84.宵闇
よーしよし、こんがり焼き色は火が通った証!
あらかじめ作っておいたタレを回しかけ、バターを落とす。
じゅわぁっと美味しい音と共に、香ばしい匂いが立ちこめた。
「「わぁお!!うまそぉ!!」」
そっくりお揃いの声、お揃いのポーズに癒されながら、よそってくださったばかりのホカホカごはん入りどんぶり4つ分の前へと移動した。
心配そうに見守る2人に力強く頷いて見せ、できあがったばかりの鮭の甘辛ステーキを次々とのせていく。
まだじゅわじゅわしているタレを順にかけてっと。
「はい!優月さん、温泉玉子のせて!」
「はいっ!」
「はい!満月さん、薬味ネギのせて!」
「はいっ!」
うむっ、今夜も見事な連携プレイ!
「「「できたーっ」」」
そしてタイミングよく、遥か遠くから聞こえていたシャワーの音も途絶えましたよ。
「「「鮭の甘辛丼・温玉のっけのできあがりー!」」」
3人でハイタッチし合って完成!
ふっふっふ、間違いなく見事なできばえじゃないですか。
ずっと緊張して張り詰めていた優月さんと満月さんは、大きく息を吐いて、朗らかに笑っている。
それでも当初に比べれば大分慣れてきてくださったかなぁ。
誠に恐縮ながら、お台所に入るとどうしてもスパルタ気味になってしまう。
まして宝の山御殿だから、俺の真剣度も高まるというもので。
あらかじめご了承いただいた上で、一緒にごはん作りしてくださっているけれど、ほんとうにいいのかなぁって実は未だに心配です。
この笑顔を見る限り、大丈夫そうだけれど。
「「お母さん、もう運んでいいっ?」」
俺の代わりとばかりに手際よく携帯撮影した後、キラキラの瞳2対がそれは嬉しそうにこちらを振り返った。
「ええ、もちろんです。よそ見しないで気をつけてくださいね」
ピッタリ息の合ったお返事の後、慎重に副菜やカトラリーの準備が整っているダイニングへ向かう姿は、とっても微笑ましかった。
お2人が楽しいならよかったです。
「腹へったー何かいー匂いする〜」
「「お父さん、お父さん、見てっ!!」」
おっと、御殿主さまもリッチなバスルームからご帰還ですね。
優月さん満月さんが額に汗しながら頑張った、かぼちゃサラダを冷蔵庫から出し、俺もダイニングへ向かった。
「へぇ、超〜美味そう。ゆーみー、作ったんだ?」
「ううん、お手伝いしただけ!」
「お母さん作に決まってるぜ!」
「優月さんと満月さんが一生懸命お手伝いしてくださったおかげで完成したんですよ。柾先輩、このサラダがお2人作です」
「「お母さんったらっ!」」
あら、モジモジしちゃってお可愛らしいこと!
「すげえじゃん、ゆーみー。つい最近までまともに包丁握った事なかったのに。偉い偉い。早く食おうぜ。マジ限界ー」
「「食おうぜー!」」
「はいはい、皆さんちゃんと座ってくださいね」
「「「はぁい!」」」
優月さん満月さんが並んで座り、テーブルの角を挟んで柾先輩と俺が横並び、すっかり定位置になってしまったなぁ。
手を合わせていただきますと声を合わせた途端、まぁこのそっくり親子さんたち、食べること食べること!
「んーサラダ美味い。ちょっと和風で、けど林檎スライスが効いてんなーやるじゃん、ゆーみー」
「「えへへー!照れるでござるー」」
しっかり誉めるところは誉めながら、柾先輩も優月さん満月さんもペース衰えず!
「キャベツときのこのスープも美味い」
「「このコマツナ白和えも美味ーい!」」
「「「鮭丼、最高!バター醤油やべぇ!」」」
3人の怪獣に因って見る間にお皿はすっからかん、今夜もにぎやかで楽しいごはん時間でございました。
なんだか不思議だねぇ。
ずっとこうしてきたような、穏やかであったかい時間だ。
実際にはつい最近、始まった団らん?なのに。
4人でお台所の水場に並んで、洗いものを片づけながら、しみじみと実感した。
柾先輩と優月さん満月さんったら、ほんとうに親子みたいなんだもの。
2014.8.27(wed)23:02筆[ 701/761 ][*prev] [next#]
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