31.成勢一成


 「俺が1番、こんな茶番はバカらし〜って想ってるよ〜?」
 
 けどさ、仕様がないよね〜。
 俺達3大勢力の存在意義こそ、下らなくてバカげてる。
 世界はつまんない。
 とっくに色褪せてる、消耗し切ってる。
 わかってて尚、面倒くさいガキ共の為に演じる俺達がバカじゃなかったら何なの。
 だから、茶番には茶番を。

 そうでもしなけりゃ、はるるを手にできないなら、俺はいくらでもバカになる。
 ただそれだけ。
 この薄っぺらくてガキ騙しな青くせぇ春めいた計画、想いついた瞬間から、ずっと心ん中に去来してるのは、何度も繰り返し夢見た「あの人」の幻想で。
 幻想は幻想のまま。
 こんなに時が経つのに、その為に武士道の副にまで昇り詰めた様なものなのに、悪戯に知名度上がって厄介事増えただけで、何1つ叶わなかった。

 「あの人」の片鱗すら掴めなかった。
 元々、雲の上の人だけど。
 どんなに手を尽くしても、耳にするのは名前ばっか、最早都市伝説みたいになってて、影すら踏めなかった。
 だから俺は、はるるだけは諦めない。
 つまんないプライド掲げて、目の前に居るはるるを失うなんて、はるるまで幻想にしてしまうとか、んなの耐えらんない。
 
 そうそうたるメンバーってやつなんだろうね。
 「はるる」がキーワードじゃなかったら、表向きでも裏向きでもここまで揃わないメンツ。
 誰も喋らない。
 息ひとつ聞こえない。
 始業式を明日に控え、どいつもこいつも正月ボケしてんじゃねぇのって見渡したら、コトの重大さに真剣になってるだけだった。
 つまんないね、ホント。
 まあ、本気になってくれないなら、俺がかっさらうだけだしね。 

 「つまりー改めて確認だけど。成勢君はお母さんを傷つけるのに追い討ちかけたいって事だよねー?」
 カラリと言ってのけたのは、この中では1番面倒くせーバスケ部のジョーカー、旭だった。
 ジョーカーの証、口調は面白そうだけど、目ぇ笑ってない。
 誰より1番に口を開いたイコール、やっぱりコイツは白だったって確認できただけ良いけどね。
 旭に釣られて気色ばむ3年共がウザい。
 時間さえあれば、てめぇらだって参戦してただろうに。

 「曲解がバスケ部の得意技なわけ?」
 「バスケ部関係なくそれも時には必要だよねー役職とか肩書きが重要な場なの、コレ?成勢君みたいにお母さんに懸想してるか、お母さんと仲良い連中が呼び出されただけだよねー答えまで寄り道しないで欲しーな。実質ここに居る面々、『たまたま』役職絡みで明日から忙しい連中ばっかじゃん。まさかお互い応援し合おうとか、玉砕したら励まし合おうぜ!って決起集会じゃーないよね?」
 だったら帰るとは言わないのは、コイツもはるるに関心寄せてるからだ。

 面倒この上ないけど、旭という中立は必要だ。
 「はるるが傷ついたから、だよ」
 重苦しい空気が動く。
 全員、意味わかんねぇって間抜けヅラの中、俺は最初からずっと注意深く、昴の動向にだけ気を付けてる。
 ジョーカーの旭と親友の、旭より読めなくて油断できない男からは注意を逸らさない。
 さて、お前はどうするの?

 「あんな事件あってさ〜正直マジ後悔してんの。はるるを守ってあげらんなくて〜はるるが傷ついて〜このまま戻って来ないかもってぐらい休んで〜未だにちょっと無理してて。水面下でお互い動向探ってモタモタしてたら、また同じ事が起こるかも知れない。現にエスカレートしてった故の事件じゃん。親衛隊だの何だに気ぃ取られて、立ち位置見失ってイラつきながら動けないとか、俺は2度とごめんだね。大人しく良いコにしてても、はるるは守れない。
 だったら俺は、惚れてるコを目の前で野放しになんかしない。このコは俺のモノだって堂々と守る道を選ぶ」

 何人かの目に動揺が走り、何人かが眉を顰め、何人かが痛ましい表情になり、何人かが困惑してる。
 さっき提案した時よりも、改めてそれぞれ感情を揺さぶられてる。
 昴だけ、現れた時と変わらない。
 1人だけ揺らがず、堂々とまっすぐ立ってる。
 今何を考えてるんだか。
 知らない、俺は俺の想う道を行く。

 「けどそうなると〜此所にお集りいただいた皆々様の同意を得ないと難し〜って想ったんだよね。妨害されてる場合じゃねぇのよ、さっさと守りたいっつーのに。だから『新春!はるるへ告白大会!』なワケ。くだらない舞台でも用意しないと、てめぇら動けねぇじゃん?馴れ合うつもりはない。ただ期間中、邪魔すんなって事!ま、全てははるるの意思次第、全員玉砕パターンもあるけど〜玉砕したならしたで、スッキリして心新たに守ってあげられるだろうしね〜今の膠着状態止めて素直になりましょ〜って話」

 「あの人」の強い眼差しが、触れた手の温かさが勝手にリピートされる。
 心の内で勝手に想い続けている俺の気持ち悪さと、未練っぷりに謝罪した。
 だから。
 だからこそと、知り得た名前を願う様に想う。
 あなたがくれた命だから、ちゃんと生きるって決めたら。
 俺はやっぱり、茶番でも何でも良いから大好きなあの子の笑顔を守りたい。
 それが俺の生きる道。



 2014.7.3(thu)23:23筆


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