161.銀いろ狼ちゃんの計算(5)
ベッドに3人、川の字。
前からこうしてきたような馴染みっぷりだけど〜、俺としては1名かなり邪魔。
つかマジどっか消えて。
気ぃ利かせてたまにはてめぇの部屋帰れっつーの。
毎晩念じてんのに、このバカには通じない。
まぁね〜総長たるもの、多少鈍感じゃないと務まらない面もあるけど〜邪魔。
俺ははるるをぎゅーして寝たいんだっつの。
まぁね〜この鈍感バカ居なかったら、明日は本番だっつーのに、はるるにナニしちゃうやら、自制できる自信はないけど。
はるる頑張ってたもんね。
春からずっとごちゃごちゃあった中、元気なくても無理して頑張ってきたもんね。
できれば体育祭、楽しんで欲しいし。
その為に俺ら表でも裏でも頑張ってきたから〜良いんだけど、邪魔。
やっぱ邪魔。
はるるに手ぇ出すのはまだ我慢するから、独占して寝る権利ぐらいくれっての。
家主として当然の権利だと想うけど〜。
はるる寝たら、蹴落としてやる。
大体俺のベッドに、はるる以外の他人が寝てるとか、毎日有り得ないわ〜。
「…やっと、明日だねえ…」
「ん〜?はるる、眠れないの〜?」
「はると、大丈夫か〜?」
灯りの消えた室内に、急にはるるの声が控え目に響いて、ちょっと身を起こした。
色のない天井に視線を向けて、さっきまで眠そうにしていたはるるの目はパッチリ。
つーか仁は寝てろ〜どこまで邪魔する気〜?
「うん…ありがと〜眠いんだけど、なんだかドキドキして…やっと明日だなぁって想ったら、ねえ…」
良かった、語尾は眠そうだ。
夜目にもわかる、きっとはるるの目はキラキラしている。
頑張ったもんね。
にぎやかなイベントとか、好きだもんね。
明日は俺ら、すぐ隣では守れないけど、ちゃんとはるるを見てるから。
「Fチームには負けませんからね〜!」
ちいさく拳を突き上げた気配に、仁と同時に苦笑が被った。
何とも言えないよ、俺は。
「Aチームには負けねーからな〜」
「ふふふ!かかってらっしゃい!仁と一成には負けませんよー」
あまり覇気のない仁の声に、はるるの方が元気いっぱいだ。
「「…同じチームが良かったな〜」」
また被ったのも仕方ねーんだよね、武士道の総意だから。
「そんな弱々しい2人だったら、チョチョイのチョイでやっつけちゃいますからね」
「「…ハハハ」」
はるるには負けるよ、俺らは。
はるるにだけは、負けて良いんだ。
元気いっぱいに拳を振っていたはるるが、ふと静かになった。
おネムかな〜と想ったら。
「…俺も、武士道と一緒がよかった、なぁ…」
ちいさなちいさな声。
ため息の様に零して、すぐ布団を被った気配に、俺の心臓が軋んだ。
はるるを不安にさせてる、この学園、俺らの在り方に、俺は…
「なーんてね。今年は負けませんよー!来年は…一緒だったら良いね」
「「ね〜」」
来年も一緒に頑張ろうね〜はるる。
そんな気持ちを込めて、上掛けの上からポンポンと撫でた。
俺らはずっとはるるの味方、俺はずっとはるるの側に居る。
邪な気持ちは気持ちとして、いつか伝えられる様に、それまで武士道の銀としてはるるを守るから。
「2人共、ずっとお疲れさまなのに…ごめんね。ありがとう」
「「とんでもない!こちらこそ」」
「明日はこっそり…いやいや、明日のお楽しみ。内緒内緒、おやすみなさい」
「「え?え?ちょっと待って、なになに?」」
「おやすみ〜」
「「お楽しみ?明日?お楽しみがあるの?」」
「お・や・す・み・な・さ・い!」
「「はい!おやすみなさいませ陽大様」」
また静かになって、さっさと仁が寝息を立て始めた時、そうっとはるるを見た。
「はるる…大丈夫〜?」
「ん〜むにゃむにゃ…だいじょ〜ぶ〜俺には元気の源、栗の神さまが…ふにゃ」
ほとんど寝かけのはるるが、よく眠れる様に肩の辺りをポンポンしながら。
元気の源?
くりのかみさま???
最近、そんな事をモニャモニャ言う様になったけど一体何?
新しい料理?
2013.12.16(mon)23:16筆[ 499/761 ][*prev] [next#]
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