32.一舎祐の暗黒ノート(6)


 胸倉を掴まれた。
 相変わらずだ、コイツら。
 何ら進歩ない、馬鹿なヤツら。
 暴力とカネで何でも思い通りになると思ってる、親の威光借りて威張り腐ってるクソガキ共め。
 夏休みが終わろうが、進級しようが、何年経とうがこの腐った性根は変わるどころか、益々醜く落ちぶれていくんだろう。

 現にガキのコイツらが馬鹿であるなら、その親も馬鹿で、ちょっと調べたらコイツらの家が傾き始めているのなんかすぐわかる。
 クダラナイ。
 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ。
 堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ。
 貴様らが背負ってるそのドロドロの闇に、自身も呑み込まれてくたばれ。

 全く気づいていないのがお気の毒様。
 わかってないね、一応進学校の此所にかろうじて在籍してるクセに。
 鬼千蛇千の黒々とした闇に囲まれながら、肝心なコト、わかっていない。
 人をナメ過ぎなんだよ。
 誰が裏切らないって約束したものか。
 アノ能天気な馬鹿共が気に入らない、汚れて絶望したら良い、それが大前提だけど。

 貴様らもその中に入っているんだよ?

 無邪気な馬鹿共も、腐り切った貴様らも、諸共沈めば良い。

 さぁ、華麗なるショーまで後少し、全ては暗闇に帰す。

 「マジどうしてくれんのーこの始末。前クンさー生徒会に入ったばかりか、因りにも因ってクソかいちょーの補佐に就いちゃったじゃーん?」
 粒子の荒い紙の束が、頬を幾度も撫でる。
 気持ち悪い。
 おぞましい。
 それが上からの命令でやむなく書いた号外だから、尚の事。
 「お陰で全部台無しじゃーん?前クンの評判ガタ落ちなのはいーけどォー、迂闊に近付けなくなっちゃったよねー?」

 ホント、馬鹿だなコイツら。
 金持ち気取りで日焼けして髪型変えて、楽しい夏休み過ごしてましたアピールが分かりやす過ぎて馬鹿そのもの、締まりない顔は全部同じに見える。
 何もわかってない、見た目も脳ミソの中身すら残念、ご愁傷様。
 逆に勝機は大きいというのに。
 アノ柾の下に就いた、学園内の反感と戸惑いは大きいながら、付け入る隙がない。

 だからこそ、一瞬でも柾の庇護が外れたら、こちらのもの。

 誰もが、柾も武士道も前本人すら何処かで安心してるだろう、例え反感を買ってもこれ程安全な場所はないと。
 残念ながら、安全と危険は紙一重、永遠には続かない。
 足場が崩れるのは簡単、瞬間で世界は変わる。
 完全無欠の柾とてただの人間、全能に見えて全能足り得ない筈だ。
 如何な高等教育を受けていようと、所詮まだ高校生のガキ、生徒会や諸々の雑事で手一杯の中、前1人にどれだけ気を払えるものか。

 見物じゃないか、毎日がさ。
 
 「何とか言えよっ!てめーが持ち掛けてきた計画だろーがっ」
 ガンっと窓辺に叩きつけられ、けれど浮かぶのは笑顔しかない。
 自分の余裕に、流石に息を呑む馬鹿共に、大丈夫ですよと尚笑って見せた。
 「アノ会長様の下に就いた、即ち、一瞬でも会長様に見放されたら…?」
 だから見守りましょうよ。
 彼らの束の間の幸せを。
 愚かな貴様らが、自ら首を絞めて行く、引き返せない道の行く末を。

 そして、全員、無惨にも羽を切られて地上に叩き付けられる様を、存分に見せて。
 お前達の最期の瞬間まで、目を逸らさないから。
 「これから…楽しみですネェ…」



 2014.3.15(sat)23:13筆


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