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何度も眺めた制服。
似合わないってわかってるんだけれど、でもうれしい。
やっと、これを着て学校に行けるんだ。
まだ行ったことがない校舎や講堂――在籍生徒と教職員以外は敷地内立ち入り禁止、尚かつここまで遠いため、都心にある大学部で実施されたから――へ入れるんだ。
「初めて」って、なんでこうもそわそわと落ち着かなくて、それと同じぐらいワクワクするのか…
制服オーダーの時に試着したっきり、自分サイズになった制服に腕を通すのは、今日が初めてだったりする。
十八学園の制服は、ライトブルーグレイのブレザーに、よくよく目を凝らさないとわからない、黒1色のチェックのスラックス。
ブレザーには校章が刻まれた3つの金ボタン、襟には白いライン、胸ポケットには同じく白い校章の刺繍。
中は指定の白いカッターシャツ、このカッターシャツの胸ポケットにも白い校章の刺繍が施されている。
季節の合間、個人の自由で、ニットベスト、ニットカーディガンいずれかの着用が可能。
ベストもカーディガンも、胸元には校章マーク付きで、色は紺、チャコールグレー、黒、キャメル、オフホワイトから各自で選べる。
ネクタイは1年はマホガニー、2年はアイビーグリーン、3年はプルッシャンブルーと渋い色調で、正式な場では必ず着用。
夏服は、カッターシャツが半袖、スラックスが麻混の涼しい素材に変わるだけ、こちらも正式な場では、夏でもブレザーの着用が義務付けられる。
ベルトと靴は指定のもので、黒のシンプルな革ベルトとローファーだけど、黒の革製であるなら個人で用意しても構わない。
鞄も同様に、指定の学生鞄、リュックの他、華美にならなければ個人で自由に選べる。
そう。
着こなしがすごく難しそうな制服なんだ。
どのパターンもシンプルでなにげないけれど、その実、上質の素材を使って、細部にこだわりのあるカッティングやライン、仕掛けが施されていて。
こだわりのあるブランドの洋服に等しい、重責…
平凡な俺なんかよりも、それこそひかげだてりひと副会長さま(そう言えば昨日の副会長さまは、指定外のシャツだったなぁ…)や、美山さんが似合う特別な制服だ。
うん、でも、この制服好き!
品格漂う、それこそ服そのものが誇り高い様相をたたえている、それに袖を通せる機会なんて、俺の一生を通じて滅多にないこと。
今後、あるかないかの縁だから。
そうっと、寝間着代わりのTシャツを脱いで、カッターシャツを羽織った。
わ…!
成長期を見越して、多少大きめに作ってもらってるけど…
それでも、俺の身体にしっくり馴染むライン。
念入りにサイズを測られたことを想い出した。
着心地がいい…肌ざわりもバッチリ!
続いてスウェットを脱いで、スラックスを履いた。
おお…!
足が長く見える…?!
そういうふうに工夫されたデザインとパターンなんだろう。
なんとまぁ…
カッターシャツとスラックスだけで、いつもの俺より何倍もスタイル上々、すごいよこの制服…!!
ありがとう十八さん…!!
…ん?
制服を考案なさったのは、学校の創立者さまかな…
創立者さま、ありがとう!!
実際にデザインしてくださった制作者さまも、ありがとう!!
途中で改良もあったのかな、改良者さまもありがとう!!
脈々と制服を作って来て下さった、作業者さまもありがとう!!
俺のオーダーに立ち会って、ていねいにサイズ寸法してくださった担当者さまもありがとう!!
十八さんも、もう1回、ありがとう!!
お陰でテンション上がって…
俺、今日という晴れの日を、気分よく迎えられそうです!
2010-05-11 10:31筆[ 55/761 ][*prev] [next#]
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