36.大冒険1日目、終了!
「ふぬぬぅ〜っ…!」
やれやれ!
長かったようで短かった一日が、終わろうとしている。
つい今しがた向かっていた、ノートブックパソコンの電源を落として閉じ、思いっきり腕を伸ばした。
入寮一日目。
充実してたなぁ…!
母さんに見送られてやって来た学園では、先ず、ひかげだてりひと副会長さまに出会った。
案内していただいた先、理事長室では、数時間ぶりに十八さんと再会!
その後は、寮の管理人のふたがみさんに出会った。
それから、部屋では美山さんに出会い、初日から夕食をご一緒してしまった。
食後の苺まで食べた後、お風呂じゃんけんして、大変恐縮ながら俺が1番風呂をいただいた。
憧れの猫足バスタブ、最高に満喫しましたとも!!
しかし美山さん、俺が負わせてしまった手のケガ、ほんとうにだいじょうぶだろうか。
お風呂から上がって交代する時、濡れないよう慎重にビニールで巻いて、すこしでも悪化して熱が出たら、いつでもすぐ言ってくださいってお願いして、そのまま「おやすみなさい」したけれど。
ん?
そういや、なんで扉を開けるなり、殴りかかってこられたんだろう?
とっさに避けてケガさせてしまったから、動転したっきり理由を伺ってなかった。
なにかご事情があるのかな???
その後、特に異常は感じられなかった、と思う。
むしろ、積極的に夕食の手伝いをしようと、辺りを所在なく彷徨うお姿は、なんだか…お可愛らしいと言ったら失礼かな、微笑ましい光景だったと言うか。
また機会があれば、聞いてみよう。
お風呂の後は、ずっとパソコンを触っていた。
今ではすっかり、俺の趣味のひとつになってしまった、ブログの更新。
中学の時の友だち、親しくなった先生や父兄の皆さまからの勧めで始めたブログは、今や俺のささやかな楽しみだ。
中学生時代、と言っても、つい最近までのことだけれど。
親しくなった人たち皆、クラスメイト大半が進学する高校へ、俺も行くものだと思っていたし、俺自身、夏頃までそのつもりでいた。
けれど結局、俺は十八さんの学園へ来ることを選んだ。
受験先を変更したこと、皆、残念がってくれたっけ…あの時のちょっとした騒ぎは、未だに忘れられない。
最終的に納得した皆で相談してくれて、多数を相手にしたメールや電話のやりとりは俺の負担になるだろう、でも皆平等に俺の近況を知りたいからと、ブログサイトの開設を一考してくれた。
俺はこのブログに、日々のこと、高校生活や、リクエストの多かったその日作った料理などを投稿する。
それを皆は見て、コメントや足跡を自由に残してくれる。
確かに、携帯で個々とやりとりするよりもお返事しやすいし、お互いの時間を尊重できるのもいい。
皆の日々を投稿できる掲示板も設置してあるから、いろんな人の今の状態を知られて、なんだか近くにいるように感じられるし。
最初こそ慣れず、短い言葉を並べ、ぎこちない写真を添付するのに精一杯だったけど、今ではすっかり慣れて、楽しいと感じる余裕さえ出てきた。
今日が俺の入寮初日だからか、記事を投稿する前から、たくさんのコメントが寄せられていた。
皆、優しいなぁ。
父兄の皆さんもお忙しい日常の最中だし、同級生だった皆もそれぞれの進路先での新生活が始まる頃、先輩や後輩や先生方だって、新学期スタートの慌ただしい日なのに。
心配性の皆を安心させるように、今日一日の様子を綴り、夕食の写真を撮るのを忘れていたことをお詫びした。
代わりに、部屋から見える街路樹越しの月光を撮って添付した。
明日は桜並木の写真を撮ろう!
皆、綺麗だな〜ってすこしでも和んでくれたらいいな。
薄く開けていた窓を閉じ、カーテンを引いてため息を吐いた。
クローゼットの扉にかけた、真新しい制服が輝いて見える。
明日は入学式と、クラス発表だ。
楽しみだなぁ!
「よし…寝ましょうねえ」
ベッドへ潜りこみ、電気を消した。
心の中で皆の笑顔を思い浮かべながら、おやすみなさいを言っている内に、俺はいつしか眠りに落ちていた。
2010-05-08 21:44筆[ 50/761 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]
- 戻る -
- 表紙へ戻る -