179.本番前!3、2、
「これより障害物2人3脚出場選手のコスプレとメイクを行います!事前にお伝えしてある通り、ルールを守って下さい!違反したチームは出場停止、失格となりマイナスポイントが加算されます!」
柾先輩と向かった先で整列、担当の実行委員さんから念入りに注意を受けた。
どの競技も今日を迎えるまで、誰が何に出場するかわからない。
コスプレの有無だけお聞きするので、アイドルさんのどなたかが参加するのがわかるぐらい。
各チームとの初顔合わせは、この集合場所で為される。
幸いなことに、お知り合いの方はどなたもいらっしゃらなくて、ほっとした。
リレーなどでご一緒だったならば、全然いいのだけれど。
何せ今回のフィナーレを飾るのは、この障害物2人3脚だ。
つまりそれだけ期待されており、チームの勝敗を喫する種目だということ。
しかも他の競技より一際コスプレ強化らしいので、お知り合いとご一緒はとっても気まずいところだった。
ちょっと安堵していたら、他チームさんから早くも敵対心メラメラの視線を浴びておられる柾先輩に、チョイチョイ突つかれた。
「陽大、覚えてるな?ルール」
「もちろんでございますとも」
「ん。なら良い」
競技の制覇の為には、先ずルールを制す。
Aチームの課題でもあった。
開催中の競技を後目に、これからペアそれぞれ別れて、各人に振り当てられた個室で着替えとメイク?が施される。
いざ競技が始まるまで、そのまま個室待機、お相手様と会うのは本番になる。
先ず、あらかじめ決めてあった先攻選手(Aチームの場合は柾先輩だ)から、会場内に向けてチーム毎に披露、スタートラインに立つ。
それから後攻選手(Aチームでは俺のこと)が登場、初めてコスプレ後のお相手と対面となる。
この段階から勝負は始まっており、先攻と後攻の間には200Mの距離がある。
施された衣装とメイクの効果で、相手がわかり難くなっており、加えて後攻選手の並びは順不同で紹介がない。
誰が誰かわからないまま、先攻がスタート、提示されるカンペを頼りにお芝居しながら走り、最初の試練、ご自分のペアを探し出す。
後攻はその間、一切のアプローチは禁止、見つけ出されるまで黙って待機し、無事に会えたらお互いお芝居と2人3脚スタート。
その後、あくまでコスプレの役になりきりながら、2人3脚で数々の障害を乗り越えてゴールする、というものだ。
このお芝居や障害物の内容、着替えを終えて会場披露されるまで、俺達は何ひとつ知らないまま、ぶっつけ本番で挑む。
だから各チームとも、あらゆる事態を想定して練習を積んできている筈だ。
柾先輩と俺だって早朝だけじゃない、空き時間を見つけては細かく打ち合わせし、練習を重ねてきましたからね!
どなたさまにも負っけませんよー!!
「それではこれより、各自速やかに着替えに入って下さい!準備が整いましたら合図があるまで静かに待機して下さい!移動中並びに着替え中の私語は禁止です!」
「陽大」
「はい!」
「「俺達にはマロン様がついてる!」」
何より心強い合い言葉で、柾先輩が悪どく笑い、手を振られた。
「「また後で」」
先攻選手、後攻選手、ここで一旦お別れ。
実行委員さんに案内された、巨大な仮設テントの中、個室状に分かれた一角へそれぞれ向かった。
柾先輩へのメラメラ視線もすごかったけれど、俺へのメラメラ視線も感じますねぇ。
どの目も負けないから!と訴えておられて、武者震いがした。
俺だって負けませんもの!
それにしても後攻選手の方々、気の所為ではなく、皆さま合原さんのようにお可愛らしい方々ばかりだった。
俺ってやっぱり、とんでもなくミスキャストなのでは?
今更どうしようもない、本番を迎えて辞退も何も遅いけれど。
どうしましょう。
まさかコスプレの不出来で、即アウト!Aチーム退場!ってことになったら。
お芝居の不出来はマイナス加算だけれど、コスプレの不出来についてそんなルールはなかった。
しかし俺の登場で新ルール発生、即アウト!退場!ってことになったらどうしよう。
柾先輩はきっと、どんな格好でもお似合いのスーパーアイドルさまですから、そちらのプラス加算でどうにかお許し願えませんかねぇ。
足の速さ、2人3脚には自信があるんですけどねぇ。
わき上がる不安にため息が出そうになりながら、「Aチーム/後攻選手控え室」の札が下がった個室を、恐る恐る覗いた。
「失礼いたします…Aチーム後攻選手の前陽大と申します…」
「Oh!Aチームは君ダッタデスネーハジ〜メマシテ、お母サン!ウェルカム、ヨウコ〜ソ!」
ふえ?!
中で待機なさっておられたのは、何故か片言でお喋りなさる、背の高い、とってもカラフルな御方だった。
2014.1.4(sat)23:09筆[ 517/761 ][*prev] [next#]
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