74.音成大介の走れ!毎日!(13)


 今にも泣き出しそうな合原から、連絡をもらった。
 こんな時なのに、ケー番交換してて良かったとか想った。
 あまりの衝撃で、頭の回路がこんがらがってるかも。
 「…わかった、合原。お前は取り敢えず、風紀かバスケ部に頼れ!そっから近い方に言って現状話すんだ。そいつらなら対処してくれる!ゴーちゃんでも良い、とにかくお前が単独で動くのは危ない。そいつらと行動するんだ!良いな?!」

 武士道のテリトリーって、確かショッピングモールの近くだったか。
 校内からそんな外れまで走って、すげー息切れしてんのに、必死で堪える様な返事を聞いて、俺は緊迫感で震える指に力を込めた。
 「大丈夫だ…絶対!!まだ何も起こってねーだろ?!俺は各方面に連絡して動く!!また何かわかったら連絡してくれ!!」
 『はい!!』
 力強い返事に背中押される様に、速やかに切った電話をまた次へと繋ぐ。

 「柾会長!!一大事です」
 『…あ?どうした、大介』
 この忙しい人が今時分、講堂の演し物の準備に入ってんのは知ってた。
 けどそれ所じゃない、すっげー嫌な予感がする。
 この予感が外れたら、土下座でも生徒会入りでも何でもしてやるよ。
 笑い話に終わるのが1番良いんだ。
 
 何より誰よりも先に連絡すべきは、あんただと想ったんだ。
 きっと側には旭先輩も居る。
 悔しいけど、あんたらが動いてくれないと始まらねーんだ。
 「はるとと穂が行方不明です!!携帯も電源切れてて通じねーって!!合原が探し回ってて、」
 だから手伝ってくれって。
 全部言う必要もなかった。

 『わかった』

 耳から怒気が吹き込んで来て、混乱してた頭の中とか冷や汗とか、全部静止した。
 長い付き合いだ、直接じゃないにしろ、幼等部から一緒だ。
 この人がブチギレてんのなんか、何度も目の当たりにしてきた。
 だけどこんな声、聞いた事ねーよ。
 『すぐ探す。大介は風紀、武士道、バスケ部と連絡取りながら動いてくれ。合原と合流できたらしろ』
 「は、はい!!」

 『俺は親衛隊と3年と先生方に連絡する。頼んだぞ』
 ものすげー落ち着いた声だった。
 それだけに、その冷静さが怖かった。
 反論も無駄口も許さない。
 一見すると赤い炎の方が熱い様に感じるけど、本当は青い炎の方が熱を持っている。
 そんなイメージが浮かんで、慌てて首を振った。

 たて続けに各所に連絡を取り、それぞれの動きを確認してから、俺は俺の隊にも指示を出して、やっと動き出そうとした。
 その腕を強く引かれ、振り返ると美山が居た。
 「音成、んなツラでどこへ行く?何かあったんだろ…」
 珍しく焦燥感漂う美山の顔、俺が連絡飛ばしてる所をいつからか見ていたんだろう。
 頷いて逆に腕を取り、走りながら説明した。

 「はるとと穂が居ない!!緊急事態だ、お前も探すの手伝ってくれ」
 「…当然だ」
 事態を呑み込んだ美山がスピードを速め、俺もそれに続いた。
 大丈夫だよな?!
 これだけの人数が動くんだ、柾会長だってすぐ対応してくれた。
 既に3大勢力も3年の一部も、ゴーちゃん達だって動いてるだろう。
 はると、絶対見つけてやるからな!! 



 2014.5.6(tue)22:52筆


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