144.さっきのお手紙、ご用事なぁに?


 相変わらずにこにこしていらっしゃる所古先輩が、纏められた。
 「つまり、昴は超絶早起きの超絶夜更かし人間って事さァ」
 「もう良いっての…お前は黙ってろ」
 「あーん?部長に対して失礼じゃないかね、十左近副部長」
 「これは失礼致しました、所古部長。暫く静寂を保って頂く事を切実に願います」 
 うーむむむ。

 「所古先輩と十左近先輩って、とっても仲良しさんなんですねぇ」
 想わず呟いたら、くるっと振り向かれた。
 「「どこが?」」

 「…そういう息の合ったところが、ですけれども。えーと、わかりました。わかっておりますから、このままお話をお進めください。
 いやいや、俺とて男子の端くれ、今まで様々な友情の形を拝見して参りましたから、『そうさ!俺たち心友さ!』と他人に素直に明かせる友情程、すぐに終末を迎えるもので…『そんなことない、仲良くなんかない』と否定される方々程、実は細く長くご縁が続いたりするものですよね。

 つまるところ、コンビ愛!ええ、ええ、わかります。わかりますとも。幼少時から学び舎を同じうし、長年苦楽を共にして来た仲ですものね、そりゃあ並々ならぬ複雑な友愛でしょうとも…ずいぶん時間を経て、渋みを増した大人になってからやっと、『こいつの隣に居れてよかったなぁ…』ってしみじみ想うんですよね…でも、最後の最後までお互い、そんな気持ちを口に出すことはない…言わなくてもわかってくれるだろう…?くれるよな…?もちろん…!わかるさ!!
 ああ、男の友情って、ほんとうにいいものですねぇ…!」

 「「いや、マジでそんなんじゃないんですけど…(いや、そう…なのか…な…?そうなる…の…かな………?)」」
 「ええ、ええ、わかっておりますから…!さぁ、お話の続きをどうぞ!さぁどうぞ!遮ってしまって申し訳ありませんねぇ、つい、いいお話を聞くと止まらなくなってしまいましてねぇ…ビバ男の友情。いやはや、ほんとうにお先をどうぞ、もうほんとうに黙っておりますから!」
 「「………(前って………。)」」
 複雑そうなお顔をなさった先輩方だったけれども、立ち直りはお早かった。
 うんうん、俺が見て来た、今はまだ不器用な男の友情たちと同じ雰囲気ですよー!

 秀平と礼央(れお)とか、仁と一成とか、柾先輩と日景館先輩もこんな感じですよねぇ。
 ふふー、皆さんその調子!
 「な、何か…妙にキラキラしてんな、前」
 「お目目キッラキラだァ…何か落ち着かんなァ…」
 「おっとすみません、俺の悪癖でして…昔からの友だちには、やたらめったら目を輝かせないように!とよく注意されてしまうんですよー。すぐ治まりますから、どうかお気に為さらないでくださいまし」
 「「『まし』………」」

 ゴホゴホンっと咳払い為さった後、調子狂うなぁとか何とか呟かれながら、先輩方(正しくは十左近先輩の独壇場)のお話が続けられた。

 「あー…っと、柾が知ってるっつー所まで話したな。だからいっそ、あいつも部員になんねーかと勧誘したが、あっさり断られた。その代わりと言うか何つーか、いちいち圧力かけて来やがるんだが…。
 柾は基本的に報道の自由を認めてる。てめぇのスクープを差し止める卑怯な真似はしねーが…あいつはあいつで情報網がすげーから、学園が大きな混乱に陥る様なデカいスクープに関しては、記事の内容を抑える様に、公表のタイミングを遅らせる様にと圧迫して来やがる。
 厄介は厄介だが、その見返りにデカい情報を教えてくれるしな、無下には出来ん。食えない奴だ」

 「なるほどー…。では、号外が出る度に、3大勢力の皆さまがラクガキなさっておられて、いつも柾先輩が1番乗りなのはそういうご事情からだったんですねぇ…」 
 「「そうそう」」
 ふむふむと頷いて、のんびり「スカイレモン」さんを一口飲んでいたら。
 「本題はこれからだ、前陽大」
 「そうそう〜チビ助ちゃんにとって悪くない話だぜィ」
 御2方の眼差しが真摯なものに変わって、慌てて姿勢を改めた。

 「親衛隊のチャチな号外は俺らも見た」
 のんびり構えていた、それが俄に緊張に変わった。
 「酷い記事だったなァ、親衛隊号外は品性とユーモアに欠けるからねェ」
 「前からしたら、俺達も変わらないだろう」
 「そうかァ?紙一重の差だぜィ。我々に悪意はない」
 急に緊張した俺に、新聞報道部さんという、大変な裏のお顔を持つ先輩方は目敏く気づかれたのだろう。
 どこか労るような瞳で、じっと見つめられた。

 視線を逸らして、笑ってごまかして、お話を反らしたかったけれど。
 それは許されない、強い優しさを有した瞳だった。
 「元々危うかった前の立場は今、また少し変化し、より危ういものへと動いただろう」
 「まァ、我々の号外が発端である事は重々承知の上、そこは触れないでおく」
 「小さな嫌がらせが始まっていると聞いている」
 「おおっと、チビ助ちゃんを責める訳じゃない。ちゃんと最後まで聞いてくれィ」 
 「そう、未だ大丈夫だ。今の段階なら止められる」

 「学園内で身を守る処世術ってヤツさァ。幾つかある、けど、お前さん1人じゃ無理だろう」
 「1人では不可能な事も、集団なら可能になる」
 「良いも悪いも、ねェ」 

 御2方の眼光が、一際鋭いものになった。

 「前陽大、新聞報道部に入らないか」
 「つか、入っとけ入っとけィ!今なら入会費年会費無料だァ!」



 2012-01-14 23:00筆


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