191.双子猫のきもち 第6号


 あ〜あ〜、体育祭が終わっちゃう。
 すっごおおおく楽しかったのに。
 楽しいことはいつも、あっと言う間に終わっちゃう。
 あんなに準備が大変で、生徒会も大変で、毎日毎日バタバタで、チームの練習とかもあって、目ん玉グルグル回ってたのに、本番はいつも一瞬!
 
 2人で顔を見合わせて、軽くため息。
 閉会式の真っ最中だけど、今は大丈夫。
 どんな顔してても、ちょっとぐらい喋ってても、誰も気づきやしない。
 アノ放送部のウザサコン(=放送部長の十左近)が、これでもかぁ!って大げさに総合得点トップ3を発表中だから。

 ゆーとみーのチームが圏外なのはわかってる。
 頑張ったのに〜!
 悔しいけど、楽しかったからいーや。
 トップ3にも入れなかったのは残念だけど、頑張ったからもういいんだ。
 それよりも、お祭りが終わることの方が哀しい。
 ん、「それではいよいよ…優勝チームの発表です!!」だって。
 
 「ブラスバンド、うるさいね」
 「ウザサコン、やっぱウザい」
 「ひさしは何処にいるのかな」
 「ひさしはまたえっち中かな」
 一際重々しく、ダラララって音がシーンとした会場内に響き渡り、生徒だけじゃなく先生まで、誰もが真剣な顔をしているのが、ゆーとみーには退屈で面白い。

 音に合わせてコソコソ話してたら、りっちゃんに睨まれた。
 こっわぁい!
 りっちゃん、何かさっきからずっとピリピリしてない?
 ひさしが居ないだけじゃない、こーちゃんとさっき、ボソボソしてた時から何か1人で難しい顔してる。
 変なの!

 つーか、りっちゃんこそ駄目なのに。
 こーちゃんとボソボソ・コソコソしていーのは、今のところヘラヘラしてるけど1番胡散臭い旭だけ。
 さっき、周りに「やっぱり会長×副会長…?」なーんて噂されてたぞー。
 気をつけないと、りっちゃんと言えども危ないのにね。
 優勝できなかったから、余裕ないのかなー?

 「優勝は…あらゆる競技で大いに魅せてくれました!とりわけ最後の障害物2人3脚は見事の一言!!Aチームです!!」

 ぎゃあああああっっていう悲鳴と、パーンって舞台袖の両方からクラッカーと、舞台中央ではくす玉が割られて、天井からは風船と花吹雪、白い鳩もたくさん羽ばたいて、高らかに鳴り響く勝利のファンファーレで、うるさぁい!
 髪や身体にまとわりつく、いろんなクラッカーの残骸や花やら何やらキラキラギラギラ、もうウザいにも程があるっウザサコンめ!!(注:十左近は放送のみ、演出には無関係です)
 
 ぺっぺといろいろ取り除けている内に、理事長が颯爽と出て来て、チームを代表し、こーちゃんとそーすけが優勝旗を受け取っていた。
 そーすけは花吹雪直撃したみたいで、ナルシストな感じになってたけど、流石こーちゃんは無傷、俺様ドヤ顔で堂々と立っていた。
 避けたのかな。
 りっちゃんは紙吹雪直撃で、純白のプリンス通り越して誰?っていう状態なのに。

 厳かな優勝を讃える曲が流れる。
 あーあ、退屈。
 一応笑顔で拍手しながら、ゆーとみーは欠伸を噛み殺していた。
 だるぅい、もう飽きたぁ。
 次のお祭りは文化祭までお預け、つまんないのー。
 明日から何して遊ぶのって、顔見合わせたところで、こんな場合じゃないって想い出した。

 同時にAチームを見たら、旭とハイタッチして喜んでる、前陽大の姿が見えた。
 2人共、ほんとうのニコニコになった。
 お母さん、笑ってる!
 良かったね。
 前陽大は誰よりも頑張ってたし、障害物2人3脚のコスプレ、すっごおおおく可愛くてゆーもみーもびっくりしたんだよ。

 お陰で最後まで楽しめた。
 こーちゃんとお似合いだったし!
 今までいろんな人と組んだ、こーちゃんのお芝居見てきたけど、お母さんとが1番良かった。
 やっぱり、4人でピクニックしたいな。
 体育祭中おしゃべりできなかった分、お弁当お預けだった分、ピクニックで取り戻したい。
 
 「ゆーみー、負けたのに機嫌いーじゃん」
 こーちゃんが戻って来て、そんなことを言った。
 「「違うんだもん」」
 「あ?」
 「後で内緒のお話があります」
 「マジ大事なお話があります」
 「何だよ、改まって」
 「「ヒント、ピクニック!」」
 
 全然わかんねえってこーちゃんが笑って、ゆーとみーの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
 もう、こーちゃん賢いクセに、なんでわかんないかなー。
 こんなに楽しい計画なのに!
 でも、こーちゃんこそ機嫌いーじゃん?
 お祭りの後はいつも、きりっとしてるのに。
 後でなって言って、こーちゃんはまた、締めの挨拶の為に舞台中央へ戻って行った。

 「…ねえ、ゆー?」
 「…ねえ、みー?」
 そのピンと伸びた後ろ姿を見ている内に、ピクニックより楽しい計画、ピカッと閃いたぞー!
 2人、目を合わせればすぐにわかる。
 いつも僕達は、同じことを考え、同じことを想いつく。
 「「先ずはピクニック!」」
 
 その後、これから長期戦になりそうだな、この素敵な思いつきは。
 長く楽しめそうで、良いんじゃない?



 2014.1.17(fri)22:42筆


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