2.さて、お母さんは?


 「ふんふんふーん・ふふふんふーん・オムレツ・オムレツ・ふんわりふっくら・キラキラきいろ・オムレツ・オムレツ・それはすてきなたべもの〜・ふんふんふふーん・ふふふんふーんん…」
 
 ジュージュー、ぐつぐつ、ことこと、トントントン

 キッチンにささやかに付いている小窓から、やわらかな朝の光が差しこんでいる。
 何度も目を細めながら、今日もいいお天気に恵まれそうだなぁって想った。
 そりゃあ、初・朝ごはんの仕度中に鼻歌も自然に出てくるさ!
 ぐっすり眠ったから、気分は爽快!
 目覚めた時、自宅じゃないことに、一瞬の切なさは感じたけど…
 朝見ても、瀟酒でカッコいいアパルトマンの趣きある部屋、その外に広がる、まだひっそりと寝静まっている異国情緒漂う街並みに、うっとりしている内に目が冴えた。

 今日はいよいよ、クラス発表と入学式だ…!
 当日となると、すこし緊張しますなぁ。
 でも、窓を開けて春の朝の空気を吸いこみ、昇ったばかりの朝日を見つめていたら、すうっと心が落ち着いて、自然に口角が上がった。
 今日もとびきりいい朝を迎えられた。
 感謝、感謝!

 とりあえず、まだ眠っているであろう美山さんを起こさないよう、物音を抑えて行動開始!
 洗面所でゆっくり歯を磨いて顔を洗い、寝癖のついた髪にブラシを通した。
 それから台所で、ミネラルウォーターとフルーツジュースをグラスに注ぎ、自室へ戻った。
 ベッドを整え、静かなクラシックCDを、最小限の音量で流し聴きながら、パソコンチェック。
 ゆっくり時間をかけて水分を摂りながら、今朝のニュースページと、自分のブログサイトを確認して、来ていたコメントに返信。

 皆、元気そうでよかった〜…
 しかし、相変わらず夜更かし組が多いなぁ〜…
 言葉を選んで各自に注意を促して、パソコンを閉じた。
 それから、何度も読み返したお気にいりの本数冊、将来の夢を綴ったスクラップブックに目を通した。
 朝のこの習慣は、俺にとってとても大切な時間だ。
 この時間をどう過ごすかで、1日の穏やかさ、1日そのものが決まると言っても過言じゃないかも知れない。

 ゆったりした時間を過ごし、夢への気持ちを新たに募らせながら、キッチンへ向かって、今に至る。
 美山さんが起きてしまったらどうしようか、心配だったけれど、部屋の扉は固く閉まったまま、起きた気配は感じられなかった。
 手のケガ、どうかな…
 すこしでも良くなっていたらいいな…
 朝ごはん、たっぷり用意してしまったけど、また昨日みたいに食べてくれるかなぁ…

 「よし、完成っと」
 
 リビングに備え付けられた、シンプルなゴシック筆記で描かれた壁掛け時計は、7時半を差していた。
 入学式は9時半から、その前にクラス発表を確認して、9時には教室に居なければならない。
 美山さん、そろそろ起きるかな。
 スープは直前に温めるとして、スラックスとカッターシャツぐらいは身に着けておこうと、また部屋へ戻った。



 2010-05-10 23:42筆


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