だ。大体の連中はわかってるだろうが…あー、一応、自己紹介しとくか」
男性がチョークを握り、カッカとリズミカルに力強く、大きな字が黒板に刻まれた。
それを、見て。
俺は、あんぐりと、目も口も開けた。
「俺様は業田剛志(ごうだ・たけし)。担当は現代国語だ」
え…?!
え、え…
えええぇぇぇっ?!
驚愕している俺を置いて、確定・担任の業田先生は話を進められた。
「先ず言っておくが、この1年間、学園内外において俺様に迷惑がかかる様な行為は絶っっ対にしないよーに!!…学年主任のセンセー、口うるせーし相手すんのクソ怠ぃからな…
どーしても不良行為に励むっつーなら、絶っっっ対にわからねーバレねーやり方で賢く振る舞えよ?ま、揃いも揃っててめーらの家柄が『それなり』だしな、賢い子猫ちゃんばっかりだって信じてるぜ?
もし俺に迷惑を及ぼしたヤツは……」
突然、先生の背後からおどろおどろしい…夏のお化け屋敷のようなアヤシい気配が漂って来た。
照明が落ちたのかと想うほどに、急に薄暗く感じる教室内。
再び満ち満ちる、緊張感。
誰もが、微動だにしない、できない。
業田先生は、不敵に唇の両端を上げた。
「……その時に教えてやるよ……2度とお日さんの下で笑えねー様な真っ暗人生に陥りたくなけりゃ、大人しく学園生活を謳歌するこった。俺様の手を焼かせんじゃねーよ?クソ可愛いガキ共よ」
わぁ…
気迫のこもったご挨拶だぁ……
その整ったお顔も、ドスの利いた声音も、身にまとわれた雰囲気も、なにもかも鬼気迫っている…
と言うよりも、なによりも。
ごうだ、たけしって…!!!!!
なんで誰も、そこに反応しないんだろう?!
2010-07-06 23:55筆[ 75/761 ][*prev] [next#]
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