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 「ゆーみー、何飲む?」
 「「エスプレッソ、ダブルでっ!」」
 「ソレ言いたいだけだろ。本日は今こそ旬の苺をたっぷりと使用した、ショコラストロベリーがお勧めでございます。苺ソルベものった、濃厚な甘さながら爽やかな後口のスイーツドリンク、いかがでしょうか」
 「「それ2丁!」」
 「毎度ありー」

 ふんだ。
 そうやって子供扱いして油断しているが良い。
 ゆーとみーはね、エスプレッソ飲めるんだから。
 苦い味もどんと来い!美味いなコレ!なんだから。
 「「おいしーーー!」」
 「だろ。俺のダークショコラも美味いけど、食う?」
 「「食う!!わーい、うまーい」」
 ソースのかかった生クリームとかアイスとか、シェイクドリンクとか分けっこして、すっかり満足じゃ。

 子供騙しドリンクも、たまには良いもんじゃて。
 2人でご満悦、にこにこしていたら、あ、そうだってこーちゃんが言った。
 「ゆーとみーに言っとかないと。忘れる所だった、やべえやべえ」
 「やべえ?何です、こーちゃん」
 「厄介事は御免だぜ。俺ら激忙」
 「最近さー満月のが小難しい事言う様になったよなー。何か心境の変化?」
 ぎくっ!!
 2人で目配せ、やべえやべえ。

 満月は嘘が吐けないんだ。
 優月のがクールなんだ。
 こーちゃんと前陽大にはバレてる特徴、いけないいけない、卒業サプライズなんだから悟られるわけにはいかんのじゃ!
 2人でぴゅーぴゅー口笛吹いてたら、まぁいーけどってこーちゃんが笑った。
 ほっ、意外と他愛ないんだぜ、こーちゃんは。
 ゆーみーには大甘だからなー、旭と違って特別に贔屓してくれてるからね!
  
 「喜べ。ゆーとみーに念願のお母さんができたぞ」
 「「あ?」」
 どの口が何を言ってるのか。
 まぁたこーちゃんの悪い冗談なの?
 婚約者号外の時もさー、結局問い詰めたらただの悪ふざけだって言ってたし。
 ゆーとみーの大事なお父さんだけど、遊び人っぷりを知ってるから、こーちゃん絡みのこのテの話はぜーんぜん信用できない。

 大体、俺らのこーちゃん&前陽大ラブラブ大作戦、まだ諦めてないんだからね!
 武士道の銀に水を差されたけど、負けないもん。
 取り敢えずこーちゃんの戯言にはいはいって手を振って、イチゴに集中しようとした。
 「あれ、マジなのに」
 「「あぁ?!もー!こーちゃん、その冗談つまんない!」」
 「ひっど。父さんは辛いよ…折角かわいーかわいーお母さんをお招きしようとしてるのに。ゆーとみーも大好きな人だから、喜ぶと想ったのに」

 なんだとう?!
 聞き捨てならぬその台詞、泣き真似して両手で顔を覆っているこーちゃんに、左右から張りついて叱りつけた。
 「「こーちゃんのバカっ!冗談にも程がありますよっ」」
 「だから冗談じゃないってーマジでマジで。祝福してくれねえの?夜にピクニックまで行った仲なのに?」
 なんだとう!!

 「こーちゃん…!」
 「お母さんって!」
 詰め寄ったゆーとみーに、こーちゃんはにっこり。
 「お母さんはお母さんしか居ないだろ。陽大と両想いになっちゃった!これからよろしく」
 「「きゃーーーーーうっそぉ!!」」
 「嘘じゃないっつの」
 「「こーちゃんっ!!」」
 いつの間にそんな事になってんだーーー!?

 にこにこしてるこーちゃんは気の所為じゃない、いつもよりゴキゲンで、でも落ち着いた優しい顔してる。
 朝礼の時から想ってた、今日は何か男前度が倍増してるって。
 そうだったんだ、お母さんがいつもより可愛く見えたのもだからなんだ!
 何でだろう。
 胸がぎゅっとなって、2人同時に胸を押さえる。
 すぐに離して、こーちゃんを「「でかした!」」って褒め讃える会に切り替えたけど。

 ずっと、ずうっと頑張ってきたこーちゃん。
 ゆーとみーが頼りないからだって情けなくなるぐらい、ひとりで先頭を走って、皆を引っ張ってきた。
 誰より頑張り屋さんで一生懸命で、なかなか追いつけなかった。
 追いつけなくて口惜しいから、拗ねて反感した時もあったの。
 ホントはそうじゃなくて、こーちゃんは優しくて勇気があるから、自分が1番辛い目に遭う事すら恐れないんだ。

 ボロボロになっても、こーちゃんは笑うから。
 無理してるんじゃない、喧嘩だけじゃなくて心が強いから、まっすぐ立ってる。
 外で遊んでるのは知ってる。
 お家に帰ったらノンビリしてるって、話を聞いてたけど。
 だけど、ゆーとみーは学園で、こーちゃんの隣で笑ってくれる人が欲しかったの。
 旭とは違う、生徒会の仲間ともまた違う、特別な人。

 チャラい人じゃなくて、お互いちゃんと想い合える人が居たら、こーちゃんも癒されるんじゃないかなって。
 旭にもゆーとみーにもできない事だから。
 前陽大が良いなって想ったのは、こーちゃんと同じぐらい優しくて、いつもにこにこして可愛かった、ごはんも美味しいから。
 こーちゃんを崇拝する親衛隊とかはダメ、そんな人は隣に立てないもの。
 前陽大はこーちゃんを尊敬してるけど、楽しそうに会話できるし、こーちゃんも気が合うみたいだったから、良いなぁって想ったんだ。

 「ん?ちょ、ゆーみー、泣いてんの?」
 「「ううーーー…がるるっ」」
 「唸ってんの?どっちだよ」
 良かった。
 良かったね、こーちゃん。
 だって、いっぱいいっぱい、頑張ってきたんだもん。
 ご褒美があって当然だもん。

 前陽大なら大好きなこーちゃんの事、安心して任せて応援できる。
 「ううぅ…今日、お泊まりするっ決定!」
 「ううぅ…ごはん食べたら4人で寝る!」
 「早速かよ。陽大に聞いてからな」
 「「ううぅーーー…じゃあ、こーちゃん1人で寝て」」
 「え、ひどっ。俺除け者?酷くね。しかもどーせ俺の部屋で泊まるんだろ。何の暴挙だよ」
 止まらない塩水を拭ってもらいながら、笑いも止まらなくなった。

 おめでとう、こーちゃん。
 ようし、今夜はお祝いだ!!
 こーちゃんがお仕事している間、お母さんとごちそうの準備して待ってるからね!
 「いや、いーけど…お前ら、今日も生徒会だからな。各行事大詰めだし、陽大も出て貰う」
 「「問答無用だぜ!」」
 今日はすっごく良い日だな!



 2014.8.15(fri)18:24筆


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