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 グラウンドの外れに設置された通称ロッカー棟、別名控え室、またまた別名体育祭本部に荷物を預けたら、各チーム毎に速やかに集合。
 この数週間ですっかり顔馴染みになった、チームメイトの皆さんと、先ずは朝のご挨拶だと想ったら。
 「「「「「お母さ〜ん!おはよう〜!」」」」」
 皆さんが手を振ってニコニコ迎え入れてくださって、ますます俺のテンションはうなぎ昇りになった。

 「おはようございます!すっかり晴れてよかったですねぇ」
 「「「「「うん!てるてる効果だね!」」」」」
 「ええ、ええ、そうですとも。皆さんのご協力のお蔭でございます。その節はどうもありがとうございました」
 「「「「「とんでもない!(武士道の銀の人は気の毒だけど)」」」」」
 「あ、お母さんインしてるじゃーん。おはよー」
 
 おっと、旭先輩並びにバスケ部の面々さま、爽やかにご登場。
 特に親しくお声をかけてくださった、大介さんの部活の先輩でもある皆さん、側にいてくださるとほっとする。
 「おはようございます、旭先輩、大介さん!皆さんもおはようございます」
 「「「「「おはよー」」」」」
 「てるてる効果、ガチでヤバいねー。個人的に気になってんだけどさー、てるてるは最終的にどうなんの?銀の部屋にそのままー?」

 「まさか!丁重にお礼を述べてから、リサイクルさせていただきますよ」
 「リサイクル?」
 「ええ。お誕生日会のお花に作り替えたり、最後はお掃除に使ったり…お役目全うさせていただいてからさようならします」
 「ぶはっ!そのまま捨てねーんだ!流石お母さん…くくくっ」
 「そのまま捨てるだなんて勿体ないこと致しません。でも今回は記念に、皆さんにお返ししてもいいなぁと想っております」

 「「「「「え…どうぞリサイクルにお回しください…」」」」」
 皆さんがなんだか神妙なお顔立ちになったので、そのままリサイクルさせていただくこととなった。
 折角お可愛らしくできた力作揃いなのにねぇ。
 そうこうお話しする内に、生徒会所属の柾先輩と無門さんや実行委員さん以外のメンバーが勢揃い。

 誰1人欠くことなくAチーム全員参加!
 うわ〜嬉しいなあ!
 ワクワクが止まらない!!
 連日の練習を頑張る内に、段々、ぎこちなくなっていた方々とも少しずつ、コミュニケーションを取れるようになってきて。
 こうして無事に当日を迎えたからには、全員と仲良くとは高望みしない、足手まといにならないように全力を尽くすのが、俺が今できること。

 「頑張るぞー!お―――!!」
 「「「「「お?お―――!!」」」」」
 昂るテンションのまま、想わず拳を振り上げたら、バスケ部さん筆頭に皆さん合わせてくださった。
 この一体感、新入生歓迎会ぶり!
 精一杯頑張ろう。
 とにかく今日だけは、体育祭のことだけ考えて、目指すはチーム優勝!!

 「優勝するぞ―――!!!」
 「「「「「お―――!!!」」」」」
 猫型ロボットさんカラーのバンダナが、ぶわっと吹いた風に一斉にたなびいた。
 Aチーム、気合い十分です!!
 「お母さん、聞いてよー大介がさ、さっき階段で躓いてさー」
 「ちょ、旭先輩!!それ、言わない約束っス」
 「なんと!大介さん、大丈夫ですか?!ああ、ああ、どこかに引っかけたんですね、脛をちょっとすり剥いて…はい、オロナイン」

 「あー悪いな、はると。つか、やっぱ今日も持ってんのか…」
 「当然でございますとも。本番だからこそ今日の俺に死角はございません!」
 「お母さん、俺も俺も。風邪気味かなーハナ出るー」
 「なんと一大事!はい、ちり紙どうぞ。それと、ビタミンが凝縮された飴です。あまり無理なさらないように、ポカリもちゃんとね」
 「お母さん、お母さん。旭が殴ってきたんだよー何もしてないのに…」
 
 「お前なーお母さんに甘えてんなよ!」
 「まあ!旭先輩、本番を迎えて仲間割れはいけません。大切な仲間でしょう?」
 「はぁい」
 「さあ謝って…旭先輩も悪気はないんですよね。おふざけが過ぎるだけで、本音はバスケ部が大好きなんですものね。お仲間さんとじゃれ合うのが楽しいんですよね」
 「え…」
 「「「「「え…旭、そうなん?」」」」」

 「俺にはわかりますとも!うんうん、友情なくしてスポーツ成り立たず!かーっ、いいですね…!男の友情!親愛!お前は俺の仲間だろ?言わなくてもわかってる、そう、競技中に深まる無言の友情…いいですね!格好いいですね!バスケ部最高!!」
 「「「「「え…俺ら格好いい?最高…?」」」」」
 「最高に格好いいですとも!」
 「「「「「お母さん…」」」」」
 バチーンとバスケ部の皆さんにウィンクしたところで。

 急におおきく鳴り響いた破裂音に、飛び上がりそうに驚いた。
 なにごと?!
 焦ってきょろきょろしたら、旭先輩はもちろん、チームの皆さんの不敵な笑顔が目に入った。
 なにごと!
 「始まったなー。はると、先ずはオープニングの花火だ」
 初めて見る、大介さんのニヒルな笑みとその言葉に、目がまんまるになった。



 2013.12.18(wed)22:08筆


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