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「ご歓談中失礼いたします。お待たせいたしました」
むむ?
にわかにいいにおいが漂ってきたと想ったら、旭先輩と俺がいる応接セットと別のテーブルに、キラキラ輝く光景が用意されている?!
いつの間に?
そういえばここに到着してから、割と時間が経っている気がするけれども。
確か柾先輩は「食堂デリバってきた」と仰っておられた。
俺はてっきり、食堂で購入可能なランチボックスを調達されたのかと想っていた。
お話に集中していたから、時間の流れは忘却の彼方だったけれども。
「行こ行こー早く食おー」
旭先輩に優しく肩を押されつつ、逸る心のまま自ら進んで歩き、キラキラのテーブルに近寄ってびっくり仰天!
「なんということでしょう…!!」
近寄ればキラキラ度倍増!
まっ白なリネンのテーブルクロスがかかった、ここはレストランと見紛うばかりに完璧にセッティングされたテーブル、その上にはご馳走の数々が並んでいるではありませんか。
「前菜・厚切りパンチェッタのステーキ風、飲むサラダ・夏野菜たっぷりコンソメ仕立てのジンジャースープ、冷製バジルとトマトのパスタ、焼きたてのフォカッチャ・ピザ風とプレーンの2種でございます。食後のデザートはティラミスとオレンジジェラートの盛り合わせでございます」
はうわー!!
スープやフォカッチャはできたての湯気を揺らめかせ、パスタはキンと冷たい様子をお皿からかもし出している。
何より、色鮮やかなコントラストが目に眩しい。
とっても綺麗だ。
お野菜の色、パンの色、ぜーんぶとっても綺麗で生き生きしていて、それぞれの最高の瞬間で料理し、サーブしてあるのがわかる。
お料理の色も綺麗なら、お皿やカトラリー、お水の入ったグラスもすべて、ピッカピカに磨き抜かれていて、よりお料理を引き立てている。
当たり前とされることが、隅々まで抜かりなくできている。
これは十八学園の食堂さまのお姿に通じている、けれどもですよ。
なんだか、違う。
また違う雰囲気を感じるのは、俺の考え過ぎなのか、気の所為なのか。
俺のような若輩者の未熟者で、まだろくに世界を知らない子供が、生意気に感じることではないと重々承知ながら、このお料理、格が違うと言うかなんだろう。
とても食堂のお料理によく似通っている、根底に漂う精神は同じ、けれど微妙に違っていて、その僅差で比べられないものがあると言うか。
無論、食堂のお料理はとっても素晴らしくておいしい。
とんでもないレベルでおいしい。
うーん、ちょっと混乱してきましたよ。
見ただけでおいしい目の前のごちそうに、誘惑されて混乱しているよ。
ぐるぐるしながら、先輩方に促されてどうにか席に着いた。
「そー言や昴、お母さんに『アノ事』言ってんの?」
「いーや。まだいっかなーと想って」
「そっか。いろいろ落ち着いてからのがいーかもなー」
「だろ。更に混乱を呼ぶっつか」
席に着いてより間近に迫る、素敵なお料理の数々にますます心奪われている、俺の背後で先輩方がモニョモニョ何か仰っておられたようだけれど。
当然なんにも気にならず、どちらから攻めるべきか、迷い箸ならぬ迷い視線なら許されるだろうかと、キョドキョドしていた俺でした。
うーむむむ!
やはりここは前菜からですよね。
正式な場ではなく(華やかな先輩方がいらっしゃるけれども)、でも一堂にお料理揃ってると、トキメキが止まらなくて困るねぇ!
2014.2.27(thu)23:24筆[ 554/761 ][*prev] [next#]
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