4.二学期の抱負


 「ふぅ…」
 心地のいい朝だ。
 よかった、たくさん眠れた。
 これも武士道の皆と昨夜会って、一緒にごはんからの久しぶりに人生ゲーム大会できたおかげだ。
 窓を開けると、相変わらず異国情緒漂う素敵な街並みが広がっている。
 いえ、寮なんですけれども。

 昨日十八学園に戻って来て、一成は「また一緒に暮らそうよ〜」とお誘いしてくれたけどとんでもない、数カ月ぶりに自分の寮部屋で過ごした。
 しばらく留守にしていた部屋に、なんだかとても申し訳なくなった。
 俺に割り当てられた折角の場所だというのに、いつまでも一成さんたちに甘えているわけには参りません。

 美山さんのいない部屋は、当然ながら静まり返っている。
 1人っ子の俺には馴れっこのこと。
 じきにこの暮らしに馴染んでしまうだろう、というか結局武士道のたまり場になりそうだけれど。
 温かい玄米茶をいただきながら(お洒落にカフェラテやモーニングティーとならないところが俺らしい)、どこか懐かしく感じる外の景色を眺め続けた。

 今日から新学期、始業式が終われば明日から早速、通常授業になる。
 どんなことがあるのかなぁ。
 二学期こそ大人しく、コツコツと真面目に勉学に励まねば、ほんとうにヤバいです。
 かろうじて取れた一学期に胡座をかいている場合じゃございません。
 カリキュラムもどんどん詰まってきそうだし、二学期もたくさん行事があるし、学園祭といういかにも素敵な気配漂うお祭りも楽しみだし。

 楽しむためにも、先ずは学生の本分、勉強!
 二学期の俺はひと味違いますよ?
 なんてね。
 「お弁当シフト、どうなるのかなぁ…」
 楽しみなような、複雑な気分だ。
 だけど改めて決めたから。

 俺はこの気持ちを、前向きに大切にする。
 考えてみたら、料理や友だちとワイワイすることに夢中だった俺が、まさか誰かを特別に想うなんて。
 そもそも人を好きになること自体、すごい心の動きだと想うから。
 柾先輩と出会ったことに、何の後悔もない。
 出会わなければよかったなんて、まったく想わない。

 遠い存在のままがよかったとか、優しいところを知らずにいたかったとか、俺の勝手な都合は考えてしまうけれど、もう過去のこと。
 知らなければ好きにならなかった、それはただの仮定の話で、どのみち男前同盟には加入していただろう。
 あんなに魅力的な先輩だもの、誰だって憧れてしまう。
 どうしたって結果は変わらないし。

 好きな人ができた。
 叶うどころか、ご本人さまは無論、誰にも明かせない想いだけれど。
 おかげさまで様々な感情を味わえて、世界がカラフルにもモノクロにも変化することを知った。
 たくさん悩んだことも、きっと全部いい想い出になる、経験になる。
 たったひとりの、大事な人の存在で、学校に来る意味が変わる。

 勉強勉強って想っていても、ドキドキする。
 不思議だ。
 まさか親衛隊に入れていただくわけにはいかないだろうけれど、初めから終わることが決定している一方的な想いでも、誰とも共有できなくても、何故か泣きそうに幸せな鼓動が止まない。
 久しぶりにお会いしてもどうせバカ笑いされるだけだろう、でもそれすら楽しみだったりする。

 お話する機会があるなら、マロンさんとのラブラブな日々をお窺いしたいとか、でも変に緊張して、まともに話せない可能性のほうが大きいかなとか。
 いろんなことを、たったひとりの人に想う。
 なんだかすごい。
 皆さん、こんなふうなんだろうか。
 恋って言ったらおこがましいお話だけれど、ほんの片隅に参加させていただくとして、人を好きになるってすごいんだなぁ。

 ただ、俺は。
 あなたが元気に笑っていてくださったら、それでいい。
 生徒会長さまとしての重い責務が、僅かでも軽くなったらいいな。
 3大勢力さんやお友だちの皆さんと、楽しく過ごせていたらいい。
 マロンさんとずっと一緒にいられる日が、早く来たらいいのに。
 「れなさん」と…幸せになれますように。

 柾先輩が幸せだったら、俺はそれでいい。
 この想いが一刻も早く消えて、笑い話になるように頑張るから。

 「…ん?!」
 決意を新たにしたところで、カツンっカツンと窓に何か当たった音がして、顔を上げてきょろきょろ。
 木の実か何か落ちてきたのかな?
 丑三つ時じゃなくてよかったけれど、ちょっぴり薄暗さの残る早朝だし、そろそろ閉めておきましょうねぇ。
 
 立ち上がって窓に手をかけ、そのまま静止した。
 「ま?!」



 2014.2.2(sun)19:54筆


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