31.もう大丈夫


 あらかじめ研いでくれていたお米に、お酒と塩と昆布出汁をほんのり、さっと混ぜて炊飯スタート。
 特別に調理していただいた(スーパーのお得意さま限定サービスですって!)、かつおのたたきはスライスしてバットに並べる。
 醤油とお酢とみりんとおろした生姜、たっぷりのねぎを入れてよく混ぜた、ねぎ醤油をまんべんなく振りかけて、そのまま冷蔵庫に入れておく。
 その間に他のおかずと薬味の用意だ。
 
 かぼちゃは大きめの一口サイズに切って茹でる。
 玉ねぎとみょうがはうすくスライスして、ぞれぞれ水にさらしておく。
 豆腐は水切りして、1丁を3等分に切っておく。
 お出汁で鶏ひき肉と人参とオクラの和風スープを作る。
 しっかり塩もみして洗った枝豆を茹で上げ、ビール片手につまみ食いしようとする2本の腕から死守すると同時に、きっちり怒ってから、さやから実を出しておく。
 トマトは輪切りにスライスする。

 ん、よし!
 かぼちゃが茹で上がったら、さあフィニッシュ間近、仕上げの時間。
 すり鉢でごまをすり、マヨネーズと味噌と砂糖を合わせて和え衣を作ったら、熱いままのかぼちゃを入れてざっくり混ぜ合わせる。
 スライスしたトマトはゴマ油でこんがり焼いて、塩を振る。
 先ほどの和風スープを温め返し、豆腐を入れてひと煮立ち、器に盛ったらすだちを添えて温奴のでき上がり。
 
 ごはんが炊けたら、枝豆を混ぜこんで蒸らす。
 青じそを刻み、玉ねぎをお皿に敷いて、かつおのたたきを漬けダレごとのせ、みょうがと青じそで飾りつけ。
 「「「できたっ!」」」
 今日の晩ごはんは、かつおのたたき・ねぎ醤油漬けと枝豆ごはん、かぼちゃのごま和えサラダに温奴、焼きトマト、温かい番茶で決まり。
 うん、最高の夏の晩餐だ!

 「美味そ〜!マジ美味そ〜!早く食お〜」
 「仁、マジ馬鹿すぎ〜はるるのごはんが美味しくないわけないでしょ〜」
 「知ってるっつの!知ってて尚、美味そうだっつってんだよ」
 「あっそぉですか〜んー夏バテしてたけど、見るだけで食欲湧く〜」
 「2人共、ケンカしないの!見えてないと想ってるだろうけど、テーブルの下で小突き合ってるの知ってますよ!ほらほら、ちゃんと姿勢を正す!」
 「「はぁい!」」
 
 いただきまーすと手を合わせて、ちょっと遅めの晩ごはんを3人で味わった。
 「「うっまー!」」
 目を細めて絶賛してくれる、美味しそうにパクパク食べてくれる2人につられて、俺の箸も実によく進んだ。
 「ねぎ醤油漬け、パねぇ!メシ止まんねーっつか、この枝豆ごはんもパねぇな!延々ループだわ、こりゃ」
 「この温奴もマジ美味〜夏バテに優しい味わいっつ〜か、するっと食べれる〜かぼちゃの味噌マヨも、焼きトマトも美味すぎ〜」

 2人が喜んでくれて、よかった、よかった。
 野菜嫌いで肉食獣の集まりだった、武士道を代表する2人のお口に合ったなら、安心してレパートリーに加えられる。
 なかなか実験的な試み満載の本日の晩ごはんだったけれど、どれも味つけ大丈夫、グッドグッド。
 食事の中盤になって、空腹の野獣から落ち着いた頃、やっと2人に話せた。
 「2人共、待っててくれて、お手伝いもしてくれて、ありがとう。ごめんね、遅くなっちゃって…」
 
 枝豆ごはん2杯目に差しかかっていた2人は、きょとんとした後、揃ってかぶりを振って笑ってくれた。
 「「いーっていーって。お易いご用だし」」
 「うん…でも、ほんとうにありがとう。仁と一成がいてくれて助かってるし、すごーく支えられてるんだ。2人が俺の心の支えと言うか、同じ高校でほんとうによかったっていつも想ってる。ありがとうね」
 ちょっと気恥ずかしいけど、言っておきたくて。

 照れくささを紛らわせるように、絶品のかつおのたたきを頬張った。
 うーん、十八学園のスーパーマーケット&食堂は素晴らしすぎますねぇ。
 ますますファンになって通い詰めてしまうじゃありませんか。
 「こっちこそだぜ。はるとが居ると俺らはすげー楽しいし、小面倒くせぇ3大勢力云々も何か頑張れんだよな〜はるとがそうやって笑う為なら、いくらでも頑張るからさ。もっと頼ってくれよ、気兼ねしなくていーから」
 仁ったら、頼れる兄貴そのものな発言、男前だなぁ。

 「はるる、その顔はだいじょーぶの顔だけど〜無理しないでいーからね〜?俺らの前ではもっと気楽にしてて〜生徒会だの何だの面倒極まりないけどさ〜そんなの超えて俺らは何よりもはるるが大事だからね〜はるるが笑えないなら意味ないから〜お願いだから、もっと頼ってね〜」
 一成ったら、もうもう、優しいんだから。
 2人共、優しすぎる。
 2人だけじゃない、皆さん優しい。
 
 今日はほんとうに、何て日だろう。

 「えへへー…スキありっ!最後のかつお、もーらい!」
 「「あ」」
 泣きそうになるのを有耶無耶にするために、水面下の争いだった最後の一切れをさっと横取りして頬張った。
 「「狙ってたのに〜」」
 「(もぐもぐ、ごくん)ざーんねんでしたー俺とてやる時はやるんですよ!男子たるもの常に油断禁物でござる」
 「「無念でござる〜」」

 例えこの先、何があっても。
 皆さんにいただいた優しさを忘れずに、顔を上げて笑っていよう。
 たくさんの宝ものを胸に、俺はもう大丈夫だ。



 2014.3.11(tue)0:15筆


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