150.孤独な狼ちゃんの心の中(14)


 やっとだ。
 やっと明日で終わる。
 くだんねー祭り、祭りの準備にかまけてたこの何週間か、明日で解放されると想うとせいせいする。
 因りにも因って、今年はクソ会長がチームに居やがる。
 どのチームだろうと異常な熱量に大差ねーけど、今年のAチームは最悪だ。
 例年不敗のクソ会長と、祭り系にイカれるバスケ部の中心メンバーが揃ってやがる。

 面倒くせーことこの上なかった。
 毎日毎日うんざりだった。
 フケたくても逃げらんねー、ヤツらの親衛隊まで揃ってやがるから、今の今まで練習だの特訓だのに付き合わされ散々だった。
 くっだらねー。
 どいつも皆、くだらねー人間ばっかだ。

 祭り事にアツいふりして、その実、連中の1番の関心は内申点だっつーのに。
 イベント物の内申は、取り逃せない程高いと聞く。
 ヘタな部活動より余程良いとか何とか。
 誰も彼も結局気にしてんのは成績で、世間の目で、親の目で、どんだけ有利に進学できるか就職できるかで。
 底が見えてる、くだらねー学校生活の一環にマジでムカつく。

 部屋に着いて、すぐ煙草を吸った。
 吸う度ギャーギャーうるせー穂は、今夜も居ない。
 練習後すぐにどっかへ消えてった。
 大方、あれ以来ハマってる下界のバーかどっかに繰り出してんだろ。
 どうでも良い。
 うるせーのが居ないだけで、死んだ様に静まり返る空間に、ようやく一息吐けた。

 温い空気に、煙草の煙が揺らめき、窓から見える月どころか、木の天辺へ到達することもできず消え失せた。
 俺みてーに、中途半端に彷徨う煙。

 舌打ちして、窓枠で煙草を押し消して捨てた。
 その途端、浮かぶのはあの丸っこい顔で、更に舌打ちした。
 てめーはいつまで俺ん中に居やがるんだ。
 とっくに側に居ないクセに、いつまで俺の記憶に居座りやがる。
 『美山さん!煙草は万病の元ですよ!!ましてポイ捨てなどいけませんっ』
 「うるっせぇつーんだよ…」

 明日の祭りさえ終われば、後は試験と長期休みで。
 此所から離れさえすれば、アイツの存在など消え失せると想えた。
 俺自身、いつ消えても良い。
 休みが終われば戻って来る、そんな理由もない。
 どーせ此所をスバラシイ成績で卒業しようと、俺の未来なんかたかが知れてる。
 どう足掻いても上には行けない、所詮は半端者だ。

 なら消えれば良い。
 何処にも俺の場所は無いのに、生きる意味なんて。
 そうだ、祭りだの何だの待つ必要もねぇ。
 今すぐ消えて良い。
 穂みたいに、先の事どころか明日の事すら考えず、自由にすりゃ良い。
 此所に居る、理由なんて。

 「…ちっ…くだんねー…」
 何の結論も出せないまま、取り敢えず腹が減っていた。
 そこらにあった購買のパンを齧ると、やけに印象深い味だった。
 
 「…甘ぇな…」



 2013:12:06(fri) 23:34筆


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