62.双子猫のきもち第8号


 朝ごはんを食堂のテラスで食べた後、一緒にテーブルを囲んでいた香澄先輩が、あったかくて甘いミルクティーを入れてくれた。
 「「ふぅー満腹じゃー」」
 良い天気ー!
 風が気持ちいー!
 こんな日はゆーとみー、お気に入りのお庭でハンモック吊るして、1日中ごろごろダラダラしてたいぜ。
 
 でもダメなんだぜ、我慢我慢。
 生徒会に行かなくちゃ。
 お母さんが待ってるもの!
 それに、お母さんとこーちゃんがくっつくのはゆーとみー次第、ラブラブ作戦もいよいよ大詰め!
 学園祭でゴールインする様に頑張るんだ。

 2人で顔を見合わせて、くすくす笑いながらミルクティーを飲んだ。
 「優月様、満月様。お楽しみの所、水を差す様で申し訳ございません」
 「「なにー?」」
 んー?
 なにげなく見上げた香澄先輩の、ただでさえイカツい顔がますます険しく、男らしくなっている。
 そういや今朝はなーんかソワソワおかしくて、食事中、何回も席を外していたっけ。
 
 深刻な口調で「実は、つい今しがた…」と差し出された号外記事、事のあらましを説明されて、ゆーとみーは想わず手を取り合った。
 「優月…!」
 「満月…!」
 「「やったあーーー!!バンザーイ!!」」
 お母さんがこーちゃんのこと、好きだとかどうとかより、2人の未来を暗示しているような記事が出たことが重要!!
 
 これで2人共、意識し合うこと間違いなし。
 学園中、良くも悪くもソノ気になること請け合い。
 こーちゃんの親衛隊は鬱陶しいけど、今の内に悪い膿は出し切った方が良いもんねー。
 ホントに2人がラブラブになったら、みーんな黙るに決まってる。
 だって今でも、生徒会で仲良しだもん。
 こーちゃんがあの憎き旭と同じ様に大事にしてるのは、お母さんだけだもん。
 体育祭の時だって、はる姫とこーちゃんのお似合いっぷりに、皆ポカンとしてたもん。

 まるでゆーとみーの思惑通りみたいじゃないか。
 ハイタッチして喜び合っていたら、香澄先輩が心配そうなお顔で咳払いした。
 「優月様、満月様、あまり安易にお考えにならない方が良いですよ。決して油断なさらないで下さい。今日からお母さんにとってお辛い日々が始まるかとお察しします。会長様の隊は莫大な影響力をお持ちですから。例え3大勢力であっても迂闊に手出しできません。我々もより身辺警護に努めますが、優月様と満月様をお守りするので精一杯です。十分にお気をつけ下さい」

 ふーん、香澄先輩ったら、わかってるようでわかってないなぁ。
 「ねぇ、恋の炎が燃え上がる時はどんな時?」
 「決まってる、ピンチや障害が大きい時だ!」
 「ボロボロに傷ついたお母さんを」
 「こーちゃんが優しく慰め助ける」
 「そりゃあお母さんには災難だけど」
 「2人にとって乗り越えるべき試練」
 「「そう、ラブラブの為にね!」」

 香澄先輩はやっとしかめっ面を止めて、ちょっと頬を染めながら苦笑いした。
 「まったく…お2人共、本当に小悪魔ですね」
 「「「「「そこが魅力的です」」」」」
 後ろに控えていた親衛隊の子達が、うっとり呟いてから姿勢を正している。
 「「楽しい楽しいラブゲームの始まり始まり〜!!」」
 忙しくなるぞー!
 もちのろん、ゆーとみーはお母さんの味方だからね。



 2014.5.4(sun)19:11筆


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