143.お手紙食べた
にわかに実感した、衝撃の事実…!!
漫画だったら、目の玉が飛び出るシーンだ。
ただただ、驚くしかない。
寮監さんで、男の花道「喧嘩道」を取り仕切っておられる一方で、気さくなお人柄ながら素行不良の疑いある、ゆるゆるキャラさんの所古先輩と。
放送部部長さんで、十八学園のアナウンスを一手に取り仕切っておられる、いつもきちんとしておられる印象の、十左近先輩が。
十八学園で起こる、大小さまざまな出来事をおおきく取り扱い、皆さんの娯楽のひとつを担う、すべてが謎に包まれた新聞報道部さんだったなんて…
しかも、しかもですよ、御2方が代表!!
その事実を受け入れようと、まんまる目のまんま、交互に先輩方を窺った。
予想外…!!
まさに予想外!
そして、今にも吹き出しそうに、またもや咳払いを繰り返す先輩方の反応こそ、予想外極まりない。
一体何だと言うのでしょうか?
何度目の咳払いですか。
そんなにお喉の調子が芳しくないのならば、だから日を改めましょうって提案しているではありませんか。
それとも何か。
俺はそんなにも皆さまの笑いを誘う、間の抜けたとぼけ顔の容姿ですかねぇ…?
御2方といい、某生徒会長さまといい、他の方々にも基本的に微苦笑されて…そりゃあ俺は見目麗しい皆さまと到底比べようもないですよ。
皆さまが花ならば、俺などは空気中を漂う微生物、皆さまが白鳥ならば、俺などは水中を漂う微生物…
ふん、微生物さんだってね、大活躍ですからね…微生物がいないと自然界の営みは成り立たないんですから…普段意識されることはありませんけどね…ふん。
どうせどうせ…俺なんか、ペットのわんころさま扱いですよ…わんころさまの仲間に入れるなんてね、わんこさんは大好きですからね、別にいいですけれども、却って光栄なぐらいですとも、ありがとうございますと御の字ですよ。
寧ろわんころさま方にしたら、俺がカテゴリーに入って来るのは迷惑でしょうけれども…ほうら、こんなふうに俺なんか、ちっとも可愛くない性格ならば、男前にも程遠いんですよ。
こんなことで何度も落ちこむ程、器量の狭い、男云々の前に人としてどうなんだっていうつまらない人間なんですよ。
加速する落ちこみに身を委ねていたら、ついに堪え切れなくなったらしい、所古先輩が盛大に笑い始めた。
「あっはっは!流石に昴のペットなだけあるねェ!!ガチ犬顔だァ!!」
………はい…?!
「リアクション1つ1つがいちいちツボっつーか…」
十左近先輩まで、某生徒会長さまと同じく俺を面白要員になさるおつもりで…?!
ちらっと想わず咎めるような目付きを向けてしまったら、すぐに視線を逸らされた。
ずるいです、十左近先輩!!
「…ゴホンっ、何でもない。それはとにかく所古、面白がってねーでとっとと本題に入るぞ。時間は有限だ」
仕舞いにはお腹を抱えてひーひー笑い始めてしまった、所古先輩の背中をバシバシと容赦なくはたかれる様に、気心知れた間柄なのだなぁと想った。
「あー面白い面白い。昴が言ってた以上に、この子は逸材だねェ!」
「もっと早く入学して欲しかったがな…ま、後からどうこう言っても仕方ないが」
むむむ?
「あのぅ…急に割って入って申し訳ありませんが…もしかして、所古先輩と十左近先輩が新聞報道部さんだっていうこと、柾先輩もご存知なんでしょうか…?」
どなたさまも立ち入れない、不可侵の治外法権、それは3大勢力さまであっても例外じゃないと窺っている。
何より、柾先輩ご本人に「新聞報道部が1番危険だ」ってお窺いしていたのに???
クエスチョンマークをまき散らした俺をちょっと見て、御2人でお顔を見合わせてから息を吐かれた。
「先ずはそこから説明して行くかァ」
「だな。前、結論から言うと、柾は全て知っている。在職中は3大勢力の長と言えど、新聞報道部の一端でも掴む事すら出来ないのだが、あいつは報道部始まって以来、唯一の例外だ」
例外?
ますます首を傾げた俺に、所古先輩がにこやかに言い放った。
「昴は超絶早起きの超絶夜更かし人間だからなァ!」
柾先輩が超絶早起き?!
まさか、この俺を差し置いての早起きっぷりだとでも?
加えて、超絶夜更かし人間?!
一体どういうことでしょう。
「そんな言い方で誰が理解するか!前、話は簡単だ。我々が作成した号外の公表は、早朝若しくは深夜に掲示板の乗っ取りから始まる。誰の目に付く訳にもいかない、あくまで号外はサプライズで、我々の正体がバレては元も子もないからな。代々このタイミングに苦労を重ねて来た。
ところが柾には我々の長年の集積、公表タイミングのデータが通用しなかった。奴の生活シフトこそ謎だが、誰よりも早く起き出したかと想えば、誰よりも遅い夜更けに歩いている事もある。いつ如何なる時間帯でも変わらない様で飄々と、な。そこに法則はない。
つまり、ことごとく公表時に出会す。何の因果か知らんが、あいつの野性の勘でも働くのか、そもそもあいつが号外に興味がないからこその偶然なのか、とにかくよく出会う。勿論、我々が新聞報道部として活動する時、先程見せたように変装を施し、普段の自分は押し隠して外へ出るのだが、あいつには通用しない。変装初見で、俺も所古もまんまと正体を言い当てられた。現在、我々が代表を務めているが、相手が相手だけに誤摩化し様もなくてな、責任ある立場で不甲斐ないが今に至る」
なんとまぁ、ほんとうに柾先輩は謎の御方なんですねぇ…。
2012-01-13 23:37筆[ 481/761 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]
- 戻る -
- 表紙へ戻る -