22.チャラチャラツイート(13)by 天谷悠


 毎日毎日、静かだねぇ〜。
 どこもかしこも静かだねぇ〜。
 それが良いやって、この俺も動かないでいる、何も面倒なヤツらに言われるまでもなく、ネ!
 「こんにちはー」
 黙々と仕事してた、仮眠取ってるこーちゃん以外全員、すんげぇ早さで顔を上げた。
 はるちゃんがニコニコしながらやって来た。
 
 今日も来た。
 これがどんなにすごいコトか、俺も皆も知ってる。

 ちっ、今日のお供は美山と心春ちゃんと穂のA組トリオか。
 まぁねぇ〜武士道とか風紀とか3年生とかクソ旭とかより、よっぽどマシだけどぉ。
 こーちゃんの腹心の部下だったヒト達よりも何億倍も良いけどぉ。
 とにかく無事にはるちゃんが今日も来た。
 誰か来る度にハッとなって、すぐ落胆する、2度と会えないかもって不安になる様なコト、もうないんだ。

 ニコニコ笑って、俺らの話を聞いて、おやつの準備して皆でわいわいして、起きて来たこーちゃんと仕事の打ち合わせして、仕事終わったらテスト勉強して、たまに皆で夜ごはん食べて。
 びっくりするぐらい平和。
 もう俺らが一緒に居るのを見て、ぎゃーぎゃー騒ぐバカも居ない。
 陰でコソコソ言ってる連中は未だに居るらしーけど、不穏な企ては今のトコロない。
 親衛隊も大人しくなった。

 コレがフツーの生活ってやつなんだろうね。
 フツーじゃない事件、俺らにとっては珍しくない事件が、はるちゃんに起きてやっと目ぇ覚めた。
 学園全体が我に返ったってヤツ?
 はるちゃんに悲壮感がないから、だ。
 なんにもなかったみたいに笑ってる、今までと変わりなく生徒会も勉強も頑張ってる。
 だからだ、誰もが我に返った。

 誰のコトも責めなかった、怒らなかった。
 誰にも謝らせず、寧ろ謝った。
 迷惑かけて、騒がせてごめんなさいって。
 戻って来れて嬉しい、また頑張るって。
 前を向いてる。
 本当は全然平気じゃないクセに、まだ俺らと接するのにも緊張してんのに、笑って言葉通りに頑張ってる。

 痩せて戻って来たはるちゃんは、なかなか元に戻らない。
 夜も眠れていないのか、たまに目ぇ真っ赤で、クマを作ってる日もある。
 だけど誰にも弱音を吐かず、甘えず、きりっとしてる。
 一生懸命元気になろうとしてる、そんな子に誰も何も言えるワケなくて。
 俺も、ぼーっとしてる。
 何もできない、何をしたら良いかもわかんない。

 イジメんのは簡単なのに、優しくするのは難しいね。
 はるちゃんを独りぼっちにして、俺のモノにするコトが望みだったのに、今はもう2度と無理だって想うとか。
 しゅーへーとかタローちゃんだとかいうヒト達に言われるまでもない。
 これ以上、傷ついたはるちゃんを見るなんて無理。
 だけど独占欲は消えない。
 俺は今まで、どうやってここで生きてきたんだっけ?

 自分のキモチがよくわかんなくなって、はるちゃんを甘えさせてあげたいのにできなくて、仕方ないから前より甘えてる。
 そうじゃないのにって想いながら。
 何かしてあげたくても、しっかり者のはるちゃんに俺ができるコトなんてない。
 何でも話してって言っても、はるちゃんは大丈夫だよって笑うだけ。
 精々テストべんきょー一緒にするぐらいで、俺は教えんのもヘタだし。
 
 何なの、コレ。
 はるちゃんを見る度に嬉しくて、でも苦しくて、皆に囲まれてるはるちゃんの笑顔に安心する。
 俺のモノだけにしたくて、でも2度と傷つけたくなくて、優しくしてあげたいのにどうすれば良いかわかんない。
 何なの。
 もーすぐテストで、すぐ冬休みじゃん。
 また会えなくなるじゃん。

 クリスマスが近いのに、何も楽しくないんですけど。
 学校来るのにいっぱいいっぱいなはるちゃん、休みの日まで無理させらんない。
 冬休みは自宅療養がベストでしょって、皆の暗黙の了解になってるし。
 そーしてる内に年越しじゃん、正月じゃん。
 あっと言う間じゃん。
 どうしたら良いの、俺。
 
 ため息吐いたら、はるちゃんが心配そうな顔を上げた。
 「ひーちゃん、疲れた?大丈夫?最近なんだか元気ないものね…生徒会忙しいのに、勉強まで付き合ってくれてごめんね。休憩しよっか」
 「あー…ダイジョブダイジョブ。お茶なら俺入れてくるしぃ〜」
 「「ひさしのお茶不味いからイヤっ!」」
 「…ヤっ!」
 「うるっさいなぁ〜!俺がお茶入れるっつーこの奇跡、ありがたく頂戴しなよぉ〜」

 はるちゃんがクスクス笑いながら立ち上がり、優しい表情で俺らを見渡す。
 その顔に、見蕩れた。
 「はいはい。皆さん、ケンカしちゃいけませんよ。毎日お勉強に付き合ってくださる皆さんにささやかなお礼で、今日は特製のホットケーキを焼きますからね」
 「「「「「え、ホットケーキ?」」」」」
 「…ホット?」
 「おいしい蜂蜜とバターたっぷりですよーちょっぴりお手伝いしてくださったら、今なら何と、生クリームやチョコレート、トッピングし放題」

 俺らを元気にして、仲良くさせる名人のはるちゃんに、俺は何もできないのかなぁ。
 わいわいしながら、今度はバレない様にため息吐いた。
 俺、こんなキャラじゃないのにさぁ。
 武士道の銀色の囁きを想い出す。
 『「今は」何もしないでね〜天谷君…?大人しく良い子にしてたら、君にもチャンスをあげる〜君だってはるるの事が大事でしょ〜?』

 お前なんかに言われなくたって、俺は。


 
 2014.6.21(sat)23:58筆


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