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 ドンドンドンドンドン!と、続けて5発、打ち上がった花火。
 明るい青空に、オレンジ色の花が咲いた。
 花火って、てっきり夜のものかと想っていましたよ。
 と言うか、学校の体育祭で花火が上がるだなんて!
 なんて豪華で贅沢、流石は十八学園さまですねぇ。 
 ぽけっと空を眺めていたら、大介さんに小突かれた。

 「はると、前、前。始まんぞ」
 「え?え?おぉーっ」
 「ははっ、そっかーお母さんは体育祭初体験かー」
 「はい!すべてが想像以上で…驚きですー」
 「よしよし。俺が優しく…手取り足取り、教えてあげるからね…?」
 「…旭先輩、はるとに変なこと言うの止めて下さい」
 
 大介さんたちとこそこそお話ししている内に、紅白で飾られた華やかな舞台上には、これまたいつより華やかに見えるアイドルさま方、イケメン実行委員さま方がずらずらっと整列されて。
 にぎやかだったグラウンドは、俄に緊張を帯び、シーンと静まり返ってしまった。
 草木が風にそよぐ音がよく聞こえる。
 朝礼の時には有り得ない、この静けさと緊張感にドキドキした。

 その時、ドーンと太鼓の音が大きく鳴り響いた。
 舞台上に設置されていた、大きな太鼓から…ん?!
 よくよく見れば、右と左に分かれて設置してある太鼓、その前には仁と一成がいるではありませんか!
 まあまあ、あの子達ったら!
 そう言えば「当日ちょっとした役目がある」とか、もそもそ言ってたっけ。
 
 俺はてっきり会場警備のことかと想っていた。
 なんとあんな晴れがましいお役目をいただいて、あの子たちったら!
 誇らしさで胸がいっぱい、想わず涙が滲んできそうになってしまう。
 ふと、2人と順番に目が合ってウィンクされたから、そうっと手を振った。
 頑張れ!!
 ちゃんと見てるからね!
 ビデオカメラ持ちこみOKだったら、想い出に撮影したのにねぇ。
 
 「「「「「宣誓!!」」」」」
 静寂を打ち破る、各チームの実行委員の声に合わせ、ドドン!と再び太鼓が鳴った。
 「我々Aチームは」
 「我々Bチームは」
 「我々Cチームは」
 「我々Dチームは」
 「我々Eチームは」
 「我々Fチームは」
 「「「「「チーム一丸となって体育祭を楽しみ、正々堂々と戦う事をここに誓います!!」」」」」

 太鼓の音が何度も鳴り響き、それと共に一斉に歓声が弾けた。
 どのチームもものすごい熱気だ!
 歓喜の悲鳴や、咆哮にも似た雄叫びに押されるように、俺も精一杯声を上げた。
 Aチームだって負けませんよー!!
 歓声のまっただ中を切るように、すっと、柾先輩が前に出てきた。
 その途端、さあっと波が引くように、太鼓の音も声も静まっていった。

 今日も相変わらずの不敵なお顔だ。
 うんうん、栗の神さまが背後にいらっしゃいますものね。
 その余裕っぷり、今ではなるほどと頷けます。
 重そうな優勝旗を難無く片手に、先輩は全体を見渡して口角を上げた。
 それにしてもすごくきらびやかな優勝旗だ。
 代々の開催日時と優勝チームが刻まれたたくさんの帯に、歴史の重みを感じる。

 優勝旗は一先ず、十八さん預かりとなるようだ。
 まるで戴冠式のような荘厳さで、十左近先輩のアナウンスの下、返還が行われた。
 十八さんが優雅な足取りで舞台を去った後、柾先輩はそのままグラウンドに向き直り晴れやかに笑った。
 「晴れて良かった」
 その一言で、またグラウンドは熱く盛り上がった。

 「じゃ、始めようぜ…想う存分楽しみやがれ野郎共。勝っても負けても悔いのない様にな!」
 これまで以上にものすごい熱気と歓声と悲鳴の嵐!!
 「これより十八学園高等部第99回体育祭を開催致します!!各チーム整列しろっ!!先ず準備運動だろうがっ!!」
 吹き荒れる嵐の中、十左近先輩のアナウンスも大いに荒れたのであった。



 2013.12.19(thu)23:04筆


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