32
一際眉を顰めてた、凌が俺を正面から見据えた。
なんだろ〜ね、この全部想定内なお前らの反応。
この中では俺の予想に違わず、昴を除いて旭と凌が総じて強いっつーかすげぇ冷静、自分の立ち位置をわかってるし、てめぇの気持ちにも正直だ。
強い奴から動く、発言に名乗りを上げる。
そして、頂点に立つ王様は黙ったまま。
一見すると呆然としてるヤツらと同じに見える。
どうしてどうして、その差は永遠に埋まらないぐらい超然としていて、ただ誰よりも確実に成り行きを見ているだけ。
必要に応じて言葉を発する、行動を起こす。
賢者は何も語らない、真に強い者ほど周りを饒舌にさせる。
俺達皆、昴の手の上。
別にそれが悪いとは想わねぇのよ。
昴以外、トップに立つ適任者は居ない。
実際、結果出してきてるし、得体は知れないけど信用はできる。
結局いつもはるるを助けてるのは昴だし。
けど面白くねぇなぁ。
もうちょっと予想外であって欲しかった。
お前ははるるの名前を出しても、動揺したり我を失わねぇの?
こんな時でも、学園に悪影響及ぼさないかと、俺達を黙って観察して終わり?
「俺は風紀の副委員長ではなく、陽大君の友人として反対だ。彼をこれ以上傷つけてどうするつもりなのか…例え天変地異が起きて誰か1人が選ばれたとしても、選べなかった複数人に対して、陽大君は必ず申し訳なさを感じる。好意を告白されたのに応えられなかったと、いつまでも引きずって傷つくのは陽大君だ。1人に対してもそんな調子だろう。複数居て、尚かつ今まで親しく接してきた相手となると、彼の心の負担は計り知れない。まして事件からまだ2ヵ月しか経ってないのに、あの優しい子を今以上に苦しめないで欲しい」
凛とした凌の声が、不気味に静まり返った建物内に響く。
お説ごもっとも!なんだけどね。
凌の覇気に元気付けられたのか、気の強い子犬ちゃん達も吠え出す。
「成勢様、僕からもお願いです。はるとは過分に苦しみ、傷ついています。はるとが大切に想っている武士道様から、そんな事が起こったら…あいつ、今度こそ笑えなくなるかも知れない…」
「そっそうだ!その通りだっ!何考えてんだよ、銀色っ!もういーじゃんか、皆で仲良くすればいーじゃんか!」
笑える。
ホント、笑えるわ。
昴、お前もいつもこんな気持ちなの?
高みから見下ろすお前の目には、何が見えているんだろう。
「あの人」ならどうするのかな。
俺が描いた筋書き通りに進行するゲーム、但し俺は至って本気の。
笑うしかないよね。
「皆で仲良く…ね。穂クン、俺らの関係性まだわかってねぇの〜?はるるのホンワカさに紛れてるけどね〜本来は俺ら、こうして集ってんのが奇跡なぐらい対立してんだよ〜武士道全員、殺気立ってるでしょ〜?最初から言ってる通り、馴れ合うつもりは全くねぇし皆仲良くお手々繋いでなんて、絶対に有り得無い。ただ、はるるに対する責任の所在をハッキリさせましょうって話。そうだね〜御3方の仰る通り、はるる、誰にも応えられないって傷ついちゃうかもね〜泣くだろうね〜」
笑えて笑えて、仕方がない。
ガンっと凭れて立っていた棚に拳を入れる。
血が流れたって、何の痛みも感じない、俺はね。
「あの子がどれだけ優しいかなんて、俺らが1番知ってるよ〜?すげぇ空気読むしね、はるるは。此所に居るメンツが内心でいろんな想い抱えて〜ウダウダしながら接してんのも、あの子は全部わかってるよ〜だからいつまでも緊張してんの、強張ってんの。自分が何か気遣われてんな〜って知ってるから、今度何かあった時も、助けてなんて誰にも言わないだろうね。そういうのぶっ壊してぇの。
俺はね〜御3方みたいな友達も必要だろ〜けど〜確実にはるるを守れる人間こそ必要だと想うんだよね〜勿論、ソレが俺であるように尽力惜しまないけど〜てめぇらスルーして事を起こしたら、邪魔してくるじゃん?お互いにね。だから一時的に協定組みましょ〜って提案。はるるが誰を選ぶのか、選ばないのかわかんない、だけど邪魔しない。はるるが決めた事に従う。名案でしょ〜?」
ほら、参加させてあげるから。
本気で守りたい、好きだって想うなら、正月ボケの脳みそ使って本気で考えなよね。
リミットはそんなにあげないけど。
2014.7.4(fri)23:34筆[ 649/761 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]
- 戻る -
- 表紙へ戻る -