155.大きくて小さなワンコの遠吠え(5)

 
 「3人ぼっちだね」
 「久しぶりだよね」
 「………ね。」
 ひさし、またサボり。
 最後までサボり。
 いつの間にか居なくなっていた。
 りっちゃんとこーちゃんは、忙しい。
 はるとは、武士道の銀のところ。

 おれたちは、3人だけ。
 
 ゆーとみーと、並んでベッドに横たわって、でも眠れない。
 明日は体育祭。
 やっと皆揃って、高等部で体育祭、なのに。
 4人で、楽しみにしていたのに。
 おれたちはバラバラ。
 いつもこんなに、寂しかった?
 
 去年は2人居なかったけど、中等部の後輩と頑張った。
 去年も寂しかったけど。
 こんなに静かな体育祭は、初めてだ。
 りっちゃんとこーちゃんが居ない。
 ひさしも居ない。

 昔が懐かしい。
 6人揃っていた頃は、イベントの前日、絶対6人で居た。
 明日頑張ろーって、皆で盛り上がった。
 イベント、全部大変だけど。
 おれは6人で頑張るのが好き。
 だからいつも、面倒くさいけど頑張れた。
 後の打ち上げまで楽しいって、わかってたから。

 今はバラバラ。
 あれからずっと、おれ達はバラバラで、ぎこちない。
 ひさしは勝手にコソコソして、前よりサボるようになった。
 りっちゃんとこーちゃんは、忙しいけど。
 大人だから、前と変わらず同じように接してくれる。
 だけど、おれ達が同じにできなくて。

 ぼんやり、薄暗い天井を見上げていたら。
 右と左から、ゆーとみーがぎゅうぎゅうしてきた。
 「こーちゃんなんか今頃、まだお仕事だねー」
 「りっちゃんなんか今頃、まだごはんだねー」
 「「いい気味!」」
 「………ねー」
 
 ぎゅうぎゅうのまま、また静かになった。
 どうしてこうなっちゃったのかな。
 どうして今、3人だけなのかな。
 せめて、はるとが居てくれたらいいのに。
 はるとも忙しくて、結局、いつも武士道に取られる。
 
 「…おれ、も。ゆーも、みーも…」
 「「ん?なぁにー?」」
 「ただ、もっと、仲良し。したいのに、ねー」
 「「………うん」」
 りっちゃんもこーちゃんも、大人だから。
 おれ達は、隣に並べなくて。
 でも。

 ベッドの上、起き上がった。
 「………行こ」
 「「そーすけ…?」」
 「眠れない。から。こーちゃんチ、行こ。りっちゃん、いるかも」
 まだ寝転んだままだった、ゆーとみーの目が、キラキラ光った。
 「「うん!行こう!行って邪魔してやろ!」」

 その時、ケータイが鳴って。
 『もっしーそーすけ?俺だけどー。そっちにゆーみーも居んだろ。悠も莉人もこっちに居るからお前らも来いよ』
 聞こえた、欠伸混じりの声に、3人で顔を見合わせた。
 「「「うん、行く」」」
 おれ達はやっぱり、6人がいい。



 2013.12.12(thu)23:52筆


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