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 これは何のネタ、何のご冗談なんでしょうか?!
 「陽大、」
 「いやいやいやいや、ちょーっとお待ちくださいませ?」
 近づく男前顔に驚きおののき、最大限にベッドヘッドに背を預けながら、両手でどうにか阻止しようと試みる。
 嘘だ。
 こんなの、だって昨日はあんなに平和だったのに。

 慌てふためきながら、沸騰寸前の思考回路を何とか総動員して、打開策を練ろうとする。
 けれども、両手をやんわり取られて、距離を詰められたらパニックが増すばかりで。
 「ちょっ、ちょちょっとお待ちを!ま、柾先輩…目ん玉ついておられますか?!」
 「あ?ご覧の通りですが。見る?」
 んなっ!
 おでこにこつんと知性をふんだんに備えておられる額が当たって、目の前いっぱいに溢れるイケメンパラダイス。

 いつより熱を帯びて、キラキラよりももっと凄みのある、ギラギラした瞳に直視されるたら固まるしかない。
 まっすぐな眼差しの強さは、こんな時により強調されて、逃げ場なんてなくてずるい。
 「あ、あのっ…俺ですよ…?」
 「ん?んー。陽大だよね」
 「いやいやいやいや、だから俺ですよ?失礼ながらっ、ちゃんと見えておられますか?こ、こんなちんちくりんな俺など、ほんとうに何故!意味がわかりませんっ」

 先輩はきょとんとした後、はぁとため息を吐かれた。
 おっと、ようやく目が覚めましたか。
 うんうん、きっとこんな寒い朝にジョギングされた所為で、感覚が鈍っておしまいになられたのですね。
 俺は責めませんとも。
 人間ですから過ちや気の迷いはありますからね、いかに完全無欠な男前の柾先輩と言えども致し方ございません。
 
 1人で自虐的に満足して頷いていたら。
 「んんっ…?!」
 ぱくっと。
 唇を食べられた。
 「意味わかんねえのはこっちだっつの。俺の陽大に失礼な事言うなよ。例え本人でも許せねえなぁ。昨日から陽大はのほほんとしてるし、探検にばっか気ぃ取られてるし?すっげえ我慢してたのに、急に意識されて平静保てるかっつーの。お前、さっきからどんな顔してるか自覚ねえだろ」

 むにっと頬を優しくつままれる。
 上気した頬に、上気した指が触れて、あったかすぎて胸がぎゅっとなった。
 「そ、そんなの存じ上げませんと言うかっ、俺はのほほんとなどっ…ひ、人がどれだけ緊張してるかとか…先輩こそまったり自由になさっておられるくせに!」
 「んー?何かわかった。お互い緊張誤摩化す為にのんびり装ってたんだなー」
 なんですと。
 俺の心労はこれ如何に!

 柾先輩がふわっと微笑う。
 「俺の部屋に陽大が居るのに意識しない訳ねえだろ。初日に手ぇ出すのも節度ないかなーと想ったし。けど、2日目だからいっか」
 いっかって。
 ハートマークがつきそうな語尾で笑うなり、大きな手で抱き寄せられた。
 「だいじょーぶ。いきなり最後までシないから」
 なんですとー!!

 「お、おおお」
 「おおお?」
 「お、俺は見ておわかりの通り、まったくの初心者でございますからっ、先輩のお気に召すかどうか、何が何やらさっぱりわからないんですっ」
 「よしよし。大丈夫大丈夫。陽大が嫌になったらすぐ止めるから。俺は陽大様にベタ惚れですのでお気に召しまくりでございます」
 語尾に逐一、ハートマークをつけないでいただきたい!


 
 2014.8.3(sun)15:51筆


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