177.わっはっは、わっはっは、わっはっは


 お弁当全部、見事に完売!
 デザートにお持ちしたハチミツ漬けレモンも、皆さん召し上がってくださった。
 少し心配だったけれど、美山さんや一舎さんも召し上がってくださって、ひと安心。
 今度は本格的な量で、大人数分作ってみたいなぁ。
 ひとくちサイズのご用意だったとは言え、行程が甘くて手間取った面もあった。
 反省点は次に生かさねば。

 「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
 まだ時間は残っている。
 後片づを終えて、午後の競技のおさらいをしようとプログラムとにらめっこ。
 「お母さん、ごちそうさまー」
 「旭先輩、わざわざありがとうございます。先輩にいただいたこちら、『スパークリング・ジンジャエール/炭酸控え目』、大層結構なお飲みもので、おいしくいただいております」

 「大層結構なお飲みもの!ははっ、そりゃ良かったですー」
 バスケ部独占自販機、またいつか利用してみたいものです。
 他にも俺の目を引くラインナップで、全部制覇してみたいけれど、それにはやはりバスケ部入部が必須なんでしょうか。
 また改めて大介さんに聞いてみましょうねぇ。
 と野望をふくらませていたら、ふいに手の中からペットボトルが消えた。

 「いいナー陽大。美味いの飲んでんじゃん。旭、俺のは?」
 「昴のは無ぇよ。お母さんが頑張ったご褒美だしー」
 また出ましたね、悪ガキさんコンビ。
 ほんとうにお仲がよろしいんですねぇ。
 不思議な話、どうして旭先輩は3大勢力さんじゃないんだろう、というぐらい仲よしさんだ。
 
 柾先輩がまるで、裏の3大勢力さんとご一緒のように、いや下手するとそれ以上にリラックスして、何の遠慮もなさっておられないように感じる。
 長年お馴染みの光景なのだろうか、周囲の皆さまも、柾先輩と旭先輩が絡んでいらっしゃる時は、ごく自然に受け止めていらっしゃるようだ。
 「…昴、飲むなよ」
 「いーじゃん、一口」
 「違くてー…周りを見ろっての。油断すんな、生徒会長サマ。はい、お母さん。ごめんねーウチの昴ったら暑苦しいから、ちょっと温くなっちったかもー」

 しかも、俺がピッチャー俺はキャッチャーな名バッテリーぶり、練習の段階から何度も拝見した。
 今もそうだ、公共の場であらせられるのに、俺のジンジャエールさまを今にも飲みそうな勢いの柾先輩を、旭先輩は低い声で静かに諌めて、俺へ返してくださった。
 「旭クンのイジワルっキライっ」
 「そんなのとっくに知ってる事だろ…?俺が意地悪になるのはお前だけだって…ちゃんとわかってるだろうな…?」
 「旭クン…」

 そうかと想えばふざけ合って、ほんとうに距離が近いお付き合いだなぁって想った。
 絶対に新聞報道部さんに取り上げられそうだけど、あまりにあっけらかんと仲よしさんだから、御2人の友情は学校公認のものかも知れない。
 「つーか、陽大。こんだけ作んのに無理したんじゃね?お疲れ様。ありがとう」
 「だよねーお母さんも昨日、目一杯練習したのにさーありがとう。美味かったよー」
 「いえいえ、とんでもないことでございます。俺こそ大人数のミニお弁当を手がけることができ、誠に有り難い経験を積ませていただきました。それに、仁と一成も手伝ってくれたので大丈夫です!」
 「「え…そっか…アイツらの手が…」」

 そうかと想えば礼儀正しい、つまりよく似てらっしゃるんですねぇ。
 「先輩方は双子さんみたいですね」
 「「は?」」
 「仲よきことは美しきことかな」
 「「美し…?え?」」
 「いえいえ、大層結構な熱き友情を間近で拝見できて、恐悦至極でございますというお話でございます。かしこ」
 「「はぁ…お粗末様です」」

 似たような感じで首を傾げていらっしゃった、悪ガキコンビさんの片割れ柾先輩が伸びをして。
 「なんかよくわかんねえけど、取り敢えず行って来るわ。午後イチ挨拶あるし」
 「いってらー昴」
 「いってらっしゃいませ。お気をつけて」
 「んー。旭、陽大を頼むな」
 「合点承知!お任せあれー」 
 
 なんのこっちゃ、こちらこそわかりません。
 旭先輩に目で訴えたら、ふっと微笑って、俺の頭を撫でた。
 「さ、お母さん!ソレ飲んじゃったら、そろそろ準備しよっかーストレッチしておかねぇと身体動かないしね」
 「はい!」
 俺は相変わらずなんにもわかっていなかった。
 どれだけ守られていたのか、どれだけ呑気に過ごしていたのかを。



 2013.1.1(wed)14:12筆


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